自由、平等、そして統一と李在鎔


韓国の生存半径、つまり経済的生存圏の拡張が貧しい者に良い知らせを伝える唯一の道だ。


金成昱(社)韓国自由連合代表


1.三星電子の李在鎔副会長の拘束論難は韓国の未来をかけた象徴的闘争の一つだ。自由か平等か。グローバル化された自由主義秩序で国益を最大化するか、それとも社会的平等と機会の均等を掲げた休戦線以南だけの正義を優先させるのか。右派が正しいのかそれとも左派か。そして親米か親中なのか。


 いわゆる保守勢力は、富裕な者らが恐怖に慄く社会、つまり人民民主主義の下で廃れる韓国の南米式の没落を恐れる。自称‘進歩’は二極化された新自由主義の下で病んで行く大衆の絶望に怒る。韓国は今、特異な変曲点の上に立っている。


2.哲学に悩む以前に法理論争があるの事実だ。要するに、捜査の開始は犯罪に対する主觀的疑いで十分だ。しかし、‘拘束令状の請求’や‘公訴提起’は犯罪の客観的嫌疑を明示せねばならない。これは被疑者が‘犯罪を犯したという高度の蓋然性’を意味する。最終的に有罪判決は‘合理的に疑いのない確信が持てるほど犯罪が証明’されねばならない。


 この法理によれば、‘進歩左派’の立場を代弁してきた特検の論理は均衡を失った。特検は‘代価性’や‘不正な請託’に対する犯罪の客觀的嫌疑を立証できなかった。‘権力の強要による出捐’という三星側の反発と‘権力と企業が共謀した賂物ロビー’と強弁する特検の攻撃が衝突したため、これは拘束の必須前提だ。李副会長を拘束すべき‘証拠の隠滅’や‘逃走の恐れがある’とも言えない。‘朴槿恵・崔順実が利益を共有した経済共同体’という論理を動員したが、多数の法曹の共感も得られ難い。趙義衍ソウル中央地裁令状担当部長判事は1月19日、令状請求を棄却しながらこう言った。

 

 難しい話でない。法学概論の基本概念に近い。拘束するなら具体的な証拠を提示せよということだ。


3.特検は予断した。李副会長の拘束が正義に符合すると思っただろう。韓国の識者層の骨髄に刻まれた‘不滅’の哲学が発動されたものかも知れない。金と権力を独占した者たちの癒着が、結局は貧しい者ら、奪われた人々の苦痛を大きくするという認識、自由という名の下で所得不平等の拡大と階層間移動の断絶、社会葛藤と不和の拡散が最大の問題と見たはずだ。孔子もそうだった。国を豊かにする前に、二極化とこれによる社会葛藤、不均衡と不安をもっと憂慮せねばならないと言った。


 東洋は西洋と違ってきた。違う者らが往来する移動文明、遊牧社會でない。定着文明、お互い似たような人同士が一緒に生きる農耕社會だ。この東洋では自由というものは富裕な者、力の強い者が存分に振舞う搾取と支配の道具として悪用されたことが多かった。平等は東洋の民衆が夢見た至高の価値、またそういう大同社會を理想的な楽園のモデルとして見做した。


 韓国は去る70年間、朝鮮王朝500年軌跡の逆を辿った。貿易と移民を通じて世界へ出かけ、共産主義と戦いながら平等ではなく自由が国家の原則になった。今、歴史の転換期でまた方向を変えようとしている。変曲点だ。特検と国会、メデと知識人集団は韓国で拡散する葛藤の原因を、二極化と社会葛藤、不均衡と不安にあると見る。これを毀損した三星を懲らしめるべきと正義の刃を用意する。憲法第119条2項の‘経済民主化規定’を強調もするが、何よりも‘平等を実践する正義’が敎條化した。


 既得権と特権の打破さえ叫べば、神聖不可侵のような雰囲気だ。他の価値や国益も無視される。300兆の売上高を上げるグローバル企業の総帥を拘束したら、韓国経済の信頼が打撃を受けること、現に三星電子が80億ドル(9兆ウォン)という巨額で買収を決定した米ハーマン社株主たちの集団訴訟が激化すること、エリオット・マネジメントなどグローバル投資家たちが再び集団訴訟に出る動きであることなど。このすべての談論は野蛮な者たちのはしゃぎとして片づけられる。彼らは正義の旗を振りながら大同社会や差別のない世界に向けて勇敢に前進する。それが仮に国が亡びる結果をもたらしても、バアルのような‘不条理打破’という呪文ばかりを叫ぶ。


4.昨日のことだ。市内まで二時間を統一路を車で走った。道路の両方は、客が途絶えた小さな商店街と商店ら。撤市したような食堂街、土木関連店らもシャッターが降りたところが多い。終末論的(?)緊張感も感じられる。ほとんどが何千万から数億ウォンの借金を抱えて日常の幸せを夢見てきた庶民たち、この地の国民だ。知り合いが退職金を全部投じて外郭の商店を買ったが、子供たちの学費も稼げない現実に当惑している。


 貧しい人々は私たち皆がそうであるように、既得権や特権に怒り、金持ちの横暴に憤慨するかもしれない。しかし、愚かな原始平等は答えになれない。この狭い国で、怒りを超えた憎悪、憎しみ、敵意を何倍に増幅させた不完全な正義の剣は皆を殺す。皆を殺す審判と報復ではなく、容赦と愛、そして新鮮なビジョンが皆を救う。


 皆が生きる道がある。早く平壌政権を終わらせ、もっと広い領土、もっと多い資源、もっと多い人口を確保してこそ停滞と混乱を避けられる。生存半径、つまり経済的生存圈の拡張が貧しい者に良い知らせを伝える唯一の道だ。捕虜となった者に自由を与え、縛られた者を開放するのが血路だ。左派は自らの親北的限界を打ち壊し、右派は守旧的限界を拭うとき未来が開かれる。滅びつつある平壌政権を早く滅ぼすという左派の決断と、もっと強い圧迫と抑制を加えるべきだという右派、特に経済的自由主義者たちと保守プロテスタント集団の決断が、悪魔の暗闇を終わらせる要諦だ。われわれは今、決断と復興の岐路に立っている。


http://libertyherald.co.kr 2017-01-19 16:44

更新日:2022年6月24日