魔女、ひどい魔女、憲法裁判所


韓国経済新聞の2017-01-03付 A34面 [鄭奎載コラム]

 

拙速裁判が憂慮される。弾劾審判を人民裁判のようにやるつもりか。
国会の無法的横暴、憲法違反と法律違反も区分できないのか。

 

鄭奎載主筆 jkj@hankyung.com
(2017.1.10)

 

 “憲法はわれわれの未来で希望です”と朴漢徹・憲法裁判所長が顕忠院の芳名録に書いた。憲法裁所長があのように文法にも合わない文を書くはずがないと思って彼の経歴を確認して見た。やはり判事ではない。この文は主語と述語が照応しない。‘未来と希望’になるためには‘どのような憲法’などの限定語が必要だ。今の憲法は1987年の‘民主化’混乱の中で改正されてあらゆる良い話は全部並べた矛盾の塊だ。内的統一性を整えた知的生産物と言い難い。


 法はそれ自体で論理的な構造物だ。ところで今、大統領弾劾訴追を扱う憲法裁判所が見せている姿は慌てて、前後も知らず、世論追従的だ。後に文章にもならない決定文を出すのではないかと怖い。憲法裁判所は金英蘭法を審理するときも大衆の世論を合憲の根拠の一つとして引用した。恥ずかしいことだ。弾劾審理日程というものもそうだ。この重要な審判の最初の弁論は今日(1月3日)から始まる。2日後の1月5日には安ボングン、李在萬、尹チョンジュ、李ヨウンソンの2回目の弁論が、1月10日には崔順実、安鍾範、ジョン・ホソンの3回目の弁論が決まっている。このような迅速な(?)裁判は、平壤の金正恩の張成沢裁判以外には前例が見られ難い。憲法裁判所側は“迅速かつ公正な裁判”というが、大統領弾劾事件をこのように急ぐのは結論を予断した格好だけの裁判と見るしかない。


 大統領側弁護人が読むべきである控訴状だけで3万2000ページだ。憲法裁は、弁護士が数人だから分け読めば時間は十分だと言ったそうだ。開いた口が塞がらない。裁判官たちも3万2000ページを分野別に分けて読んだという告白に聞こえる。呆れる。弾劾関連13個の事件はすべてが繋がって分離できない。朴漢徹所長の任期が1月末なので裁判を急ぐならさらに赦されない。弾劾事件は憲法裁所長が離任する前に処理すべき残務処理でない。


 セウォル号事件当時の7時間に対する補充資料というのもそうだ。弾劾をセウォル号死亡者たちの恨み晴らしの巫女祭りにするものでなかったらセウォル号と弾劾の結びつきは不当だ。朴槿恵大統領や金・ギョンイル艇長をスーパーマンでなかったという理由で処刑しろという未開な裁判になってしまう。大統領は元々刑事裁判の対象になれない。その悲劇の日、金・ギョンイル艇長のパトロール航路がたまたま南に向かい、そのおかげで(35分後に現場に着いて)172人も救助できた功労はすべて無視された。英雄になるべきだった金・ギョンイル艇長は今刑務所で服役中だ。


 大統領は救助失敗だと断定して海洋警察を解体する非常に愚かな決定を下した。重大な誤判だった。今、大統領を追い出すことで犠牲者の魂を慰めるシャーマン的巫女祭りをしようというものでなければ、憲法裁は弾劾事由からセウォル号の項目を排除すべきだ。なのに、補足資料を求めるなんて。女性大統領の日程がそれほど知りたいのか。


 実は特検という機構そのものが違憲的だ。大統領を捜査する特検を野党が推薦することにしたこの制度は、有罪を決めておいて進める中世の魔女裁判という批判に直面し兼ねない。有罪の立証を職務とする国家機関とは!近代的司法制度と言えない。魔女裁判では魔女であると自白したら当然魔女だ。ひどい拷問にも自白しないと今度は‘ひどい魔女’になる。あらゆる疑惑報道と、国家の聴聞会での証言らが食い違うやメディアらは直ちに‘ひどい魔女’のレッテルを貼った。禹柄宇、金淇春がひどい魔女だ。崔順実事件の発端となった疑惑のタブレットPCはまだ検証もしていない。


 根本的に国会の弾劾事由がほとんど出鱈目だ。国会は大統領を弾劾しながら憲法違反と法律違反も区分できなかった。このような起訴状をもって憲法裁判所は何を裁判するだろうか。実に低級な政治だ。鄭ユラはいきなり高校卒業資格まで剥奪されて中卒者となった。特検は彼女に対してテロリストのように‘国際赤色手配’の措置をとった。小説家の柳哲釣(筆名:イ・インファ)は学生たちに成績を高く与えたため‘拘束’され、文亨杓元長官は言うべきことを言ったという理由でやはり‘拘束’された。恐怖の大王が降りてきた。今、大韓民国に。


www.hankyung.com/news 2017.01.02 23:03

更新日:2022年6月24日