人間の予測を超える韓国政治、黄教安という変数の登場

 

われわれが分からない大きく秘密のこと。野党の互いに異なる算法が生み出した黄教安(大統領権限)代行は劇的な反轉の触媒になりはしないだろうか。

 

金成昱 (社)韓国自由連合代表

(2016.11.28)


1.霧の中、国民は不安だ。青い瓦の下で行われた偽と不法に対しては虚脱と失望、裏切りの感情が込み上げても、問題はその次だ。支持率1位の文在寅前代表は“朴槿恵大統領が協調すれば名誉な退陣を保障する(11月23日)”と言った。彼は一体何の資格でこう言ったのか。文氏は党代表でも議員でもなく‘政界を去る’と約束した人物だ。


 文在寅は“保守的・極右的な政治権力、検察・マスコミ・財閥・大企業間の特権カルテルが強固に形成されてその中で権力が取引されたのだ”とも話した。保守を腐敗した既得権、つまり悪と断罪した言葉だ。今は腐った保守、患部を抉り出して自由・市場経済・韓米同盟を強調してきた健康な保守を吸収して国家統合の意志を打ち出すときだ。不気味だ。国民の半分を清算の対象であるかのように断罪してしまえば、多くの人々が盧武鉉5年間の許せない組み分け、分裂の時代を思い出す。


 先週の記者会見では“非常機構を通じての事態解決”を強調した。憲法にも法律もない非常機構は民意にも反する。絶対多数の広場の民心は正しい政治の回復を促したものであって、自ら権力を握るという主張ではなかった。このような話が有力な大統領候補の口から出続いたら、すでに崩れ法と秩序、最小の原則もまた崩れてしまう。


2.秋美愛民主党代表も線を超えている。“先にセヌリ党を解体しろ”と言い“大統領が美容のため2,000億ウォン以上を使った新しい事実が明らかになった”と言い放った。もちろん、このような言葉は新しい事実でも、古いファクトでもない。政治的力は憲法との事実に基づいたとき生まれる。混乱の収拾ではなく、拡散を望んでいるのかも知れない。


 彼はいわゆる“屈辱的な韓日外交・対米朝貢外交”を非難しながら“国民主権・軍事主権・外交主権まで飴と替えて食べるつもり”とも非難した。韓日間で結ばれた軍事情報保護協定(GSOMIA)は‘なぜ今結ぶのか’という議論をさておき、日本の情報能力を活用することだ。小型化された核爆弾に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)まで完成した北韓への対応措置だ。“軍事主権・外交主権まで飴に替えて食ったもの”という認識は、荒っぽい言い方の前に‘では、潜水艦から韓半島へ発射されるかも知れない核ミサイルをどう防御するつもりか’という常識的疑問には答えていない。


 ‘対米朝貢外交’云々は“米国が防衛費分担金(増額)を要求するとき受容れが不可避”と言った防衛事業庁長の発言を批判したものだ。米国の公式要求がないのに、先に言うことは適切ではない。だが、このような防衛事業庁長に“米国に血税を椀飯振舞するという防衛事業庁長は国の恥”と言った第1野党代表の発言も頼りない。では、北核とミサイル、北韓の挑発への対応は何か。


3.民主党の自傷行為で李貞鉉セヌリ党代表が怒った。“与党と保守勢力をどう見てそう言うのか”と公敵になった親朴と保守層全体を等値してしまった。執権側は陣営の論理・理念の戦いの構図をもって突破を試みるが、政局の巨大な流れは朴槿恵政権の守護が容易でない状況だ。法務長官と大統領民情首席秘書官の同時辞表提出も動搖の兆候だ。政府内の法律専門家たちの辞退は、大統領の憲法と法律違反に対するこれ以上の法律的防御が難しくなったことを意味する。


 大統領の退陣は‘力’による方法と‘法’による方法がある。前者は下野で後者は弾劾だ。下野はハードランディング、弾劾はソフトランディングに近い。ろうそく示威で不祥事が発生していない限り、下野を避けて弾劾が進められると思われる。国会議員172人の野党に28人のセヌリ党議員の賛成票が必要だが、今日の報道では“40人余りのセヌリ党議員が弾劾に賛成”という報道が出た。世論調査もセヌリ党から少なくとも28人以上の賛成が出るという統計もある。これから検察の捜査と特検、国政調査を通して違憲・違法事案が追加で確認され、メディアの扇動も激しくなる。世論は悪くなるしかない。国会の弾劾手続きが避けられないと見る理由だ。


4.大統領が退けば保守政権の終息を意味する。支持率1位の‘文在寅’が執権しても、2位になった‘潘基文’が第3地帯で‘安哲秀'や非朴と連帯して集権するか、それとも3位に浮上した‘李在明’(城南市長)が執権しても9年保守政権は幕を閉じる。保守政権の脈を継ぐ代案人物が不在なためだ。


 保守政権の終焉は保守が追求してきた価値の危機も意味する。国定教科書の廃棄を筆頭に、国家保安法廃止と差別禁止法制定などが後を次ぐ。特に下野は急進的な左傾化、革命を意味する。文在寅が言及した“大統領の退陣を超えて”“時代の交替”“国の根本を完全に変える”いわゆる“国家大改造”が行われるだろう。にもかかわらず、韓国のいわゆる保守は‘崔順実ゲート’を覆える政治力も、言論と文化を通じての宣伝能力、動員力も持っていない。何よりも‘不法’と‘偽’という事件の本質が、保守の多数を占める中道保守層を離脱させた。自己防衛の力が消えた状態だ。

 

5.憲法第1条、第3条、第4条が命令する自由民主主義による統一された韓半島。これを超えての大陸と草原への道を切り開くためには、今のところ奇蹟が必要だ。興味深いのは、北韓の耐久性の弱化という常数と共に、弾劾政局以降に登場する黄教安大統領代行だ。野党の互いに異なる算法が作り出す黄教安代行は劇的な反轉の触媒になるのではないか。進歩・左派はこの‘脅威’を除去するためもがくだろうが、いわゆる潛龍(有力大統領候補)の貪欲は予測不可能の大小の自傷行為をもたらすだろう。その結果、黄教安以上の新しいリーダーが歴史の前面に出るかも知れない。あるいは、崔順実ゲートを超える、もっと恐ろしい巨惡が明らかになって事件の反転が生じるかも知れない。


6.韓国の政治は人間の予測をはるかに超える。昨年、与党は野党の分裂という政治的好材に会って傲慢と独善に陥った。そして世論調査という科学と統計を超えた民心の過酷な膺懲を受けた。案の定、野党の相次ぐ自傷行為スは崖っぷちの政権に退路を開いている。


 未来が決まっていない国。次回の大統領選挙の時期も人物も五里霧中の国だ。天はなぜこの時期に猟奇的な事件を公にさせてすべてのことを覆そうとされるのだろうか。人間の力でも能でもない、ただ超越的な栄光がこの地に臨められるよう叫ぶことを望んでおられるのではないか。その叫びを通して‘われわれが分からない大きく秘密のことを示される’ことではないだろうか。彼を通して、その方の威厳と尊貴を表そうとするのではないか。絶対者の絶対性の前で、われわれの無力と無能を告白し心を尽くして祈るときだ。


http://libertyherald.co.kr 2016-11-24 16:53

更新日:2022年6月24日