大韓民国の大統領には退く‘2線’がない!

 

 国会による国務総理任命と大統領の2線後退はクーデターだ。大統領の権限行使の核心は国務総理任命だ。大統領は自分と与党の政策、理念、路線と合う国務総理を任命する義務がある。もし、朴大統領が国会に推薦したと言ってTHAAD配備反対や国家保安法廃止を主張してきた人を国務総理に任命すれば、主権者を無視した裏切りや違憲的行為になる。

趙甲濟

(2016.11.11)


 朴槿惠大統領は11月8日、国会議長を訪ねて“与野党の合意で国会が総理を推薦すれば、その方を総理に任命して実質的に内閣を統括する権限を与える”と言った。野党はこの提案を拒否し、大統領が2線へ退かねばならないと圧迫している。

 

 ‘与野党の合意推薦’と言ったが推薦された人を大統領が任命すると約束しないため、実際には‘国会による国務総理任命’だ。さらに、大統領が2線へ退くか‘すべての権限を放棄する’が加えられたら、これは憲法違反だ。憲法は大統領が国務総理を任命すると明示している。国会が総理を推薦し事実上任命する憲法的根拠がないという意味だ。国民たちは2012年の大統領選挙で朴槿恵候補を大統領に選ぶ主権を行使した。大統領による総理の任命は、選挙を通じて国民が大統領にそういう権限を与えたためだ。有権者たちは国会に国務総理推薦権や任命権を委任したことがない。


 大統領の権限行使の核心は国務総理の任命だ。大統領は自分と与党の政策、理念、路線と合う国務総理を任命する義務がある。有権者たちは朴大統領を選ぶとき、彼は提示した保守的政策に賛同したわけだ。もし、朴大統領が国会に推薦したからと言ってTHAAD配備反対や国家保安法廃止、低い段階の連邦制を主張してきた人を国務総理に任命すれば、これは主権者を無視した裏切り、違憲的行為になる。


 野党が主張する‘大統領の2線後退’は事実上政権を譲れという脅迫だ。これも憲法違反だ。大統領には退く2線がない。‘2線後退’が、内治を放棄し、国防と安全保障だけをやれという意味でも、憲法違反であることは明白だ。憲法は大統領の憲法的権利を他人と分け合うように規定していない。内治と安保は区分が不可能だ。安保は内治の核心だ。


 国会を掌握した野党が左傾的人物を国務総理として押し付けて、大統領を政治的に武装解除ないし無力化させることはクーデター的発想だ。武力を動員しなくても憲政毀損という点ではクーデターだ。


 朴槿恵大統領がこのような野党の圧力に屈することは、憲法が与えた任務を放棄する行為であり、これがまさに弾劾事由になる。2線に後退するなら下野するのがましだ。朴大統領が任期を保証されるため反憲法的勢力に政権を渡そうとするならこれは一種の逆謀だ。


 崔順実事態の核心は、大統領が国家機構や公組織(政府、長官、与党)を疎外させ、法的権限のない私人、それもレベルの低い人物に国政への介入を許容した点だ。これは国家システムの動作原理を崩した国紀紊乱行為だ。朴大統領がこれによる混乱を収拾するという名分で、それよりもひどい‘政権の不法的譲渡’を画策するなら、今度は愛国勢力が彼の下野や弾劾を主張する。


 崔順実事態と関連して朴大統領が取った一連の措置は迅速かつ真正性があった。今や検察と特検の捜査を待ちながら確認された事実を根拠にして大統領に対する処理を決定するしかない。これが民主主義国家が法治によって問題を解決する方式だ。当然、時間がかかる。手続き的な正当性を重視する民主主義はそもそも時間がかかる。数十人を殺した殺人犯に死刑を宣告するのにも何年もかかる。李承晩大統領が建国演説を通じて話した通り、われわれは民主主義が遅い制度ではあるが、最終的には善をなすという原理を信じて待たなければならない。


 崔順実事態の結論が出るまで朴大統領は正常に職務を遂行しなければならない。特に、国家の信頼がかかっている外国訪問、国際会議は絶対に欠席してはならない。米国のニクソン大統領は、ウォーターゲート事件が悪化して弾劾の危機に追われているときも、第4次中東戦争の際イスラエル支援など外交行為は続けた。クリントン大統領もルインスキースキャンダルのとき、正常に外交活動を続けた。もし、朴大統領が予定された外国訪問を取り消せば、国政を放棄し植物状態を選択したと判定される可能性が高い。


 国会が推薦した総理がTHAAD配備に反対すれば、米国では駐韓米軍撤収の世論が起き、韓国は左右の対決と国務総理-大統領の葛藤が重なって最悪の場合、内戦的状況が起きるかも知れない。‘国会推薦総理の任命と2線後退’を大統領が受け入れるのは、大韓民国が毒を飲むことになる。


 これからは総理問題にこだわる必要がない。ここまで譲歩したのに、野党が協力を拒否すれば、現在の黄教安総理体制で行くしかない。示威、座り込み、署名運動の中で、朴大統領は憲法の盾を持って困難な時期を持ち堪えねばならない。後退はしても降伏してはならない。示威で政権を崩すという時代遅れの癖を正す必要がある。戦略的な後退に時間を稼ぎながら保守勢力が再整備、反撃して、大韓民国の操縦室に反大韓民国勢力が入ることを防ぐ準備をしなければならない。これは大韓民国のための政治的殉教になるはずだ。大韓民国大統領の第1の任務は共産化を防ぐことだ。


 大韓民国の憲法に明記された大統領の権限と義務(第66条から85条まで)を読んで見れば、国会の国務総理任命や大統領の2線後退が憲法違反であることが分かる。


www.chogabje.com 2016.11.08 23:11

更新日:2022年6月24日