‘崔順実事態’の展望

世論の向背が決定する。底まで落ちてから出口が見える。改憲も一つの方法だ。今乱暴な言葉を吐き出す人々は遠からず後悔する。

 趙甲濟

(2016.11.7)


 現在の朴槿惠大統領は孤立無援だ。これまで手足のように全的に依存してきた‘最側近3人組’と崔順実勢力が除去された。支持勢力であるセヌリ党は分裂し、特に朴大統領に忠誠を誓ってきた親朴勢力は世論の指弾で無力化された。野党は弾劾と下野を言い出す。左派運動圏は大衆決起を目論んでいるはずだ。愛国運動勢力は裏切られたという挫折感で脱力状態だ。大統領の海洋警察解体や‘官ピア(官僚+マフィア)’公言など官僚無視で不満が積もった公務員たちも積極的に動かない。この雰囲気が警察に移れば示威鎮圧が難しくなる。軍だけは動揺していないように見える。世論は下野や弾劾支持が50%になった。朴大統領が国務総理に盧武鉉政府の核心だった金秉準氏、秘書室長に金大中政府の大統領秘書室長を務めた韓光玉を任命したのは、野党の意向を最大限反映した措置と見えるのに、朴槿恵政府の失敗ばかりを狙う野党は非難一色だ。


 船が嵐を突き抜けて進むためにはエンジンが切れず船長がしっかりし船員たちが一つにならねばならない。エンジンは弱くなり船長は精神が混迷だ。船員たちも右往左往する。


 検察と特検の捜査は今後数ヶ月続き、マスコミは集中的に報道する。大統領に有利な結果が出るはずがない。安鍾範前首席秘書官はミールとKスポーツ財団のための募金は大統領の指示によるもので進行過程を随時報告したという旨を検察で陳述したと中央日報(11月3日付け)が報道した。

 今朝、ある弁護士が私に電話をかけて“この報道が事実なら、朴大統領は第三者贈賄罪に該当する”と言った。第3者に賄賂を提供するよう指示したわけだが、これは本人が賄賂を受け取ったのと同じ犯罪行為になるという。彼は“これは弾劾事由になり得る”と言った。しかし、野党が大統領の総理大臣の任命に事前に関与することを権利のように主張するのは憲法違反だと指摘した。“大統領が募金問題についてなぜ側近の参謀たちから法律的諮問を受けなかったのか理解し難い”と言った。安鍾範首席が財団募金の責任を大統領に転嫁すれば、大統領に対する調査は避けられなくなる。


 長官は国会が同意しなくても大統領が任命できるが、国務総理、監査院長、大法院長、大法院判事、憲法裁判所長、憲法裁判官、中央選挙管理委員会委員は国会の同意(過半数の賛成)を得ねばならない。野党が反対すれば金秉準内定者は国務総理になれない。野党も反対だけしたら世論の負担を感じる時が来る。

 

 弾劾や下野を主張する人々の頭の中には2004年の盧武鉉弾劾の逆風事例があるだろう。当時KBS、MBCの扇動放送もあったが、“われわれが選出した大統領をなぜ国会が罷免するか”という世論の反発が激しかったのだ。


 来週の12日に予定されている光化門での集会も変数だ。暴力集会に変質されれば、“それでも法は守らなければならない”という世論が起こるだろう。今の世論は出口を見つけてこそ治まる。メディアの扇情的な報道、検察の捜査と関係者たち拘束、大統領の人事刷新と率直な謝罪、大衆集会などが憤怒の噴出口の役割をする。憤怒が排出された後は国民世論が理性を取り戻せる。


 崔順実事態がどういうものなのかを顧みる心の余裕もできる。朴大統領を非難するのに適用した基準を相手にも適用しようとするだろう。大統領が大きな過ちを犯したのは言い訳ができないが、核兵器を開発する北韓政権に4億5000万ドルの現金を国民が知らないように提供したことよりもっと悪質なのか。金正日に尋ねて国家政策を決定することと、崔順実に訊いて決めたのも比較して見る心ができる。このように均衡感覚を回復すれば‘それでも憲政の中断はあってはならない。本気で反省した大統領を中心に難局を乗り越えねばならない’という方向に民心の流れが変わり得る。


 ‘朴槿恵が大統領の役割ができないなら、国民が自らを大統領だと思い責任のある行動をしなければならない’という話も出てくる。‘いくら憎くても、大統領は核兵器でわれわれの生存を脅かす敵と戦うわが軍の最高司令官なにの、ここまでコーナーに追い込むのが誰を助けることになるか’という覚醒もなされるかも知れない。そこまでたどり着くためには真実が明らかになり事態が底まで落ちねばならない。混乱の中で出口が見えるはずだ。


 例えば、このような共感が形成され得る。
 ‘この際に改憲をしよう。’


 大統領制の問題を制度の改善を通じて解決しようとする姿勢を見せるなら、そういう国は成熟した民主主義国家の資格を得る。今回の事態は国家的な問題を憲法の枠の中で民主的に解決できか否かの試験でもある。民主国家では国民の世論が最も大きな力だ。韓国の世論はしょっちゅう変わるが、それでも健全な常識が支配すると信じたい。大統領や政治家たちもこのような健全性に対する確信を持って真心で行動するとき、意外な結果を得られる。


 今、乱暴な言葉を吐き出す人々は遠からず後悔する日が来る。文在寅氏に最も有利な状況展開と言う人々が多いが、むしろ逆である可能性が高い。

 

www.chogabje.com 2016-11-03 10:57

更新日:2022年6月24日