‘下野か戒厳令か’という事態になる前に

 

今回の事件の核心は、朴大統領が40年間も非正常的な崔太敏父女と非正常的な関係を維持してきながら、‘非正常の正常化’を国政の指標としたということだ。

趙甲濟

(2016.10.31)


1.今回の事件の主体は朴槿惠大統領だ。真実を究明するためには当然、調査対象にならねばならない。起訴対象にはなれない。外患の罪ではないからだ。


2.今回の事件の核心は、朴大統領が40年間も非正常的な崔太敏父女と非正常的な関係を維持してきながら、‘非正常の正常化’を国政の指標としたということだ。

3.青瓦台と文化体育部の高位公職者たちが、崔順実の利権のための使いの役割をするようにした人は朴大統領であると見るしかない。崔順実は主に体育と文化の分野で国政に介入し、大統領の庇護を受けたようだ。外交、国防、経済分野への関与は実力の不足で不可能だったはずだ。したがって‘国政壟断’という表現は誇張だ。


4.崔順実の役割について大統領と長・次官級人士たちが国民に嘘を言い続けてきた。これは法治の根本である国家機関の正直さを崩す国家紀綱紊乱行為だ。崔順実の国政介入よりこれを覆い隠そうとする青瓦台の試みがもっと大きな問題になるだろう(ウォーターゲート事件のように)。


5.崔順実母女が出国し帰国を拒否行為は朴大統領の幇助のもとで行われたと見るべきだ。これは司法妨害行為であり長期化すれば弾劾の事由となる。

6.国民が憤怒する最も大きな理由は、大統領職の権威が水準以下の人格を持った崔順実によって壊れたことだ。大統領の体と魂、つまり心身が崔太敏に掌握されたと言った駐韓米国大使館の分析が正確だったと見える。


7.40年前も、大統領の娘だった朴槿恵は崔太敏のため企業からお金を拠出しようしたのに(金正濂元青瓦台秘書室長の証言)、今回は大統領になって崔太敏の娘のためお金を拠出させたと疑われる。全斗煥大統領が退任後に備えて‘日海財団’を作るため企業からお金を集めたが結局、白潭寺へ行かされた事件から学んだ教訓がなかったということだ。


8.近年の大統領たちの中で朴槿恵のように検察を政治的に悪用した例はない。大統領の下命に事寄せて無理な捜査のため無念の人や自殺した人々まで出た。検察の独自性と公正さを壊した大統領として記録されるだろう。今、その検察の刃先に狙われるようになったのは自業自得だ。


9.朴槿恵を盲從した勢力は、このような朴大統領を批判する保守的人々までを敵視して愛国陣営を分裂させた。彼らは朴槿恵の固定支持層の存在を根拠に退任後も影響力を維持できると言い放った。


10.公務員集団の‘反朴’感情は改革への抵抗でもあるが理由がある。大統領が、公開的に‘官ピア(官僚マフィア)’という言葉を使い、海洋警察を解体し、長官たちとは会わず崔順実などとは密接に疎通したから、疎外感を感じるのは当然だ。


11.もちろん、朴大統領がよくやったことも多い。統進党の解散、対北政策の正常化、左傾的歴史教科書の修正努力、公共放送の正常化努力、韓米連合軍司令部解体の無期延期、従軍慰安婦問題の整理など。憎い人でも良い点を見なければならず、良い人でも悪い点を見るべきだということわざがある。

12.これからどうすべきか。時間が足りない状況で、朴大統領が選択できる手段は多くない。真実の究明が最善の活路だ。優先順位で書いて見れば、まず、崔順実母女を早く帰国させて捜査に協力するようにする。第二、‘私も捜査に応じる’と宣言する。第三、青瓦台秘書室を一新する。第四、セヌリ党を離党する。第五、これからは国務総理に日常的行政を任せ、自分は経済回復、北核への対処、大統領選挙の公正管理に専念すると宣言する。第六、下野はしないことを明確にする。


13.以上の措置ができるのか、できたとしても効くだろうか。今は、問題が民主的制度・装置の中にとどまっている。メディアと国会が状況を主導していする。だが、もし扇動勢力が介入して場外集会を始めれば問題はもっと複雑になる。‘狂牛病乱動’のような事態が再燃すれば、警察による鎮圧が不可能になるかもしれない。国民の支持がなければ警察も持ちこたえられない。示威隊が青瓦台を包囲し、警察が無力化されれば、大統領は‘下野か戒厳令か’の選択の岐路に立つかも知れない。どちらも韓国民主主義の危機だ。


14.ところで、韓国は世界で最も若い民主主義だ。英国に続いて二番目に長い民主主義の歴史を持つフランスも1950年代末と60年代の初め、アルジェリア独立問題をめぐり軍事クーデターに直面したことがある。ドゴールという偉大な指導者がいたためこの危機を災い転じて福の契機にしたが、韓国にはドゴールが見えない。もしかしたらどこかに準備されているのか分からないが。


15.国軍は、大統領がスパイや反逆者でない限り、忠誠を尽くさねばならない。憲法第5条は“国軍は国家の安全保障と国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とし、その政治的中立性は遵守される”である。国家秩序が崩壊し、他の国家機関が無力化されるとき、国家の安全保障を確保するのは国軍の神聖な義務だ。国軍は政治的中立を守らなければならが、国体・国家のアイデンティティに関する限り中立は存在しない。

 

www.chogabje.com 2016-10-28 11:55

更新日:2022年6月24日