国防費を増額せよ!

 

国防費の負担率をイスラエルの水準まで上げねばならない。国防費を増額せずに国防をしっかりするというのは国民を欺瞞する行為だ!


金成萬(予備役海軍中将、元海軍作戦司令官)

(2016.9.21)


 政府(国防部)は2017年度の国防予算を前年(38兆7995億ウォン)比4%増された40兆3347億ウォンと編成した。来年国防予算案のうち兵器体系の獲得・開発のための防衛力改善費は前年比4.5%増の12兆1590億ウォン、兵力と現存戦力の運営・維持のための戦力運営費は前年比3.7%増の28兆1757億ウォンだ。


 黄仁武国防部次官は9月6日、“強力な安保力量の確保のための国防予算は最近、北側の挑発など安保状況と政府の安保意志を反映して政府の財政総支出増加率3.7%より高い4%で編成した”と強調した。また、予算編成の重点について“北韓の脅威に備える核心戦力を補強し、現存戦力の発揮を最上に保全して確固たる態勢を維持する”と説明した。


 だが、これは当初、国防部が2016年3月30日に発表した‘2017〜2021年の国防中期計画’の予算増加に比べて大きく足りない。対象期間の5年間に必要な所要予算は合計226兆5千億ウォンに策定した。この中で戦力運営費は153兆1000億ウォン(67.6%)で年平均3.9%の増加、防衛力改善費は73兆4000億ウォン(32.4%)で年平均7.3%の増加と計画された。国防中期計画は現在と未来の予想される脅威と安保環境の変化に対応するため今後5年間の軍事力の建設および運営の青写真だ。


 一方、国防部は2017年度国防予算を現在の安保状況の厳しさと大型事業の所要などを考慮して国防費増加率を5.6%(防衛力改善費は9.0%)に設定した。9月2日、国会に提出した‘2017年の国防予算政府案’の見直しが必要だ。


 最近、北側の5回目の核実験(9.9)と弾道ミサイル(スカッドER)のTOT発射(9.5)の成功などによって緊急所要が発生した。専門家たちは一様に北韓の核ミサイル実戦配備が切迫していると評価する。これに対する対応は議論の余地がない。直ちにTHAADを緊急購買入して配置せねばならない。イージス駆逐艦(3隻)のSM-2をSM-3に交換せねばならない。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の脅威に対応するためには米国、フランスなどから核推進潜水艦(SSN)を賃借または購入すべきだ。


 追加所要が発生した。韓国軍は北の核実験(9月9日)に対する対応策として核兵器を使用すれば北韓の指揮部を直接報復攻撃すると警告した。イム・ホヨウン(陸軍中将)合同参謀本部戦略企画本部長は9月9日のブリーフィングで“わが軍は北韓の核実験を絶対に容認しない”と言い“すでに警告した通り、北が核を放棄するように動員可能なあらゆる措置をとる”と表明した。イム本部長はまた、“わが軍は北韓の核とミサイル脅威の高度化に伴い、独自の能力を拡充し作戦遂行体系と組織を発展させるため力量を集中しさらに加速している”と付け加えた。


 韓国軍は特に‘韓国型3軸体系’を構築して北側の核ミサイルの脅威に対応する独自の抑制・対応能力を強化すると強調した。韓国型3軸体系は、北の核ミサイルの脅威に備える既存の‘キルチェーン(Kill Chain)’と‘韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)’に‘韓国型大量膺懲報復(KMPR:Korea Massive Punishment&Retaliation)’概念を追加したものだ。第1軸はキルチェーンで、北韓のミサイル攻撃の兆候が明確な場合、移動式発射台と関連固定施設などを発射前に打撃する体系だ。このため、地上・海上・水中発射弾道・巡航ミサイル、空中投下誘導爆弾・ミサイル戦力を集中的に育成している。

 わが軍の能力は、弾道・巡航ミサイルは総量的な側面ではすでに北側の水準に達していた。巡航ミサイルの精密打撃能力と大量の空対地誘導爆弾やミサイルも相当部分で対北優位を確保した。軍はさらに精度を向上し、高威力の弾頭を開発するなど、対北優位をさらに強化する予定だ。


 第2軸のKAMDは、北側が発射したミサイルが地上に到達する前に迎撃する対弾道弾ミサイル体系だ。現在、弾道弾早期警報レーダー、イージス駆逐艦、パトリオットなどを戦力化して首都圏や主要飛行基地などの弾道弾探知・防御能力を保有した。そしてパトリオットと中距離地対空ミサイル(M-SAM)の性能改良、長距離地対空ミサイル(L-SAM)の研究開発など、防御地域を拡大し迎撃能力を向上している。


 第3軸のKMPRは、北側が核兵器で攻撃する場合、北韓の戦争指導本部を直接狙って膺懲・報復する体系だ。このため、同時に多量に精密打撃が可能なミサイルなど打撃戦力と特殊作戦部隊などを運用する計画だ。このような計画を構築するためには、すでに推進中の1軸と2軸体系の完成時期を2023年より早めねばならない。第3軸(KMPR)のためにはあらゆる分野での戦力増強が行われねばならない。


 そして、北側に劣勢である在来戦力の補強も必要だ。核兵器で武装した北側は、在来式の武力挑発(天安艦爆沈、延坪島砲撃、電子戦/サイバー攻撃など)をもっと頻繁に仕掛けてくる可能性が高い。最近の事例を見れば分かる。核武装国家であるロシアが2014年にウクライナを攻撃したとき、どの国も助けに出ないのが国際社会の現実だ。それは、もしかしたら核戦争に巻き込まれる可能性があるためだ。わが軍の在来兵器の戦闘力指数は北側の80%で危険な水準だ。


 結論的に、国防部はこのような追加所要を反映して国防費増額を要求せねばならない。実際にわれわれの国防費は他国に比べて格段に足りない。Military balance 2014を基準にして、韓国の国防費はGDPの約2.4%水準だ。米国3.3%、ロシア3.4%、イスラエル6.6%に比べて非常に低い。われわれの経済力(世界10大経済大国)はGDPの3%以上の国防費を十分に負担できる。安保状況を考慮ればイスラエル水準まで国防費の負担を増やさねばならない。国防費を増額せずに国防をしっかりするというのは国民を欺瞞する行為だ。


www.chogabje.com 2016-09-15 23:21

更新日:2022年6月24日