米国大統領選挙、ヒラリー、トランプ、そして韓半島の戦争
‘お金’を理由に米軍が撤収し北韓が挑発して米国がまた討つ「6・25戦争式」のシナリオ


金成昱(社)韓国自由連合代表

(2016.8.9)


1.米国の新しい大統領の登場は韓米関係の根源を揺るがすかも知れない。悲しいが、井の中の蛙の韓国は何の対策も見えない。


2.ヒラリーであれトランプであれ保護貿易が強化される。貿易で生きる韓国には衝撃だ。大統領選挙を前に改定された共和党と民主党の政綱は、それぞれ“貿易協定らが米国の利害関係と主権を十分に保護していないなら拒否すべき”と“既存の貿易協定の見直しと為替操作国への膺懲”を規定した。米政府は今年4月、中国・台湾・日本・ドイツとともに韓国を為替操作国に入れた。


 英国のEU脱退、THAAD、米大統領選挙の余波でEU・中国・米国の3大市場が一度に揺れ兼ねない。自由貿易と市場開放を先導し、世界の繁栄を主導してきた米国がもう変わった。貿易をゼロサムゲームと見る愚かなポピュリズムに駆られている。グローバル化の後、絶対貧困が減ったにも拘らず、貧富の隔差深化に怒ったアメリカ庶民層の世論に便乗したのだ。


3.韓半島問題はなおさらだ。ヒラリーとトランプの中で誰が大統領になろうと北韓に対する圧迫は強化され緊張は高まる。緊張を防ぐためには抑止が伴わねばならないが、問題はそうでないということだ。 ‘抑止なき壓迫’は北韓の挑發とさらに戰爭を呼ぶ。また、‘一貫性のない圧迫’は北韓の挑発と戦争恐喝の前で適切な妥協を招きかねない。妥協は北韓と中国が主張してきた、いわゆる‘平和協定’の締結だ。平和協定が締結されれば、韓半島の米軍は撤退するかその性格が根本的に変わる。

 

 具体的に見よう。まず、改定された共和党と民主党の政綱はそれぞれ、北韓を‘金氏一家の奴隷国家’と‘加虐的独裁者が支配する最も抑圧的な政権’と規定した。また、“完全かつ検証可能で後戻りできない方式の核兵器プログラムの解体”と“北韓核は容認できない”とそれぞれ表明した。これはヒラリーであれトランプであれ、人権、および核兵器・ミサイル問題に対する対北圧迫が増加することを意味する。ムスダンミサイルが米国グアム基地を攻撃できるようになったから当然のことだ。ここまでは悪くない。


 次に、圧迫は強くなるのに抑止は弱くなる。トランプは、すでに‘駐韓米軍撤収’を何度も言い出した。在韓米軍への分担金の増額がなければ米軍を撤収させられるということだ。トランプは5月“金正恩との対話もあり得る”とも言った。数日後、“北韓へ行かない”と言ったが不安だ。これは、圧迫に相応する抑止の消滅(米軍撤退)、あるいは抑止をしては妥協もあり得る(平和協定)を意味する。


4.最悪はこうだ。‘お金’を理由に米軍が撤収し北韓が挑発して米国がまた討つ「6・25戦争式」のシナリオ、米国が平和協定を結んで米軍の性格は根本的に変わり、南北が連邦制で国際社会の普遍的秩序から離脱するか、ベトナム式の赤化を経るシナリオ。実際に前者なら、米国と日本の景気は一挙に回復する。 America First、米国の国益に損にならないということだ。


 北韓核の小型化完成を目前にしている状況で、韓国の生存は韓米同盟を確保することだ。現実は違う。民主党政権8年間、共和党との接触は弱体化された。ネットワークを強化しようとする与党の努力も見えない。共和・民主の党大会に韓国の政党代表団派遣の慣行も破られた。共和党の全大に金世淵セヌリ党議員が自費で参加したくらいだ。縄張りの争いで国益と生存に直結する世界的な流れを無視している韓国のリーダーシップ、泥仕合で四分五裂された韓国指導層の現住所だ。


http://libertyherald.co.kr 2016.07.30 14:03

更新日:2022年6月24日