米政府が金正恩を人権犯罪者に指定した意義

(2016.7.13)


 米国務省が7月6日、発表した北韓人権蹂躙関連報告は今年2月18日に通った「対北制裁強化法」に基づいて議会に提出する報告書だ。対北制裁強化法は、北韓で起きていた人権蹂躙と検閲の責任者と、その人権蹂躙と検閲を行う者らを明示するように定めている。

 米国務省の今回の報告書で注目されるのは、金正恩体制の人権犯罪を国連総会が採択した国連北韓人権調査委員会(COI)の報告書を引用していることだ。つまり、「米国の敵」ではなく国連が「文明社会の敵」として金正恩を国際刑事裁判所に付託するよう安保理に勧告した国連加盟国の決定の権威を尊重している点だ。

 米財務省は直ちにこの報告書に明示された者らを制裁対象に指定した。財務省の措置は大統領の命令の効力を持つもので、金正恩をはじめ、北韓住民を抑圧する暴圧機構の核心を一括指定することで金正恩の唯一指導体系を直接狙った。つまり、事実上のレジームチェンジを宣言したのだ。もう平壤側や北京側が目論んできたいわゆる米朝平和交渉などは不可能になった。

 平壌側は宣戦布告だと反発するが、これまで韓米同盟に対して無数の挑戦と宣戦布告をしてきたのは北側だ。平壌側は言葉だけの布告ではなく実際に攻撃してきた。金正恩が武力で挑発してくれば、北韓解放・統一のチャンスだ。

 退任を半年程度残したオバマ大統領に今回の決断を強いたのは金正恩自身だ。つまり、金正日が核兵器を決してあきらめないこと、そして金正恩の核ミサイルが米国本土を攻撃できるようになるのは時間の問題であることが明確になったからだ。北韓自身が核兵器で米本土を直接攻撃しなくても、ISのような西欧文明を否定するテロ集団に核弾頭を渡すか、EMP爆弾などを使って、人類文明そのものを破壊する恐ろしい事態を事前に止めねばならなくなったからだ。

 

 オバマは大統領は、米国と米国民の安全が決定的に脅かされる状況を放置した大統領として歴史に記録されるのは耐えられない。ところが、米国が今現実的に選択し得る措置は、北韓の核能力を物理的に完全除去するか、米国に対して核兵器の使用を辞さない危険な体制を除去することだ。それで、国連総会が採択した勧告を実行する方法を選択したのだ。

 米国務省のトム・マリノウスキ民主主義・人権・労働担当次官補は、今回の措置が制裁リストに載っていないすべての北韓官吏に、北韓住民弾圧に加担するか否かを選択せよという警告だと明言した。

 オバマ大統領の決断は、北韓住民を弾圧体制から解放すると同時に、米国の安全を守護する最善の方策であると言える。米国はこの覚悟を示すため韓国にTHAADの配置を発表(7月8日)した。米国の選択は、大韓民国の国家利益・国家目標とも完全に一致する。朝鮮労働党の機能停止・解体は北韓解放、統一だ。韓半島が分断71年を経てようやく現状打破の決定的な局面が開かれるようになった。当事者である大韓民国こそ米国以上の覚悟と決断が必要だ。もう残された時間がない。

 ところで、朝鮮労働党の在日支部である朝総連が今回の制裁対象に指定されなかったのは心外だ。「朝総連」こそ野蛮的暴圧体制への自発的な協力者であるからだ。朝総連は、金正恩と一緒に破滅を迎えるか、北韓同胞を解放する側に立つか、歴史的な選択をせねばならない。(2016年7月10日)

更新日:2022年6月24日