先制攻撃の意志が重要だ
突厥の名将トニュククは“城を築いて安住する者は必ず滅びる”と言った。守城ではなく積極的攻勢に出なければならない。そうしてこそ生存し勝利することができる。


                        黄晟準(文化日報論説委員)
                               (2016.3.9)

 国連安全保障理事会の対北制裁決議案第2270号満場一致で可決されてからわずか10時間後の3日の午前、北韓は東海で新型の300㎜放射砲6発を発射した。昨年10月10日の労働党創建70周年の閲兵式で姿を見せたもので、発射したのは今回が初めてだ。この放射砲は中国の「WS-1B」を模倣して開発し、射程が170㎞に達して非常に脅威になるものと分析されている。金正恩が今回の試験発射を直接参観したと発表されたが、国連の制裁に屈しないという意志を内外に誇示するためのものと見られる。


 では、なぜ弾道ミサイルではなく放射砲だったのか。まず、国連の制裁を避けためだ。国連は北韓の弾道ミサイル発射を禁止した。国連の制裁案が出て直ちに正面から対抗するのには度胸が足りなかったはずだ。ところで、放射砲が弾道ミサイルなのかは概念の定義によっては議論の余地がある。したがって境界線上での巧妙な挑発を通して国連との正面衝突は避けながらも自分は萎縮していないことを示すための行動だ。第二に、サード(THAAD)を韓半島に配備しても北韓にはTHAADを破ることのできる低高度の長距離放射砲があるというメッセージなのだ。第三に、新しい武器体系を披露することで多様なカードを持っていることを誇示したのだ。


 北韓の300㎜放射砲配備が現実化するやイスラエルの‛アイアンドーム(Iron Dome)’を導入すべきだという主張が出ている。イスラエルがハマスやヒズボラの放射砲攻撃を効果的に防御しているからだ。イスラエル側によれば、2011年3月に実戦配備してから2014年10月まで、なんと1200発以上のロケットを迎撃した。だが、数発ずつ飛んでくるイスラエルと数百・数千発が同時に飛んでくるかも知れない韓国の状況は違う。ないよりはましかも知れないが、費用対効果を計算しなければならない。THAADは核ミサイルという決定的な一発を防御せねばならないため必要だが、放射砲と軽いパンチをいちいち迎撃することには無理がある。


 いざ有事の際は防御に汲々せず先制攻撃で制圧せねばならない。まず、放射砲は放射砲をもって対応できる。韓国軍には多連装ロケットである天舞とM270というMLRSがある。精度や破壊力で北側を圧倒する。射程が短いという問題点はある。しかし、北側の放射砲が(南の打撃力が届かない)後方に配備されれば、それらの(対南)打撃範囲も減る。第二に、射程300㎞であるATACMS戦術ミサイルや玄武-2弾道ミサイルで北韓軍の攻撃原点や指揮部を破壊できる。そして空軍のF-15Kの空対地ミサイルと海軍の玄武-3巡航ミサイルで北韓のミサイルと放射砲を焦土化することができる。ここに、米軍の第210野戦砲兵旅団などの強大な対砲兵戦力が加われば北韓の砲ミサイルはまったく歯が立たない。


 問題は意志だ。第2次世界大戦のときフランスはマジノ線をもってドイツの戦車を阻止しようとした。戦車は戦車をもって対応せねばならないと言ったドゴールの苦言は無視され、フランスでは戦闘らしい戦闘もできず降伏した。ユーラシアの草原を掌握した突厥の名将トニュククは“城を築いて安住する者は必ず滅びる”と言った。守城ではなく積極的攻勢に出なければならない。そうしてこそ生存し勝利することができる。


                      文化日報 2016年03月08日付

更新日:2022年6月24日