力で解決できなかった核問題が口先で解決できるか

紛争そのものを解決せず平和協定を結ぶことは、仇同士の男女が和解せず結婚するようなものだ。韓国は、北韓の非核化前の平和協定議論そのものに反対せねばならない。

趙甲済

(2016. 3. 8)

 北韓の核凍結と平和協定の交換論や、米国と北韓が平和協定を水面下で対話説、そして中国が北韓の非核化の前に平和協定の協商を主張するなど、平和協定が話頭となっている。

 

 正常な平和協定は、戦争で勝敗が決まってから敗戦国と戦勝国の間で交わされる。1次世界大戦後のベルサイユ平和協定、太平洋戦争後のサンフランシスコ平和協定が良い例だ。

 

 平和が定着せず紛争が続く中で平和協定を結ぶ場合もある。イスラエルとエジプトの平和協定は成功的で、ベトナム平和協定は失敗作だ。

 

 韓半島では平和が定着どころか北の核武装と核脅威のため危機が高まっているのに、平和協定の話が出ている。紛争そのものを解決せず平和協定を結ぶことは、仇同士の男女が和解せず結婚するようなものだ。

 

 今は韓半島の平和協定を議論する時でない。北韓の核問題の解決なしの平和協定議論は、問題の解決ではなく問題をもっと複雑にする。韓国政府は米国、中国、北韓に対してこのような態度を明確に表明せねばならない。

 

 韓国戦争の終結する平和協定を、韓国を抜いて米国と北韓が議論するというのは、当事者原則に違背する。米国が果たして平和協定の当事者になり得るのかに対する疑問もある。統一研究院の崔鎭旭研究院長は2007年に書いた論文でこう指摘した。

 

 <米国は韓国戦争のとき、北韓に対して単独で戦争を宣布しなかったため、米議会が米・北平和協定を批准する法的根拠が希薄だ。>

 

 休戦協商に署名した当事者は国連軍司令官、北韓軍司令官、中国軍司令官だった。ことも分からずに知っているふりをする一部の知識人たちは、韓国が休戦協商の署名者でないため、平和協定の当事者の資格がないという妄言をする。これは、韓国を米国の植民地と規定し平和協定会談から除外させようとする北韓の強弁をそのまま追認するものだ。

 

 崔鎮旭研究員(現在の研究院長)はこう書いた。

 

 <韓国の立場では韓国戦争は南・北韓間の葛藤で、南北韓が平和協定の当事者だ。停戦協定の当事者と平和協定の当事者は別個のものだ。停戦協定は軍事的問題のみを解決するための条約で、政治的問題を解決するための平和協定とは違う。実際に韓国戦争の停戦協定第4条60項は“韓国問題の平和的解決のため、双方の関係当事国政府に政治会談の開催を勧告する”と規定した。また、国連総会の決議(1953.8.28)によって、16個国の参戦国・韓国と北韓・中国・ソ連が政治会談の当事国として定められ、実際に政治問題の解決のためのジュネーブの政治会談(1954.4.11-6.15)が開催された。>

 

 崔鎮旭氏はこう敷衍して説明する。

 

 <ベトナム戦争の例でも、1956年のジュネーブ会議で南ベトナムは停戦協定の当事者ではなかったが、1973年の平和協定では当事者として参加した。さらに、南・北韓だけでなく、韓半島平和体制の構築によって影響を受ける主な関連国が一緒に参加する多者協商もいくらでも可能だ。平和協定の当事者と関連して2005年9月19日の6者会談で“直接関連当事国が別途のフォーラムで韓半島の恒久的な平和体制を協商すること”に合意し、‛直接当事国’は南・北韓と米国、中国であることについてコンセンサスが形成された。ところが、2007年の南北首脳会談で“直接関連する3者または4者首脳”という表現のため、混乱が惹き起こされるなど、韓半島平和体制の当事者問題は依然として論争の種として残っている。>

 

 韓国政府は米国政府に対して“韓国の参加なしの平和協定の議論に反対する”ことを今から公開的に闡明せねばならない。

 

 崔鎮旭氏は<平和条約は信頼回復が先行せねばならず、平和条約の当事者間の信頼が形成される前に平和条約を締結するのは非常に危険だ>と警告する。

 

 <ほとんどの平和条約は戦争が終わった後、平和を回復する手続きとして政治的目的を持って締結されるが、韓半島の平和体制は勝者と敗者のない平和条約であるため、さらに信頼回復が重要だ。つまり、普通は勝者と敗者が決まり、戦争が終われば一方から条件が提示され、受け入れられる手順を経るが、勝者や敗者のない戦争の平和交渉ははるかに複雑になるしかない。しかも、最近推進されている韓半島平和体制の構築は非核化と密接に関連して議論されており、在韓米軍などいろんな難題が連携されているため、米・北国交正常化の後、関係改善と信頼回復の後、徐々に解決していくのが望ましい。>

 

 日本とソ連は平和協定を結ばず國交正常化をしたケースだ。今も日本とロシアの間にはいわゆる北方領土問題で平和協定がない。

 

 韓国、米国、北韓、中国などの4者間であれ、米・北間であれ、一旦、平和協定が議論され始めたら、韓国は核兵器がないため疎外される。核武装した3国が核武装していない韓国を尊重するはずがない。一旦、会談が始まれば何とか合意を達成しようとする欲が働き、北韓に有利な局面が造成され、2007年に米国がそうだったように、得るものもなしに譲歩ばかりする可能性が高い。力で解決できなかった核問題を口先で解決できるはずがない。韓国は、北韓の非核化が前提されない平和協定の議論自体に反対せねばならない。今は平和協定が議論できる信頼の構築が全くなされていないことを強調し、平和協定の公論化を事前に封鎖しなければならない。

 

 見物客の立場になって米国と北ベトナムに協商を任せて滅びた南ベトナムの事例は、韓国に良い教訓になる。

 

www.chogabje.com 2016.03.02 22:54

更新日:2022年6月24日