“北韓は今後の核実験に高濃縮ウラン(HEU)を使う”

“現実的に3回目の核実験からHEUを使用した可能性が高い”

整理/金泌材

(2016. 3. 8)

 

 以下は、韓国国防研究院(KIDA)の李相敏研究員が3月1日、ホームページを通じて発表した小論文(北韓の4回目の核実験に対する技術的評価と追加核実験の展望)の内容の一部だ。

 

 <今後の核実験は高濃縮ウラン(HEU:Highly Enriched Uranium)を使う核実験になると予想される。第1次(2006年)と第2次(2009年)核実験はプルトニウム(Pu)を核分裂物質として使った可能性が高いが、第3次核実験(2013年)は現在として使用核物質の確認が制約されている。それでも、現実的に3回目の核実験からHEUを使った蓋然性が高い。その理由はHEUが大量に確保されると仮定すれば、Pu型とHEU型の両方を開発する必要がないからであり、核開発者の立場では増幅核実験など4回目の核実験以降を念頭に置くとき、一日早くHEU型に転換するのが有利だったはずだ。

 これからも、追加確保が制限されるPuより安定的確保が可能なHEUを使用する核兵器を追求すると予想される。それもそのはずで、北側が過去30年以上の間約40〜50kgだけを確保できたPuに比べ、HEUは年間20〜30kg以上も確保可能と推定されるからだ。

 

 ところで、一般的にHEUは核実験が必要ないと認識され、これまでのすべての核実験がPuに基づいていると評価する傾向もある。だが、他の理由をさておき増幅技術を利用する場合は、少なくとも一回以上の核実験が必要だ。北韓が主張する水素(爆)弾を開発するためには増幅技術は核実験を通して確認するしかない。いくら核に関する理論がすべて公開され、精巧なモデリングとシミュレーション(modeling&simulation)を可能にするスーパーコンピュータが開発されたとしても、複雑な構造の水素爆弾の開発は増幅技術の関門を越えねばならず、理論とシミュレーションだけでは実際の核実験を通じての技術的進展を代替できないのが現実だ。

 

 もし、核実験を通じて増幅技術を確保していない状態で水素爆弾の核実験を無理に推進して失敗すれば、その原因がどの段階にあるかが分からないため、増幅核実験からやり直さねばならない。金正恩の核開発への期待を充足させ、同時に失敗したときの処罰への恐れから、北韓の核開発者たちは段階を飛び越える無理な核開発推進ではなく、安全で成功率の高い核開発を選好するはずだ。そのため、増幅技術を適用したHEUベースの核実験を継続的に実施しなければならないのだ。

 

 そうだとすれば、なぜこれ以上不要と言える、Puの追加生産のため古く危険で、すでに2008年に不能化した5MWeの黒鉛減速炉を2013年8月末に再稼働したのかに対する疑問が台頭する。水素爆弾の核融合過程に少量のPuが必要であるため、残っているPuは水素爆弾核実験および製造に使うと推定され、追加生産されたPuもそういう目的に使われるか海外に流出させる可能性を排除できない。後述するが、5MWeの黒鉛減速炉はPuの生産に加えて、三重水素の生産に欠かせない核心施設だ。

 

 いずれにせよ、ここで生産される核物質は核分裂と核融合の両方に必要なもので、北側は自分たちの核開発に必要な量だけを計算して生産するのではなく、使用して残ったか核開発に必要な資金が足りないと思えば、これらの物質の海外販売を通してその財源を充当すると予想される。>

 

 [参考情報]北韓のウラン埋蔵量は、北韓以外の全世界の埋蔵量より多い

 北韓は外国からの物資搬入が遮断されても、国内埋蔵ウランで中国共産党の支援を得て核兵器を製造できる。理由は北韓が非公式に世界最大のウラン埋蔵地域であるためだ。経済協力開発機構(OECD)傘下の国際エネルギー機構(IEA)は世界のウラン埋蔵量を474万3千トンと推計する。このうち、オーストラリアが埋蔵量114万3千トンと最も多く、カザフスタン(81万6千トン)、カナダ(44万4千トン)、米国(34万2千トン)、南アフリカ共和国(34万1千トン)などの順だ。ここには北韓の埋蔵量は反映されていない。

 

 オーストラリアがウラン輸出で稼ぐ収入は年平均約10億オーストラリアドル(約7億8000万ドル)と推定されるが、最近はウランの値上げでこの金額をはるかに上回る。

 

 北韓でウラン鉱脈が発見されたのは第2次大戦末期の1943年だ。当時、日本は核兵器製造のため、北韓地域に対する大規模な地下資源探査を実施し、この過程で膨大な量のウランが埋蔵されていることを確認した。(『北韓核の技術的評価と展望』、合同参謀第21号、106ページ)

 

 中国共産党は6.25戦争期間中、北韓のウラン埋蔵地域に対して大々的な秘密探査を実施、金日成は中国が核実験に成功した1964年から中国の協力を得て北韓内のウラン鉱脈を探査した。

 

 北韓のウラン埋蔵量に対して、核物理学者の辛成澤博士(モントレー国際研究所客員教授)は、国防研究院在職時の2001年、「北韓の核開発の現況とわが国の対応方向」という論文で、“北韓は興南、平山、雄基などに2千6百万トンに達する良質のウランが埋蔵されてと知られており、採掘可能量は400万トンに達すると推定される”と言及した。

 

 辛博士はまた、“北韓の生産能力は必要によって拡張が容易であるため、現在の能力は問題でない”、“黄海道平山鉱山の場合、22個の生産単位工場、4つの選鉱施設、600mの鉱石運搬コンベアで原鉱を隣接した平和里の精錬工場に送って1日300kgを処理している”と記述した。また、“北韓は各地のウラン鉱山で採掘されたウランを現地で精製や製錬して、核燃料製造の中間段階の精鉱(yellow cake)を作っており、この精鉱は平安北道の亀城市と寧辺のウラン加工工場で最終加工されている”と付け加えた。

 

 金起炫議員は2006年10月13日、産業資源部に対する国政監査で“北韓に2千6百万トンのウランが埋蔵されているため自体生産できるようになれば対北制裁にもかかわらず、核爆弾が作れるため憂慮する”と指摘し、産業資源部長官が当時それを確認している。

 

 宋永仙議員も2009年9月9日、論評を通じて“北韓地域のウラン可採埋蔵量が400万トン”と言い“(北韓が)北韓地域のウランを利用すれば、原料の獲得が容易であるだけでなく、ジュネーブ合意文に抵触しないためウラン弾を保有する方に旋廻した”と主張した。

 

 ニューヨーク・タイムズは2004年5月23日付の報道で‛米国科学者連盟'(Federation of American Scientists、FAS)の資料を引用して“北韓の可採ウラン埋蔵量が400万トンに達する”と言い、イラク問題に加えて北韓の核能力が米国の新しい挑戦となっていると指摘している。

 

 米国が‛把握’している北韓のウラン鉱山と製錬設備は21ヶ所にのぼる。ここで、‛把握している’ということは米国がこれらの鉱山と製錬施設で生産されるウランの総量を模擬計量しているという意味だ。

 

 韓国は天然ウランと濃縮ウランを全量輸入している。そのため、電力生産以外の目的に轉用すると、その核燃料輸出国からの供給が中断される。

 

 北韓の核兵器製造能力を絶対侮ってはならない。今後、北韓の挑発周期は今よりも早まり強度はもっと高くなる。核兵器のない大韓民国は北韓にやられるしかない。大韓民国は独自の核武装だけが生きる道だ。(2013年12月27日作成)

 

www.chogabje.com 2016-03-03 18:17

更新日:2022年6月24日