国軍捕虜は従軍慰安婦より重要でないか
彼らの犠牲でわれわれが豊かに生きながら、従軍慰安婦だけに気を使うとこれから誰が銃を持って祖国を護る戦争に出るだろうか。国家の倫理、国民の義理の問題だ。いや国家の存在理由に関する問題だ。
趙甲済
(2016. 1. 7)
人間であれ国であれ、優先順位が間違えば物事が駄目になる。従軍慰安婦問題で日本と数年も葛藤してきた韓国が、北韓政権に対しては国軍捕虜の送還問題を一度も公式提議したことがない。だから対北政策がうまく進むはずがないのだ。政府は従軍慰安婦問題が国軍捕虜問題よりもっと重要だと判断した模様だ。果たしてそうだろうか。
1.国軍捕虜の送還問題は人命がかかった問題だ。従軍慰安婦問題は名誉の問題だった。どちらがもっと急を要するのか。従軍慰安婦の苦痛は過去のことで、国軍捕虜は現在進行形だ。どちらがもっと急を要する問題か。
2.北韓政権が不法抑留した国軍捕虜は約6万人、少なくとも数千人が生きている。従軍慰安婦の生存者より多い。規模において比較できない。
3.韓国は北韓に帰還を望む北韓軍捕虜は全員送還した。北側は南へ送還しなかった。戦争犯罪で国際法違反だ。不法性が明確だ。
4.韓国は従軍慰安婦問題の解決なしには日本との関係正常化ができないと強硬な態度を見せた。歴代の韓国政府は100億ドル以上の対北支援をしながら、一度も韓国軍捕虜の送還を条件として要求したことがない。国軍捕虜を従軍慰安婦よりも冷遇したのだ。
5.従軍慰安婦問題は国家が存在しなかったとき起こった問題で、国軍捕虜問題は国家があり、その国家が彼らの犠牲の上で途方もなく発展して捕虜問題を解決できる國力を持ったにも拘らず、自尊心と勇気が足りないため放置されている。どちらがもっと急を要する問題か。
6.北韓政権が6万人の国軍捕虜を抑留した理由は、李承晩政府が韓米相互防衛条約締結を圧迫するため反共捕虜を釈放したことに対する報復だった。つまり、6万人は祖国の自由と繁栄を保障している韓米同盟のために犠牲になった人々だ。彼らの犠牲でわれわれが豊かに生きながら、従軍慰安婦だけに気を使うとこれから誰が銃を持って祖国を護る戦争に出るだろうか。国家の倫理、国民の義理の問題だ。いや国家の存在理由に関する問題だ。
12月11日の午前、開城工団で開かれた南北当局会談のとき、北側は祖国平和統一委員会の書記局副局長として知られている田鍾秀が首席代表(団長)として出た。韓国政府の課長級だろうか。ところが、この者を相手にした韓国側の首席代表は黄富起統一部次官だった。まったく格が合わない。大韓民国を反国家団体である北韓政権よりも数段も格下げした格好だ。
朝鮮日報は決裂したこの会談で、北側はお金にばかり執着したと報道した。
<北韓側は朴槿惠政権になってから事実上初めてと言える今回の会談で、執拗なほど金剛山観光にこだわった。結局、“現金を出せ”ということだった。12月13日、統一部当局者によると、1泊2日の間に5回の首席代表接触で、北側は終始‛南北は金剛山観光を再開することにした'という文句を合意文に入れることを要求した。わが方が離散家族問題の解決、環境•民生•文化などの3大通路の開設など、他の懸案も扱うことを求めたが、北側は“金剛山観光の再開が優先”という立場を繰り返した。>
これを逆利用する方法がある。
“よし、金剛山観光を再開しよう。ただし、条件がある。北側が抑留してきた国軍捕虜の生存者全員とその家族、そして拉北者全員とその家族を返せ。”
韓国の国防部と統一部は、今まで国軍捕虜の送還を要求することを罪でも犯すかのように行動してきた。友邦である日本に対する態度と敵である北韓政権に対する態度がなぜここまで違うのか。大韓民国政府が金剛山観光と国軍捕虜および拉北者全員の送還を交換しようと提案すれば、国際社会がはじめて関心を持つようになり、金正恩は頭を抱えるようになる。韓国は久しぶりに南北会談で主導権を握るようになる。
従軍慰安婦問題には敏感で、国軍捕虜問題には鈍感な韓国政府を、国際社会は不思議な基準を持つ団体と見るかも知れない。同族が犯した戦争犯罪だからと覆って、外国の犯罪行為だけを問題にするのは民族主義ではなく人種主義だ。
www.chogabje.com 2015-12-29 09:13