[寄稿]韓国は国際テロ勢力が狙う急所になるのか
李炳浩(国家情報院長)
テロが21世紀初の国際秩序を支配している。最近、その勢いが野火のように全世界に拡散している。ロシア旅客機に対するテロに続いてパリでのテロ、米LAでの銃撃テロまで、ここ2ヶ月間10件以上の衝撃的なテロ事件が起きた。米CIAは、これまでは欧州と中東地域でテロ事件が集中しているが、イスラム過激派武装組織のイスラム国家(IS)がアジア地域へ勢力を拡大中と分析する。ISはテロ対象国に韓国を入れている。国際テロの拡散趨勢に韓国も決して例外ではないことを警告したのだ。
国際テロの防止には国家間の共助が必須だ。全地球を舞台に隠密かつ緻密に展開されるテロ陰謀を捕捉することは、一国の能力では力不足だ。すべての国の情報機関が力を合わせても成功が確信できないのがテロ防止だ。そのため、個別国家のテロ防止法は国内的次元を超えた国際的次元の法的装置と認識されている。国際社会がわが国のテロ防止法の制定動向に対して関心を持って見守る理由だ。残念ながら、わが国のテロ防止法は今国会の会期でも制定に失敗した。緻密な国際共助のテロ防止ネットワークでわが国が最も弱い輪と認識される可能性が大きくなったのだ。ISがその弱い輪に誘惑を感じるようになるかと心配だ。
テロは1〜2人のごく少数の人員と火炎瓶などどこにでもある手段だけでも大きな災殃をもたらし得る。それで事前摘発と予防が核心だ。そのためにはあらゆる情報収集技術が総動員されねばならない。
国際テロ組織の脅威に加えて北韓発のテロは依然としてわれわれを脅かしている。最近、北韓は偵察総局の第5局にテロと暗殺を専門とする特殊工作課を新設した。去る6月、金正恩は偵察総局を訪問してこう指示した。“偵察働き手は自爆精神、自決精神を人生觀化しなければならない。死も一つの闘争武器だ。”ISの自爆テロを連想させる脅威で北韓体制のテロDNAを反映した発言だ。
‛一匹狼’型の自生テロも決して他国の話ではない。韓国社会にも社会不適応者が暴力的な極端主義に陥る蓋然性はいくらでもある。このようにわが社会が直面したテロの脅威は複合的で多層的だ。国家情報院がテロ防止法の制定を切実に望む背景だ。国家情報院が願うことは、テロの脅威から国民の生命と安全を護れる情報手段の法的保障だ。地位を強化するとは権限拡大には一切関心がない。法の悪用可能性を提起する主張も一部にあるがこれは杞憂だ。私は院長として毎日接する国家情報院職員たちの透徹した愛国心と徹底した職業倫理に対して自信を持って言える。
今の国家情報院は以前の国家情報院でない。昨年、国家情報院改革法案ができて国家情報院の政治介入が根絶され、国会の統制権は強化され、権限の濫用に対しても厳格な規制装置ができている。テロ防止法が制定されれば国情院は国家安保のための本来の仕事ができ、国民の生命と安全を護る責任と義務はむしろ重くなる。
政治的論争のためテロ予防のための基本的な制度も整備できなかったら、その被害はそっくりそのまま国民にもたらされる。国民の安全問題に与野党の差があり得ない。国会が一日も早くテロ防止法を通過させてくれることを切に願う。
*本記事は朝鮮日報への寄稿です。www.chosun.com 2015.12.09 03:00