TPP締結の軍事戦略的含意
李春根
2015年10月5日、環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)が電撃的に妥結され、その協定文が11月5日、ニュージーランド政府によって公開された。TPPは多国間協定であるにもかかわらず、一般的な二国間FTAに比べて市場開放度が格段に高いことが明らかになり、これに加入していない韓国に衝撃を与えている。TPPは米国・日本など12カ国が参加した史上最大規模の自由貿易協定(FTA)で今後、国際通商秩序を主導する世界最大の経済ブロックだ。
2010年、オバマ政府がTPPを強力に推進し始めるとき、われわれ韓国は消極的だった。‛中国の顔色を窺うため’TPPに参加しなかったのだ。政府の内でも“中国の顔色を窺ったためときを逃した”“韓米自由貿易協定(FTA)で困った経験があったため、米国が求めることをまたやることが怖くて逃げ腰になった”という自省が聞こえるという。ようやくTPPへ加入を推進し始めたが、原加盟国12カ国の許可を受けなければならないという容易でない状況だ。
韓国がTPPに積極的になれなかった理由が‛政治的’なことだったように、TPPの設立はその政治的、戦略的な側面が経済的側面よりももっと重要だ。まず、米国がTPP設立に積極的だったのは、米国の覇権維持戦略と直結されている。
米国は自国の覇権への中国の挑戦に本格的に対応し始め2011年以来、‛アジアへの回帰'(Pivot to Asia)、あるいは‛アジアの再均衡'(Re-balancing Asia)戦略という軍事・政治戦略を展開した。覇権競争は軍事政治の分野にだけ限定されては効果的であり得ない。経済的な手段が同時に動員されねばならないが、今回のTPPは米国が中国を牽制するための覇権競争の経済的な方便だ。
韓国のマスコミはおとなしい翻訳で紹介したが、オバマ大統領はTPPが成功裏に締結された直後、“われわれは中国なんかの国が世界経済のルールを作ることを許せなかった”(We cannot let countries like China write the rules of global economy)というちょっと険悪な言葉まで用いたのだ。
米国はTPPを通じて信頼できるアジアの国々を糾合し、中国と本格経済戦争をする勢いで臨んでいる。TPPに参加したアジア加盟国の中で、特に日本とベトナムは米国の覇権戦略に決定的に重要だ。米国は、中国に進出した米国会社の製造工場らをベトナムに移すはずで、特に沈滞だった日本を経済的に、そして究極的には軍事的な面でも回復させるはずだ。経済的に強力になったベトナムと日本は、米国が中国との覇権競争を展開するとき決定的に友好的な支援勢力になるだろう。
韓国には米・中覇権競争で中国が勝利すると信じる人々が他の国よりも驚くほど多い。実際、G-2という用語は韓国の他ではあまり使われてもいない言葉だ。ところが、昨今の世界の大勢は米国が最終的な勝者になる方向に傾いている。米国は今、経済的手段だけでも中国を制圧できると感じている。
今回のAPEC首脳会談の際、オバマ米大統領はTPP参加12カ国を二回も別途に集めて会議を開いたという話が聞こえる。国際政治においては力の強くない国はどちらに付くのかが重要だ。ところが、われわれ韓国はその選択を上手くしているのだろうか。(2015.11.25)
http://blog.naver.com/choonkunlee 2015.11.28 22:51