中国の閲兵式を見て-米国の軍事力は中国より10倍も強い!
李春根
筆者は陸軍第3士官学校で教官として勤務したとき、生徒たちの閲兵と分列を本当にたくさん見た。3士生徒たちのパレードは本当に芸術と言えるほど節度があり堂々とした。当時3士官学校生徒の閲兵部隊は毎年、汝矣島広場(今は公園になったが)での国軍の日行事で1等部隊として表彰された。当時、政府に批判的だった(独裁政府という側面から)筆者をはじめとする同僚の教官たちは“列さえ整然と行進できれば戦争ができるのか”“米軍が整然と行進して世界最強なのか”と皮肉ったことが思い出される(私は今当時の稚気を恥ずかしく思う)。数十年が経過した今、わが韓国軍はその時のように毎年パレードもせず、数千、数万人が隊伍を合わせるため、数ヶ月間も汗を流し上官から厳しく叱られ気合を受けながら苦労することもない。その間に大韓民国は誰が見ても堂々とした西側陣営の民主主義国家の一員として発展したためだ。
民主主義が世界的に拡散される前の昔、オリンピックの入場式はちょうど軍隊の閲兵式のようだった。今はどの国の選手団も軍隊の行進みたいに歩かない。
中国が史上最大の閲兵式を行った。建国節の10月1日ではなく、9月3日を戦勝記念日と言い行事をしたのだ。9月3日がどのように戦勝節になったのかは説明が必要だ。日本に向けてのパレードだったが、動員された武器は米国に対するものだった。この日の閲兵式に動員された武器の84%が初公開の新武器と云々したが知る人ぞ皆知っていた武器だ。米空母を撃沈させるという東風21(DF-21)は、最初知られてから5年も経ち、中国の軍事専門家が1秒に5Kmも飛ぶと感激して言ったが、それで米国の航空母艦が全部逃げたとも言いたいのだろうか。
閲兵式参加兵力12,000人の中には将軍級も50人もいた。ある中国軍の将星は、この夏の猛暑の中で行進練習をしたためお腹まわりが12cm減ったという。いずれにせよ、中国は何かを見せようと頑張った。G2と呼ばれ、世界の指導国になりたいという国が見せたのが閲兵式と新型兵器だとは。21世紀の核心的国力は軍事力ではなく、12,000人の軍人が恰も一人が歩くように行進するため猛暑の中で死にそうに苦労することは、国民の幸福でもなく、そういう国を格好よくもしない。
たまたま、ある米国記者が定例ブリーフィング中のピータ・クック米国防部の代弁人に、われわれ(米国)は、そういうことはしないのかと尋ねた。周りの人々が笑った。クック代弁人の回答が面白い。
That's a good question。 I had not considered that。 I'd like to say it's not our style。 The US military is the world's foremost military、and people should not doubt that。 And people know the strength of the United States、the strength of our military、and I think it's safe to say that we don't need to display it at parades necessarily for people to understand what the United States is capable of。(良い質問です。われわれはそういうことをするつもりはありません。そんなことはわれわれのスタイルではありません。米軍は世界最強の軍隊で、米国国民はこれを疑う必要がありません。米国国民は米軍が世界最強であることを知っており、米国国民にそれを教えるため閲兵式のようなことをする必要はないと思います)
21世紀の戦争地政学的は‛海’に集中される。昔の世界の戦争史はヨーロッパ大陸で強大国の地上軍の衝突が主軸だった。これから大戦争が勃発するなら、それはアジアの海上で強大国の海軍が衝突する形で現われるはずだ。
残念ながら、中国の閲兵式で海軍は見られなかった。参加自体が不可能だったはずだ。海軍のない閲兵式の武力誇示は19世紀式の戦争でのみ妥当なことだ。
見なくても皆分かっていることだが、米海軍は中国海軍と比べられないほど強大だ。同じ内容だが、専門家たちによって表現方式が若干異なる。米国海軍は世界の第2位から14位までの海軍を全部合わせたほど強い(ある人は2位から17位までを合わせたほどという)。
イギリス海軍が最強のとき、英国海軍は2位と3位の海軍を合わせたほど強かった。当時2位と3位はフランスとドイツだった。今2位から14位までの海軍の中で、米国に敵対的な国は中国とロシア程度だ。イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、インド、日本海軍など、自由民主主義陣営の強力な海軍力が概ね米国の方だ。特に日本の海上自衛隊は自他が認める世界第2位の海軍だ。
陸軍と空軍までを考慮すればどうだろうか。軍事力の最終的比較は戦争をやって見て分かることだが、学者たちは、いろんな体系的な方法を通じて軍事力を評価できる技法を編み出した。専門家たちは、今の米国と中国の軍事力は、米国の同盟国の軍事力を考慮しなくても約10:1、米国が優位にあるものと評価する。(James Steinberg and Michael O'Hanlon、Strategic Reassurance and Resolve:US-China Relations in the 21st Century Princeton大学出版、2014年版のpp.93、284を参照)
米国だけでも10:1の優位なのに、中国の周辺のほぼすべての国が米国と安保同盟を結んでいる。それで米国はゆとりがあるのだ。
このごろ経済がますます良くなっている米国は、経済が揺らいでいる中国をG2として待遇しない傾向さえ見せ、国際問題に積極介入せず、孤立主義に進む傾向も見られる。米国と上手く付き合うことが本当に重要な時代だ。(2015年9月4日、李春根)
*中国の東風ミサイルが米空母を撃沈可能云々する韓国の新聞記事を見ると呆れる。5年前(2010年8月15日)に書いた文(米空母は無敵艦隊)を再録する。
[米空母は無敵艦隊]
北側の卑怯な攻撃によって天安艦が撃沈された後、韓半島周辺の海の波が高くなりつつある。大韓民国と米国は、北側がこれ以上挑発すれば直ちに膺懲するという意味で、7月25日から29日まで東海で韓米連合訓練を実施し、9月以降は韓・米海軍が西海でも合同訓練をすると発表した。韓国軍は8月初め、黄海で北側の潜水艦攻撃に対応する訓練を単独で実施した。北側は黄海で韓国海軍の訓練が終わった日の8月9日の夜、NLLに向かって海岸砲130発を発砲し、この一部はNLLの南海上に落ちた。米国務省広報担当次官補のクローリーは、北側の海岸砲射撃の意味を一蹴し、“それ(海岸砲発射)で多くの魚が死ぬ結果が出たはずだ”とジョークを飛ばした。
北側のこのような挑発は逆にもっと多くの韓・米訓練をもたらし、国際的に恥を掻きながら北韓を庇護する中国をもっと怒らせる。すでに見た通り、北側を膺懲するための韓米訓練に対してもっと激しく反発するのは北韓ではなく中国だ。中国は最近、海軍訓練を断行し、韓米海軍が今後西海で訓練すれば自分たちも対抗訓練を敢行すると表明した。
中国が特に神経を尖らせるのは米空母の動きだ。中国は米空母を攻撃できる新しいミサイルを開発したとメディアを通じて公開した。中国が本当に米空母を攻撃、撃沈させられるミサイルを開発したら、これを密かに隠すべきで、写真まで公開するのはどうもおかしい。空母に関する戦略的理解が足りない韓国のマスコミは、恰も米国の航空母艦がもはや安全に中国海域に接近できなくなったかのように特筆大書して報道する。このエッセイは航空母艦に関することだ。
空母はすでに第2次世界大戦から本格的に使用された武器で、特に米国の力の投射(Power Projection)能力を象徴する古い兵器体系だ。直接戦争を遂行するよりは敵国の海岸に姿を見せることで実力を誇示(Demonstration of Power)し、それで相手国の行動に変化を起こすことが主な任務だ。つまり、空母は古典的な砲艦外交(Gunboat Diplomacy)の先鋒の役割を担う武器なのだ。軍艦の掩護を受ける国の外交官たちが外交談判で有利な位置に立てることは当たり前のことだ。
主な任務が外交的なものであるにもかかわらず、空母はそれ自体が強大な軍事力だ。退役したキティホーク空母に継いでアジアの海を作戦区域とするジョージ・ワシントン級の空母は核推進で動くため作戦半径が無限大だ。1つの空母戦団は核武装の戦闘および爆撃機を最大85-90機搭載できるため、米国の空母1隻威力は世界10位くらいの国の全軍事力に匹敵すると言っても過言ではない。
もちろん、最近のミサイル技術の発達、潜水艦能力の発達のため果たして空母が兵器体系としてどれほど有用かの議論があるのはある。中国の官営媒体が「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル(ASBM)「東風21D」の発射実験を行うと正式に発表した。東風21Dは最大450㎏の弾頭6個が装着できる中距離弾道ミサイルで、射程が1300〜1800㎞という。
では、米空母はこれから中国のミサイルが怖くて中国の沿岸に接近できなくなるのか。全然そうでない。魚雷が発明されたとき戦艦の時代は終わったと言われ、潜水艦が発明された時も空母の時代はもはや終わったと言われ、大戦車ミサイルが開発されたとき戦車の時代は終わったと言われ、地対空ミサイルが発明されたとき戦闘機の時代は終わったと言われた。だが、まだ戦車、戦闘機、空母は依然と存在している。東風21Dのような対艦弾道ミサイルの発展は、航空母艦が防御すべき武器の種類がもう一つ追加されたに過ぎない。
米国の空母は単独で動かない。米空母戦団のイージス艦、潜水艦、駆逐艦などは、その一次目的が空母を保護することだ。海は広く空母は小さい。空から見ると空母は手のひらよりも小さく見える。中国の東風21Dミサイルが米国の航空母艦を目指して飛行する12-15分の間(1500Km基準)、米国の衛星は中国ミサイルの軌跡を計算し直ちに空母に知らせ、空母はどちらの方向にでも最小6-8マイル(9.6Km -12.8
Km)移動することができる。
そのため、中国が米空母を撃沈するためには、一度に多数のミサイルを発射せねばならず、特に一発で米空母を撃沈させるためには、核弾頭を使用せねばならないという問題がある。米空母は、現在の技術で自分に向かって飛んでくる東風21D級のミサイルを最少90%の命中率で破壊できる。平時に接近中の米国の空母を中国が撃沈させることは、米国との戦争を覚悟しない限り想像もできないことだ。戦争が本当に勃発して米空母が中国沿岸に接近する必要があれば、米国は東風21Dミサイルの基地を事前に完全に破壊するはずだ。
米国最高の軍事戦略理論家であるエドワード・ラトワク(Edward N. Luttwak)博士は、航空母艦反対論者の一人だ。ところが、彼は“航空母艦は理論上、誰も撃沈させることができない”と言う。空母は決して撃沈されないと言うラトワク博士が空母に反対する理由は、空母戦力の半分程度が空母自身を保護する軍事力で、それため空母は撃沈不可能軍艦ではあるが、空母搭載飛行機の半分程度が攻撃のための軍事力であるため、空母搭載攻撃用戦闘機の1機当たりの所要費用は、陸上から出撃する空軍の戦闘機や爆撃機に比べてあまりにも高いということだ。
いずれにせよ、中国を狼狽させた米空母ジョージ・ワシントンは、東海での訓練を終えて悠々と中国近海を航行して8月8日現在、ベトナムのダナン港に停泊している。中国はベトナムに“今後、後悔することになる”と暴言したが、ベトナムが米空母を受け入れる原因提供者は中国だった。“黄海には公海がない”(つまり黄海はすべて中国の領海)と公言した中国は長い間、南シナ海全体が中国の海だと主張してきた。では、米空母ジョージ・ワシントンは、「中国の海」を横切ってベトナムのダナン港まで航行したことになる。(2010年8月15日)
http://blog.naver.com/choonkunlee/ 2015.09.04 17:49