朴大統領の光復節慶祝辞に対する後からの校正
語彙力、文法、憲法精神、事実関係において問題がある。
趙甲済
1.大統領が解放70周年慶祝辞を行う機会を持つことは光栄でかつ幸運だ。歴史的な日にふさわしい歴史的演説を通じて自分の國政哲学と方向、そして一つの時代の意味が整理できる。特に自由統一への道で里程標を確実にし、安倍日本首相の談話に対応するより高い水準の演説ができたはずだ。
朴槿惠大統領の8月15日慶祝辞は歴史性が欠如した、一日用だった気がする。半月が経った今、その話が発した波及力は全く感じられないためだ。彼は残りの任期中このように重要な歴史的契機を持てないはずだ。もったいない。
大統領の演説文は執権勢力の知的レベル、そしてその国の精神の深さを象徴的に表わす。チャーチル、ドゴール、ルーズベルト、そして李承晩と朴正熙の歴史を動かした演説がそういう例だ。
2.朴大統領の演説は語彙力と正確さから問題がある。
“70年前の今日、わが民族は独立への熱望と献身的な闘争を通じてついに祖国の光復を成し遂げました。”
解放までに韓民族の独立闘争の持つ意味は少なくないが、米国を主軸とする連合軍が日本に勝ったことが決定的だった。この主な部分を省略し専らわれわれの努力で解放されたという式の演説は、若い世代に誤った、自己中心的、井の中の蛙式の歴史観を植え兼ねない。特に解放と建國と韓國戦争のとき米国が担った肯定的役割を努めて消そうとする、左派の現代史歪曲を正すどころか利用され得る。
3.“分断の悲劇と6.25戦争の惨禍はわれわれの生の基盤を根こそぎ奪い、わずかの産業基盤まですべて崩壊されてしまいました。”
‛6.25戦争’では十分でない。‛6.25南侵戦争’と明確に言わねばならない。学生たちが6.25戦争を南侵か北侵なのかを知らないと嘆くべきでない。大統領から6.25戦争の責任を明確にしなければならない。大統領は最も重要な歴史教師だ。
4.解放70周年と建國67周年を記念する演説をしながら、解放者の米国と建國大統領・李承晩に触れないのはつれない気がする。そうしながら、朴正煕大統領の産業化への努力は具体的に説明した。
“資本も、技術も、経験もありませんでしたが、荒涼とした砂浜に製鉄所と造船所を建設し、厳しい難関を乗り越えて国土の大動脈である京釜高速道路を建設しました。そして今や、世界最高水準の電子製品と自動車、鉄鋼、造船、石油化学製品を生産する国になり、輸出規模で世界第6位の経済強国になりました。”
朴正熙の経済開発は李承晩が敷いた土台と軌道がなかったら不可能だった。李承晩の農地改革、教育の拡充、韓米同盟などにも触れてこそ公正と言える。
5.朴大統領は創造経済と文化隆盛を国家目標であるかのように長く言及した。概念が大き過ぎ、当為論に具体性が欠けたため空虚にまで感じられた。文化の隆盛は数百年、数千年かかる課題であって、任期を2年半残している政府が取り組むには大きすぎる。
6.“今オープンをして、文化人たちの入居を待っている文化創造融合ベルト通じて”と言ったが、‛オープンをして’は、‛扉を開いて’に変えねばならない。外来語を無条件に避ける必要はないが、もっと適切な韓国語があるにも拘わらず使う外来語は不自然だ。
7.“政府はわが国民の安危を脅かす北韓のいかなる挑発にも断固として対応します。”
安危は漢字語で安全と脅威の略語だ。演説通りなら‛国民の安全と脅威を脅かす’という意味になってしまう。‛国民の安全を脅かす’として直さなければならない。ハングル專用が韓国人の語彙力を落とした事例を見るようだ。
朴槿恵大統領は2012年、セヌリ党の大統領候補受諾演説のときも安危という単語の使用を間違った。
“私、朴槿恵、われわれの主権を毀損しわれわれの安危を脅かすいかなる行為も容認しません。”
8.“核開発を続けサイバー攻撃を敢行して、われわれと国際社会の安保を脅かしています。”
‛敢行'は勇敢に良い仕事を行うという意味だ。サイバー攻撃のような悪い真似は‛恣行’と書くのが正しい。
9.朴大統領は、金日成が不法抑留した6万人の国軍捕虜問題は言及せずまた離散家族問題を提起した。
“離散家族問題は、いくら情勢が厳しく理念が対立しても人道的見地から南北が根本的な解決策を見出さねばなりません。離散家族たちの生死の確認がその第一歩となります。そのため、われわれは6万人の南韓内の離散家族の名簿を北側に一括して伝えます。”
今まで行われてきた離散家族の再会は問題の解決どころか‛動物園式再会ショー’の後の‛永遠の別れ’に悪化させ問題をもっと複雑にしただけだ。北韓政権は親北政権時代にそういうやり方で莫大なお金と物資をせびった。“6万人の南韓内の離散家族の名簿を北側に一括して伝えます”と言ったが、これは危険だ。越南した家族がいることを隠してきた北韓同胞もいるはずだ。この名簿を対南工作に利用していないという保証もない。
“余名が長くない国軍捕虜の生存者全員の送還を北側に要求します。この場合に限って代價を支払う意思があります”と提案したら、8.15慶祝辞は歴史的な演説になっただろう。
10.朴槿恵大統領は何回も‛自由統一’という言葉を使わず‛平和統一’とばかり言った。憲法4条は‛自由民主的基本秩序に立脚した平和的統一政策’と平和的方法による自由統一を明示している。朴大統領は、北側が使っている‛平和統一’とわれわれの‛平和統一’が違うことを明確にするため、憲法を引用して統一の目的と手段を堂々と闡明し、国民教育に貢献すべきだった。国家大事を論じるとき、大統領は憲法に基づいてこそ権威が立つ。リンカーンが言ったように、大統領は‛憲法という目’を持たなければならない。
11.“これから日本が隣国をもって開かれた心で北東アジアの平和を共有できる隊列に参加することを心から願います。”
‛日本が隣国をもって’は間違いだ。‛をもって’ではく‛隣国として’と表記するのが正しい。
12.‛安危を脅かす’、‛隣国をもって’という表現は文法に合わないため、青瓦台のホームページに載っている演説文だけでも直すべきだ。私の指摘に対して“まあ、そんな些細なことで難癖をつけるのか”という不満に思う人々もいるだろう。創造経済や文化隆盛の基盤は正確さだ。文明の核心は、科学、つまり正確さの追求だ。‛正確な文法’を軽視する人々は不良品に対しても寛容で、憲法も軽く見る可能性がある。文法が崩れれば憲法も崩れるかも知れない。
www.chogabje.com 2015-08-30 10:09