“われわれは北韓の核ミサイル能力を過小評価してきた”、元NSC室長・金正奉の衝撃的論文
趙甲済
*核弾頭の小型化とウラン弾の大量生産体制を備え、核ミサイルを実戦配置段階
*核爆弾を42〜90発保有推定
*ソ連崩壊のとき、核爆弾と核物質を密輸
*パキスタンの1998年核実験は北韓の起爆装置技術提供で成功、北のプルトニウム弾実験代行可能性
*ロシアから高強度のアルミニウムを密輸して遠心分離機を自力製作に成功
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国家情報院の室長とNSC(国家安全保障会議)の情報管理室長を務め、長い間、北韓の核とミサイル問題を担当した金正奉韓中大学教授は‛北韓の核戰力と核戰略’という論文で、北韓の核能力を韓国側が過小評価してきたとし今、北韓は核爆弾の小型化に成功し、ウラン弾の大量生産体制を完成、最小42発、最大90発の核爆弾を保有してミサイルに装着、実戦配備した段階と見るべきだと評価した。
彼は、旧ソ連が1990年代に解体されたとき、北韓が核爆弾や核物質を大量密輸し、ウラン濃縮遠心分離機を作るのに必須の高強度アルミニウムもロシアから密輸して自力生産するようになり、旧ソ連の核ミサイル技術だけでなく、中国の朝鮮族の技術者たちも北韓を手助けし、特に中国政府はミサイルに必須の慣性航法装置を北韓に提供し、中国の技術者たちが発射実験現場にもいたと主張した。
金教授は、1998年のパキスタンの核実験は北韓が起爆装置技術を提供して成功できたし、北韓のプルトニウム彈実験を代行した可能性があると指摘した。彼はまた“北韓の核ミサイルに対して先制攻撃もできず、事前捕捉も難しいため、キル・チェーンはある意味では‛国民を安心させようとする国防部の善意の嘘’であり得る”と評価した。金教授は、盧武鉉政府のとき青瓦台の統一外交安保秘書官および国家安保戦略研究所長を務めた。北韓の核ミサイル能力については、米国政府関係者たちが小型化に成功してミサイルに装着した段階であると公開的に憂慮を表明しているのに、韓国政府の立場は‛小型化が進展している’という程度だが、北韓の核とミサイル問題を長く追跡してきた金教授は、米国側の立場に近い見解を表明して波紋が予想される。
金正奉教授は5月6日午後2時、ソウルプレスセンター20階で開催される国正常化推進委員会と趙甲済ドットコムの共同主催セミナー(‛2007年の悩み’)で論文を発表する。結論部分を紹介する。
<結論:この論文は北韓の核武装力が既知のものより深刻なレベルに増強されたことを証明することに焦点を置いた。
➊北韓が1989年、5MWe原子炉から出た廃燃料棒からPu(プルトニウム)を抽出して保持し、1990年度には70回以上実施した高爆実験を通じて核起爆装置を完成した可能性が高い。このような北韓の核兵器開発には、旧ソ連の核科学技術者たちの寄与が大きく、中国の技術者の支援もあった。したがって、北韓は1990年初めにはすでにNuclear Deviceを開発して保有した可能性がある。
➋北韓が旧ソ連邦の崩壊過程で、ソ連が保有していた完成した核兵器、あるいはPuを多量密輸して保有した可能性が高い。このことは当時、北韓がロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンなどから核兵器を導入しようとしてほぼ成功段階で韓米側に摘発されて遮断された事例からその可能性を推し量ることができる。
金正日の発言と黄長燁党書記が核兵器開発を担当していた全秉浩党軍需工業秘書から聞いた内容は、‛北韓が十分な量の核兵器をすでに1990年代に保有していた’という意味だ。当時、北韓が保有できたPuの量は2-3個の核兵器を作る程度に過ぎなかったため、‛使用に十分な量の核爆弾’を保有するためには、その核兵器らが海外から持ち込まれねばならないというのが論理的な帰結だ。
それなら、北韓が旧ソ連邦の解体のとき無政府状態の状況で核兵器の管理が緩んだこの‛粗末な管理状況’を利用して核兵器またはPuの大量搬入に成功したと見なければならない。
➌パキスタンの1998年5月の核実験は、北韓の核起爆装置提供で行われたものと推定され、パキスタンは、北韓側の核起爆装置提供および労働ミサイルの完成品とミサイル生産技術を提供した対償として北韓のPu原子爆弾を代わりに実験した可能性がある。パキスタンが5月28日に3回、5月30日に3回の核実験をしたが、5月30日の3回の核実験は北韓が製作したPu核爆弾を代わりに実験した可能性がある。
➍北韓は、1999年パキスタンのカーン博士が提供した遠心分離機の設計図と実物を利用し、1990年代の後半にロシアから密輸した150tの高強度アルミニウムを活用して2002年までに遠心分離機3000基以上を作って高濃縮ウランを生産し始めた。技術的な問題はカーン博士が解決してくれたし、遠心分離機製作の最大の難題である高強度アルミニウムも確保したため遠心分離機の製作に困難はなかったものと推定される。高強度アルミニウム以外の重要部品は、日本、香港、マカオから民需用に偽装して大量に密輸入された。韓国、米国、そして後には日本も遮断に参加したが、遮断の前に多くの部品が北韓に持ち込まれた。
➎パキスタンのカーン博士は、‛1999年、北韓の核専門家が地下洞窟から取り出し見せた核弾頭3発は1時間以内に組み立てられてミサイルに装着が可能なPu原爆だった’と告白し、‛北韓の核武器製作技術はパキスタンよりはるかに進んでいた’と証言している。カーン博士は‛核起爆装置の数は64個’と起爆装置の数まで数えてみた。北韓の核兵器の小型化や軽量化の問題はすでに1999年以前に終わった問題だった。
米国の核専門家たちが‛技術的難題’を言っているが、彼らは‛旧ソ連の核兵器技術者たちの存在’を知らなかったためだ。彼らが‛旧ソ連の核兵器技術者たちの存在’を知りながらも、北韓の核兵器の小型化、軽量化の問題と大気圏再突入時の高熱から弾頭の保護問題を提起し続けるなら、旧ソ連の核兵器が立ち遅れて問題があり、旧ソ連の核兵器技術者たちはバカ’と考えているも同然だ。
➏米国のヘッカー博士一行が2010年11月、寧辺で目撃した北韓の‛遠心分離機2000個が稼動している高度に発展した工場施設’は、北韓がヘッカー博士一行に見せるため、他の(地下)核施設から移した施設であるため、北韓が稼働している遠心分離機工場の規模は測り難いほど大きい可能性がある。以上のような推論に基づいて、北韓が保有している核爆弾の量は以下のとおりだ。
現在、北韓が保有しているウラン核爆弾は最少32発から80発であり、2020年までに北韓が保有できるウラン核爆弾は、最少84発から最大210発に達する。プルトニウム弾10発を合わせると現在、北韓が保有している核爆弾は最少42発から最大90発で、2020年までに北韓が保有可能な核弾頭数は、最少94発から最大220発に達する。ところで、北韓が5MWeの原子炉を稼動し続けており、100MWe軽水炉も稼動が間近であるためプルトニウム原爆の数も増えるだろう。
さらに、北韓が1990年代初め旧ソ連の崩壊過程で密搬入した完成された核弾頭と密輸に成功したプルトニウムで作ったプルトニウム弾の数は知らないが、われわれはカーン博士が目撃した3発の完成された核弾頭の存在は否定できない。
次は北韓のミサイル能力だ。
北韓のノドンミサイルと中距離ミサイルであるムスダンミサイル、そして大陸間弾道弾であるKN-8とテポドン2号などは、わが韓国の安全保障とは直接関係がない。われわれにはスカッドミサイルが直接的脅威になる。北韓は移動式ミサイル発射台であるTELを100〜200機程度運用している。われわれがいくら‛キル・チェーン’とKAMDを完成したとしても、北韓が移動式発射台で核ミサイルを発射することをすべて事前に捕捉することは不可能に近い。北韓の核ミサイルが捕捉されるのは発射後高度が数km程度上昇せねばならない。
北韓の核ミサイルに対して先制攻撃もできず、事前捕捉も難しいため、キル・チェーンはある意味では‛国民を安心させようとする国防部の善意の嘘’であり得る。ただし、キル・チェーンが完全に無用の長物ではない。第一発を発射した移動式発射台を韓米軍の弾道ミサイルと巡航ミサイルや空軍の空對地ミサイルで除去することで追加発射を阻止するには有用だ。北韓が移動式発射台から一発を発射後、次の発射までは30分から1時間がかかるため、われわれのミサイルで破壊が可能だ。
次はKAMDだ。国軍が保有しているPAC-Ⅱでは北韓の核ミサイルの迎撃がほとんど不可能に近い。来年までに導入するというPAC-Ⅲも終末段階で与えられる1〜2秒程度の時間で迎撃する機会がある。迎撃成功の確率も高くない。これらにわが国民の生命と国家の存立が任せられるのか。
では、THAADを導入しようとする米国に対して反対する理由はない。THAADは在韓米軍の生存のためにも必須の手段であるからだ。韓米両国はTHAAD配置によって多層防御網を構築して生存確率を高めなければならない。
われわれは、米国が拡張された抑止力とTHAAD配置を通じて韓国を防衛するようにすることで、独自のKAMDを完成する時間を確保せねばならない。THAADの値段が安かったら、われわれも数個砲隊を購入して配置し、同時に独自の中距離迎撃ミサイルと長距離迎撃ミサイルを開発してKAMDも完成できればどれほど良いだろうか。
だが、われわれは1砲隊に2兆ウォンもするTHAADを数個砲隊も韓国に配置するお金がない。そして、1個砲隊に48発だけなので、北韓のミサイルを第1発で迎撃できれば良いが、第1発を外せば2-3発を発射せねばならない。では、北韓のミサイル1000発を迎撃するためにはTHAAD砲隊がいくつか必要か。したがって、われわれはTHAADの購入にお金を払えば、財政余力がなくなるため韓国独自の迎撃ミサイル開発は事実上不可能になる。結論として‛米国の力を借りて北韓の核ミサイルを防御し、われわれの力で迎撃できるときを待つ’がわれわれの戦略とならねばならない。”
金教授は別途のインタビューで、“内外では、北韓の2006年の最初の核実験が1kt(TNT 1000tの爆発力)の爆発力を見せたことに対して、完璧な爆発ではなかったと低く評価してきたが、当初から小型化実験を行ったことを誤解したためだ”という意見を示した。
一方、李明博政権の安保部門の核心ポストにいた2人の人士は、金教授の評価について食い違う見解を示した。A氏は、‛北韓がすでに核の小型化に成功しミサイルの実戦配備を終えた状態だ’と言い、B氏は、‛韓国と米国は自信が持てる情報がない’、‛小型化の進展段階ではないだろうか’と言った。彼は‛ウラン濃縮施設の効率性、つまり稼働率が重要だが、関連情報がない状態だ’と述べた。
www.chogabje.com 2015-05-04 11:15