韓日関係の国際政治学
李春根
新興強大国の急激な浮上はいつも国際政治に大激変をもたらした。新興大国は自分に不利な国際構造を根本的に変更しようとし、既往の強大国は自国の覇権的地位を持続させるため努力した。そのたびに世界的規模の大戦争が勃発した。
誰が世界を支配するかの問題で強大国たちが行う大戦争は、覇権戦争(Hegemonic War)、あるいは地球的戦争(Global War)と言われた。ナポレオンのフランス、ヴィルヘルムのドイツ、ヒトラーのドイツ、ソ連などが覇権への挑戦国で、英国や米国は覇権を護る国だった。ナポレオン戦争、2度の世界大戦、40年以上行った熾烈な米ソ冷戦などが覇権戦争の事例だ。
中国の急浮上
ソ連崩壊後10年余りの間、米国は覇権を楽しんだ。だが、中国の浮上は、米国が中国を牽制せざるを得ない新しい覇権競争の相手として認識するようにした。米・ソの覇権対決を冷戦(Cold War)と呼んだことに因んで米国と中国の覇権競争を冷え冷えとした戦争(Cool War)と呼ぶ学者まで現れた。
以前、和平崛起や韜光養晦などの修辞で自らの浮上を隠してきた中国は、習近平体制発足後、中国がG2の一員であると標榜して米国との対決を公式化した。中国は力がもっと強くなればアジアではもちろん、世界的な次元でも優越な地位を占めるため努力するはずだ。
もちろん、米国は自分の覇権的地位を易々と明け渡すまい。米国と中国がそう行動することは長年続いてきた強大国の行動原則に全く反することではない。
強大国たちの競争は、周辺の国々の国家安保と対外戦略に深刻な影響を及ぼす。特に、韓国のように地政学的に重要な位置にいる国は、強大国たちが戦うたびに戦争の渦に巻き込まれた。彼ら大国は、韓国の地と海で戦った。他国が戦う戦争であっても、その渦に巻き込まれないためにはわれわれ自身の力が必要だ。
弱い国々の対外政策は大きく見て2つの中で1つであるしかない。強力な近国に対抗して自尊と独立を護る方法と屈従や便乗する方法だ。前者は学術的用語で均衡(Balancing)というが、危険ではあっても独立と自尊を保障する。
後者の方法は便乗(Bandwagoning)と言って容易な道だが独立と自尊が毀損される。ただし生き残るのは保障される。朝鮮王朝が長い間、中国に対してとってきた道が生き残る代わりに中国に主権と自尊心を一部譲歩せねばならない便乗の戦略だった。
一方、韓国は冷戦時代に軍事力を建設して積極的に米国と同盟して隣の共産主義大国たちに対抗するBalancing戦略をとった。冷戦体制の下の大韓民国は最も積極的に自由陣営(米国陣営)のために戦った戰士だった。韓国は冷戦の最前線で北韓はもちろん、中国、ソ連に立ち向かって戦いベトナム戦争にも5万人の大兵力を派遣して米国の戦争遂行を積極的に助けた。
米国はそのように戦う韓国を有りたがり韓国に‛経済発展’という反対給付を提供した。実際に、冷戦のとき米国は韓国に対して自由主義経済原則を厳格に適用しなかった。冷戦の最前線で苦しい戦いをやっていた韓国に対する目に見えない配慮だった。これは韓国が経済奇跡を成し遂げられた強力な背景だった。
東西冷戦が終息した後、韓国は東西冷戦時代の厳しかった任務から解放された。東西冷戦後、米国からは安保利益を享受する一方、中国からは経済的利益を追求することができた。ソ連ともうまく付き合い、北韓とも円満な関係が維持できる余裕が持てた。ところが、もう余裕のある時代が早く終息しつつあるようだ。中国の急浮上によってもたらされた国際環境のためだ。
二股を掛けることは不可能
韓国が中国とは経済、米国とは安保という二股をかけることがますます難しい状況になっているということだ。米国と中国はすでに韓国に対して自国の立場を支援するよう要求している。米国は韓米同盟の一層の強化を要求し、中国は韓国が米国と距離を置くことを望む。
韓国が曖昧な状況の中で躊躇している間、日本は素早く米国との同盟強化を通じて北東アジアの変化した葛藤構造に対処し始めた。麻生太郎副総理は“日本は過去1500年間、中国と良好に過ごしたことがない”と公言、中国に立ち向かえる本当の同盟は日本だけである事実を米国に周知させようとした。
これまで日本を‛北東アジア安保の礎石(Corner Stone)’と言ってきた米国は、中国との対決において韓国がどれほど重要な戦略的価値を持っているかを‛韓国は北東アジア安保のリンチピン(Linchpin)’という言葉で劇的に表現した。
米国が韓国をリンチピンと表現したことについて日本の識者たちは驚いた。韓国の成長と日本の没落を象徴する言葉としても認識した。米国はすでにいろんな経路を通じて韓国と日本が仲良くしてこそ中国の浮上に効率的に対処できると強調した。
ところが、韓国国民と政治家たちの情緖的な国際政治観は、日本との友好関係をほとんど不可能なことにしている。韓国がいつ日本と友好的な国になれるかを論ずるのは難しい。韓国人は米国から核爆弾の洗礼まで受けた日本が、そして日本人とあの残忍な戦争をした米国が、今日のようにうまくやっているのがどうして可能なのかを理解し難い。
国家利益と戦略は、過去の敵も良い友になれるようにし、旧友も一夜で敵にすることができる。もう、われわれも感想主義を捨てて国家利益と戦略の原則に忠実せねばならない。日本と敵対関係を持続する場合、韓国は戦略的破綻状態に置かれる可能性もあるからの話だ。
われわれは近年、中国とは非常に友好的関係にあると錯覚しているが、中国も日本に劣らずわが国を苦しめた国だ。壬辰倭乱(文禄・慶長の役)と庚戌国恥(⋆韓日併合)、挺身隊は凄絶に記憶しながら、丙子胡乱、三田渡の屈辱、中国に捕虜になってから帰ってきた還鄕女たちの悲惨な歴史は記憶から消してはならない。
国家安保戦略の要諦は、潜在的な敵国を正確に把握しその国からくる恐ろしさ危険を緩和させることにある。地政学的に近くの国々の中で最も力の強い国が潜在的敵国だ。かつては日本がその国だったし、今は中国がその国だ。
特に、米・中関係が国際政治の核心となる21世紀の北東アジアの政治で韓国が中国と親しくし続け、日本とは敵対し続ける場合、韓国は究極的に米国とも敵対関係になるかも知れない。
仮に、米国が韓国と日本の中で1国を戦略的パートナーと選択せねばならない状況が来たら、米国は誰を選択するだろうか。国際政治は道徳律ではなく、国家利益が支配する領域だ。韓国の国家安保のための第1の要因はわれわれの能力を強化することであり、第2の要因は韓米同盟の強化だ。
中国に匹敵するほど強くなる日本と敵対し、米国までも潜在的な敵対勢力にするかも知れない韓・日敵対感の悪化がこれ以上放置されてはならない。
未来韓国 www.futurekorea.co.kr2015.04.08 18:03