李明博大統領に抗議する(上)

佐藤勝巳

(2012. 8.20)

 

李大統領「お前もか」

韓国の李明博大統領の竹島上陸 (8月10日)は、愚劣な政治行動の一言に尽きる。

昨年末も京都での日韓首脳会談で、慰安婦問題を持ち出し長々と演説した李大統領であるが、今回は竹島に上陸。さらに天皇陛下に訪韓を要請したのは李大統領だ。その当人が、「訪韓したいなら独立運動の犠牲者に謝罪せよ」と信じがたい発言をした。日本政府は、李大統領に謝罪を求めるべきである。

 

 いつも事なかれ主義の日本マスメディアも、日韓は未来志向で行く、という大統領就任当時の発言を引用、背信を糺した。また、新聞の社説は、朝日新聞から産経新聞に至るまで一斉に李大統領の言動を批判した。閣僚たちも次々と李明博大統領批判をくりかえした。こういうことが起きると、今までは決まって、「冷静に」「感情的になるな」という「良識派」の声が聞かれたが、今度はそれも聞こえて来なかったところをみると、今までと違って日本の対韓認識は明らかに「嫌韓」に変化したといってよい。

 

 2010年9月7日の尖閣諸島問題で、平和ボケしていた日本人が、初めて中国が日本とは違う「野蛮」な国であることに気がつき出した。同月26日ロシアメドベージェフ大統領が中国を訪問、胡錦濤国家主席と「国家主権や領土保全」は「核心的利益」であるから「支持しあう」と共同声明で表明した。メドベージェフ大統領は、同年11月、北方領土を訪問したのである。これは日本侵略の中・ロの共同行動であることはだれの目にも明らかであろう。

 

 なぜこの時期に中・ロが上記行動を起こしたのか。民主党鳩山由紀夫内閣の沖縄県の普天間米軍基地移設をめぐり、日米同盟に大きな亀裂が生じた時と重なっている。李明博大統領の今回の竹島上陸は、中・ロと示し合わせて行動したものではないようだが、大統領の竹島上陸という挑発行動が、北と中国、ロシア利して、日米と敵対する、言葉を変えていうなら、大統領の私利のため大韓民国の国益を損なう行動であることが満天下に明らかになった。

 

 李大統領の行動で、竹島が日本の領土であり、韓国に占拠されていることを初めて知った日本国民が多かったはずだ。加えて、前述のように非常識な天皇に謝罪を求めたことで、日本国民に強い反発が巻き起こった。このたび「冷静に」という「良識派」の声が聞かれなかったのは、日本社会の韓国認識に重大な変化が生じつつある現れと見れる。

 

侵略は始まっている

日本の領土を占拠しても、日本は武力による奪還はおろか、経済制裁すらも科すことが出来ない。日米関係に亀裂が生じた今、日本の領土を乗っ取るチャンスだ、との共通認識が周辺国に広まっていることだ。だから、8月15日には香港の「保釣行動委員会」の「活動家」なるものが、魚釣島に強行上陸してきたのである。

 

 野田政権は、領海内で拿捕せず上陸させた。そして2日後、不法入国違反として、刑罰法令違反を問うことなく、中国人侵略者14名を国外に強制退去した。あの映像が中国国内に流されれば、彼らは英雄視され、カンパもより集まるだろう。確信犯であるから何度でも来る。英雄視されカネも集まるなら、こんなうまい商売はないからだ。逆に、威嚇射撃をされ船を撃沈されたら、あの手の「活動家」は尖閣諸島には簡単に近づけなくなる。

 

 では自民党政権なら、威嚇射撃をして侵略船を撃沈しただろうか。多分できなかったと思う。なぜなら中国との武力衝突を覚悟しなければならないからだ。その覚悟が国民と政府にないことを周辺国が見透かしている。だから一斉にわが国を侵略してきたのだ。沖縄に米軍がいるのに、日米関係が悪化したその瞬間に、中国の沖縄侵略が始まったのである。この事実は、日米同盟の重要さ、なかんずく沖縄の米軍基地がわが国の安全保障にとってどれほど重要かを中国がわれわれに教えていたのだ。辺野古への米軍基地移転を急がなければ、沖縄が侵略されることを沖縄県民はもちろん全国民が認識を共有すべきである。

自分の領土を自分で守るという意思の無い国を、同盟国といえども防衛するはずがない。国際情勢は甘くないことを認識すべきである。

 

 

謝罪を求める根拠は何か

 このたびの李大統領の「反日」行動は、特に目新しいものではない。朴正煕大統領を除く歴代韓国大統領は、自らの「権威」を高める手段として天皇陛下に謝罪を求めるなど、過去、色々の「反日」をやって韓国民の「支持」を得てきたことは、関係者周知の事実である。 

 

 歴代韓国大統領に共通しているのは、日本が韓半島を植民地支配したことは悪であるから「謝罪と償い」をせよ、ということである。李明博大統領にお尋ねしたい。何故に植民地支配が「謝罪と償い」の対象になるのか。その根拠を示して頂きたい。

 

 なぜこんな質問をするかと言えば、かつてアフリカは52ヵ国中50カ国が植民地であった(英国20、フランス19 )。南米では12ヵ国中、スペインが9ヵ国を植民地にした。アジアでは英国が、インドを約100年、同じくマレーシアを約40年、アメリカはフィリピンを48年、フランスはベトナムを約58年、オランダは、インドネシアを約300年間支配した。1914年時点で、植民地は全世界地表面積の84・4%を占めていたのだ。

 

中国は謝罪など口にしていない

 最近の例では、香港が99年間の英国よる植民地支配を終えて、1997年中国に返還された。マカオは1999年ポルトガルによる150年間の植民地支配を終えて、中国に返還された。中国がイギリスとポルトガルに「謝罪と償い」を要求したという話を聞かない。第2次世界大戦後、多くの植民地が独立した。しかし、かつての植民地支配した国に対して独立国が「謝罪と償い」など要求した国は、寡聞にして知らない。なぜ韓国だけが日本に「謝罪と償い」を求めることができるのか。要求するからには根拠があるはずだ。示してほしい。

更新日:2022年6月24日