党規約改正で「金王朝」確立

佐藤勝巳

(2010.10. 4)

 

 朝鮮労働党はこのたび(9月28日)の党代表者会議で、党規約の前文にあった「主体型のマルクス・レーニン主義の党」を「偉大な首領金日成同志の党」に改正した(10月2日朝鮮日報)という。

 

 引き続き「朝鮮労働党は金日成朝鮮の富強発展と人民大衆の自主偉業、社会主義偉業の遂行から不滅の偉業を成し遂げた」と書き加えられた(前出)。党機関紙労働新聞などでは金日成死亡直後から、朝鮮労働党は「金日成同志の党」という表現を使用していたが、それが党規約に記されたということである。

 

 言葉を代えて言うなら、金日成一族が権力を三代にわたって世襲したことを契機に、党規約から「マルクス・レーニン主義」が消えて「金王朝」を公然化したということだ。21世紀のこの世の中で、権力が世襲され、労働党が金日成個人のものだという前近代的、時代錯誤の政治感覚は、確かにニュースには値するが、恥ずべきものである。自由民主主義の価値観からすれば容認しがたい暴挙だ。

 

 1989年12月チャウシェスク政権が崩壊する2ヵ月前、ルーマニアでも国会のようなものが開かれ、みんなが立ち上がって「嵐のような拍手」を独裁者チャウシェスクに送っていたことを記憶している。党代表者会議でも代議員が立ち上がって、盛大な拍手を送っていたが、気のせいか、かつてのような勢いを感じなかった。

 

 北朝鮮は、約20年前のルーマニアと違って、背後には中国が控えている。しかし、国内では徐々に市場勢力が力をつけてきている。他方、オバマ政権は、中国・金正日政権に公然と抑止力行使をはじめ、黄海、東・南シナ海で尖閣諸島も含め、緊張が一挙に高まってきている。北は経済をどうするのか、何のめども立っていない。独裁者金正日の体調に異変が起きれば、混乱は避けられない。

 菅直人、李明博両政権はアメリカの軍事力に依存する、自国防衛に対する非主体的態度が鋭く問われている。待ったなしで情勢は動き出した。

更新日:2022年6月24日