この国はどうなるのか

佐藤勝巳

(2010. 7. 7)

 

 政権交代後始めての参議院選挙の投票が目前(11日)に迫ってきた。公園のベンチで隣り合わせた同世代の高齢者が「自民党が酷いので、民主党に投票したが、裏切られた」と、話しかけてきた。

 

 「自民党支持に戻りますか」と訊くと、「自民党は、腑抜けになったみたいだし……」と浮かぬ顔だ。

 

 彼のように、多くの人が自民党に見切りをつけて民主党に投票した。だが、天下をとった鳩山内閣は、有権者が呆れるほどの迷走を繰り返した挙げ句、僅か8ヵ月で政権を投げ出してしまった。次の菅直人政権に期待を托した筈であったが、菅首相は何を目的とするのか不明な消費税率引き上げ案を口にして迷走し始めている。これで一旦上がった支持率が急降下し出した。

 

 この激しくブレる「世論」というのが、実は問題なのだが、国民の間には、老朽化した自民党より民主党がもっと危ういと感じて、“この国はどうなるのか”という不安(認識)が広まっているのであろう。

 

 「自民党は老朽住宅、民主党は仮設住宅」と比喩する人もいるが、私は違うと思っている。政治の水準は所詮、国民意識の反映であって、それ以下でもそれ以上でもないからだ。第二次世界大戦後65年間、われわれは、自分の国を自分で守るという緊張と向き合うことがなかった。その中で筆者も含め国民全体が物質生活の豊かさに馴れ、緊張を恐れ、精神的に腑抜けになり、何が危機かも分からなくなっている。

 

 例えば6月28日の本ネット掲載「ガンは国を滅ぼす⑥」最終回で書いたことであるが、今われわれが使っている医療費は年間33兆4000億円を超える。この現状を改善しなければ、高齢化が進めば進むほど医療費は増え続ける。税収が飛躍的に増える見通しは望めないから、結局赤字国債(累計880兆円)でカバーする以外ない。国家財政は確実に破綻に向っている。

 

 「世界ー豊かな国」で、なぜこんなことが起きているのか。 自民党、民主党、いや全政党が、有権者に向って子ども手当だけではない、あらゆる分野で、亡国のばらまきを公約しているからだ。有権者がばらまきを政治に求め、政治がそれに応える。この癒着が抜き差しならなくなったときに、民主党が更なるばらまきを掲げて政権の座に着いて、他人のバラまきを仕分けしている。まるで劇画である。

 鳩山由紀夫前首相は辞任する直前に、「沖縄の海兵隊が抑止力になっていることを知った」と言って、世人を驚かせた。多くの国民は、それすら知らないのではないのか。知っていたら民主党政権などを実現させるはずがない。

 

 国家の安全保障も念頭になく、自分の生き方、生活習慣などを不問に付し、目先の損得で、餌が撒かれれば飛びつく。有権者と政治のさもしい癒着がこの国を駄目にしている、と私は理解している。主体的に物を考える有権者が多数を占めるのには、どうすればよいのか、課題は重い。

更新日:2022年6月24日