ガンは国を滅ぼす⑥

佐藤勝巳

(2010. 6.28)

 

抗がん剤治療で死亡

 私と同じ頃ガンの手術をした友人は、術後非常に元気だった。まもなくガンが転移していることが判明したので、私の体験を告げ、「自律神経免疫療法」を薦めた。しかし、友人が選んだのは抗がん剤を体内に埋めこむ現代医学の治療であった。友人はこの春他界した。

 

 現代医学を選んだ友人が、こんなにもあっけなく「なぜ」他界したのかをずっと考え続けてきた私は、日本国民の間に現代医学に対する「信仰」に近いものが存在しているのではないか、とこの頃考えるようになった。

 

 現代医学は、肺炎、淋菌など細菌疾患に効果の高いペニシリンや、結核治療に革命的成果を発揮したストマイなど抗生物質の出現によって、多くの命を救った。その他医療機器にハイテク技術が導入され、検査や手術は飛躍的な発展を遂げ、まさに人類に劇的な変革をもたらした。

 

ガン患者拡大はなぜ止まらないのか

 しかし現代医学は、ガンに対して手術でしか対応できないでいる。しかも術後5年以内での生存率5割(連載①で触れた済陽高穂医師の追跡調査。厚生労働省にこの種の資料はない)の成績しか残せないでいる。加えてなぜガンになるのか原因も分かっていない。右肩上がりに増えるガン医療費は、いまや確実に国家財政を脅かしている。

 

 今回の参議院選挙では、国家収入を増やすため、消費税の値上げを含め税金を誰から徴収するかが問題になっている。だが菅直人内閣は、33兆4000億円という巨額で、しかも年々1兆円程度増加する可能性のある医療費問題をどうするのか、何も触れていない。

 

 この態度は私には理解しがたいものと映っている。そこで、医療問題に関心が強いという報道もある仙石由人官房長官に陳情書を書くことにした。仙石官房長官と私は、1970年代始め、ある裁判で数年間一緒に仕事をしたことがある。仙石氏も2002年国立がんセンターで胃ガンの手術を受けていることを雑誌で知った。いわば同病のよしみでもある。

 

陳情書

 国会に超党派の「高齢者医療問題特別委員会」を設置していただきたい。

 目的は、高齢者の医療費の中身を検証し、妥当な医療が行なわれていたのかどうかあわせて、検証していただきたい。その結論に対して対策を立てていただきたい。                               以上

 

佐藤勝巳

 

 

現代医学の抜本的検証を

 私の提案する「高齢者医療問題特別委員会」が設置されたなら、まず同委員会で抗がん剤がガンに有効かどうか検証して欲しい。その結果、抗がん剤がアメリカ国立がん研究所のように「有害」との結論に達したなら使用を即時中止しすべきである。放射線治療も検討の対象にすべきだと考えている。

 

 また、ガンの原因は何なのか、ガンは手術してもなお、再発もしくは転移が多いのはなぜなのか、なぜ再発や転移を抑止できないのか、を現代医学と異なる専門家の証言も広く求め、国会で証言してもらう必要がある。最終的にガンを撲滅するために、この際現代医学のガン治療など生活習慣病も含め、国会で徹底的にメスを入れる必要がある時期に来ていると私は考えている。

 

保険の制度的差別

 そもそも日本の医療制度は、現代医学でないと保険の適用を認めない。これは本当におかしい。東アジアには漢方という長い歴史と伝統を持つ医療があるのに、それがなぜ、医療保険から排除されるのか。漢方知識のない医師が〝処方箋〟を書けば保険適用となり、専門の漢方医が処方すると保険は適用されない。日本の医療体制が現代医学万能を前提にしているからこんな信じがたいことが医療現場で起きているのだ。

 

 現実に現代医学が万能でないからガン患者が激増し、死亡しているのではないのか。他方、免疫療法、食事療法などで好成績を挙げているのに、保険は適用されない。患者の立場からすれば、患者が医療を選択する自由を保険制度が阻害し、差別していると映っている。保険制度の差別のため助かる命も助けられないでいる。なぜこんな不公平なことが公然とまかり通っているのか。これこそ政治主導で断固として改革を実行すべきことである。                                

 

高齢者を甘やかしてはならない

 いまひとつ、生活習慣病の多発の原因は食生活と関係がある、といままで再三述べてきたが、これについても広範な専門家から意見を聴取し、妥当な結論を早急に導き出すべきである。

 

 私がこのことにこだわっているのは、前回でも触れたが、日本は国連の調査で「世界でー豊かな国」であるという(朝日新聞06年12月6日付)評価を受けているにもかかわらず、ガンをはじめとする生活習慣病が多発しているという実態があるからだ。

 食糧自給率は41%(カロリー計算)で、60%近くを輸入に依存しながら、賞味期限切れなどを理由に年間1900万トンもの食糧を捨てている(09年)日本のこの現実は、間違いなく異常だ。

 

 この数字から、体も動かさず、食べたいものを腹いっぱい食べ、飽食と怠惰な生活に浸っている国民の姿が浮かんでくる。そしてガン、メタボ、肥満、糖尿病、高血圧、心臓病、脳梗塞などになり、医療機関に足をはこぶ。すると医療機関は待ってましたとばかりに、薬を山のように与える。

 

 アメリカでの2002年の死亡第一位(30万人)は薬害による(ブルース・リプトン著西尾香苗訳『思考のすごい力』PHP研究所)ものだという。われわれの周辺でも、何種類もの薬を飲んでいる高齢者を目撃するのは珍しくない。アメリカ的現象が起きるのはそう遠くないと思われる。

 

 かくして医療費は、年間33兆4000億円が必要となり、医療赤字を国は国債(借金)で補う。この現象は国家滅亡の予兆と見るべきであろう。

 

 仙石官房長官、国会に〝委員会〟を立ち上げて欲しいというのは、こうした生活習慣を変革しない限り、他国に侵略される前にこの国は自滅してしまうと私は受け止めているからだ。わが国が元気を失っているのは、自分の健康管理ができない国民の怠惰な生活習慣に大きな原因があることは疑う余地がない。肉体的が駄目になっているから、総体として元気も気力も失っているのだ。

 

 生産活動に従事できない高齢者に何が出来るかといえば、病院の世話にならないように自己の健康を管理することだ。意識して体を動かせば、なによりも本人が爽やかに生活できる。それが医療費の削減にも繋がって、借金を次世代に残さないですむ。こうした生活態度は高齢者の最低の義務であろう。政治は、票欲しさに高齢者に迎合してはならない。政治は亡国への道とは早く決別すべきである。                                                       

(了)

更新日:2022年6月24日