ガンが国を滅ぼす⑤

佐藤勝巳

(2010. 6.24)

 

 本業の朝鮮半島情勢が目まぐるしく動き出しているため、長い間連載を中断してしまった。連載中に何人かの知人友人に「免疫療法」を薦めたが、結果として受け入れられず、2人の人が亡くなった。

 

 私の場合は、胃ガンになり2分の1を切除、術後2年間抗がん剤を服用した。まさにその期間に腸に新しいガンが出来、内視鏡で切除した。素直に抗がん剤はガンに「効果がない」のだと思ったのと同時に、現代医学に疑問を持ち、色々の関係書を読んだことは連載の冒頭で記した。

 

現代医学で、ガンの再発を防げない

 現代医学はガンの患部を切除する優れた技術を持っているが、ガンの転移や新たに発生するガンを抑える治療法を持ち合わせていない。この事実を全国の臨床医たちは知らないはずがない。にもかかわらず医師たちは、特殊例外を除き、再発防止の指導を行なっていない。  

 

 なぜなのだろう。これは医師たちの怠慢か、それとも患者減少防止策なのか。そんなことはない。現代医学はガンの再発や転移を抑止する方法を持ち合わせていないから指導のしようがないのだ。これがガン医療現場の実態であることは殆ど知られていない。その事実は本連載④の冒頭で、国立がんセンター垣添忠雄名誉総長が、奥さんをガンで亡くした話を紹介したところで触れた。

 

 垣添氏は「現代医学の壁を破るのは基礎研究です。病理、細胞、とりわけ遺伝子の研究と新薬開発には期待がかかります」と述べている。ガンは細胞が異変を起こす病気であるが、異変を起こす原因は何なのか。垣添氏の記述だと、現代医学はガンの原因が何によって起こるのか分かっていないのではないかと思われた。分かっていないから基礎研究の重要さを主張しているし、食事との関係に全く触れず、新薬開発が必要だと述べているが、薬でガンが治せるのか。解せない話である。

 如何に医療費が巨額であるか、以下の数字を見ていただきたい。

 

医療費が国家財政を破綻させる

 民主党政権の今年の国家予算総額は92兆円。収入(税収)は38兆円。後は借金である赤字国債44兆3000億円で帳尻を合わせた。借金は国家収入の倍以上。国債の発行高は累計で880兆円となっている。この国債を誰が買っているかと言えば、各金融機関が国民の預金したカネで買っている。詰めて言えば国民が買っていると言ってもよいだろう。

 子ども手当を初め、医療費や社会保障費、国防費などを政府が国民から借金(国債)をしてそれに当てているのである。3年前の2007年度の医療費は、前年度より3.1%増で過去最高の33兆4000億円。そのうち70歳以上の高齢者の医療費は14兆5000億円と全体の43.4%を占めている(朝日新聞、2008年7月17日付)。

 

 今年支払われる子ども手当の総額は2兆2500億円である。今年の防衛費の総額は4兆6000億円。3年前の医療費1年分は子ども手当の約15倍。国防費の約7倍強である。もし高齢化などにより毎年3%医療費(1兆円)が増え続けていったら、国家財政は耐えられないことは誰にでも理解できる数字である。

 

なぜ抗がん剤が使われるのか

 「生活習慣病」(食習慣、喫煙・飲食などの生活習慣が発病・進行に係わる疾患の総称。肥満、高血圧、循環器系疾患)や「成人病」(生活習慣病と重複している場合が多い)の医療費の推移など調べると色々なことが分かると思われるが、専門外のことに多くの時間を使う余裕がないからパスするが、ガンに限定して言うなら、現代医学でガン発症の原因も定かでないのに、医療現場で何故に抗がん剤が大量に使用されているのか。

 

 私は、抗がん剤(TS―1)を24ヵ月服用した。1ヵ月、1割自己負担で、月約7000円を病院に支払ったから、保険と個人負担計84万円が製薬会社と医療機関の収入になっているはずだ。結果、腸に新たにガンが出来た。患者の立場からすると84万円は詐取されただけではなく、抗がん剤によって免疫力が損傷を受けるという害を蒙った。

 

 皆さんの周辺に、末期ガン患者が医療機関から抗がん剤を勧められた経験をお持ちの人が多いと思われる。末期ガンと認定されれば、現時点で現代医学は治癒させる手段を持ち合わせていない。それなのに1、2ヵ月の延命のために、広範の医療機関で抗がん剤が、患者本人や家族の同意を得て投与されていることは広く知られた事実である。医療機関、製薬会社は収入が増すからよいであろう。しかし保険財政という観点から見ると大きな問題を孕んでいる。

 

厚生労働省、医療機関、製薬会社の談合か

 日本の国立がんセンターに相当する、アメリカ国立がん研究所(NCI)のデビタ所長は1985年米上院で「抗がん剤でがんを治せないことが理論的にはっきりした」と証言し、3年後の1988年に発表されたNCI公式レポート「がんの病因学」には「抗がん剤はがんを治せないだけではなく増がん剤である」とまで書いてある(真柄俊一著「がんを治す『仕組み』 はあなたの体のなかにある」・現代書林)と言う。

 

 NCIレポートの中身が正しいとすれば、わが国の医療機関と製薬会社は22年間「増がん済」を逆に効果があると言って患者にウソをつき免疫力を破壊し、膨大な利益を分け合ってきたことになる。その利益を担保したのが抗がん剤の保険適用を許可した厚生労働省である。これは控えめに行って〝癒着〟有り体に言うなら関係者の「犯罪」ではないのか。

 

 私がこんなことを言う根拠は、1988年の前述のアメリカの国立がん研究所の「抗がん剤は増がん剤」という発表に対して、その直後1988年に「日本癌学会では『反抗がん剤遺伝子(ADG)の問題』として、前述のNCIデビタ所長の証言を取り上げました。ところが、以後これに関することが黙殺されてしまうという理解できない現象が、日本で起こってしまいました」(前掲真柄俊一書)のだという。

 

 それから22年が経過しているにもかかわらず、日本の医学会からNCIレポートに反論がなされたという話を耳にしたことがない。反論がないまま、日本では抗がん剤が広範に医療機関で使用され続けている。

 

 アメリカでもっとも権威ある国立ガン研究所の「抗がん剤有害論」に反論もせず、抗がん剤を22年間使い続けている日本の医療・医学界が異常だと考えない方がおかしい。この問題は後で仙石由人官房長官への陳情書の中で角度を変えて再度触れるが、厚生労働省、医療機関、製薬会社3者の間に保険(税金)を食い物にする「談合」が、いや国家財政を破綻させる遠謀が存在しているのではないのかと考えざるを得ない。

 そうでないと言うなら、抗がん剤でガンが治癒することを理論と臨床で証明して欲しい。少なくとも私はガン患者の1人として国立がんセンターなどに聞く権利があると思っている。

 

 33兆4000億円。気が遠くなる巨額の医療費を国民の代表である国会は、どうする気なのか。参議院選挙も始まった。次回はそれに触れたいと思っている。(つづく)

 

更新日:2022年6月24日