中国共産党と小沢一郎の共謀

佐藤勝巳

(2009.12.18)

 

 中国国家副主席の天皇陛下との面会問題について、民主党小沢幹事長が12月13日の記者会見で羽毛田信吾宮内庁長官を「何とかという宮内庁の役人」「辞表を書いてから文句を言え」と凄い形相で罵倒するのをテレビで見ていた私は、人は怒った(切れた)ときに、本性がむき出しになるものだと思ってしまった( 12月14日付産経新聞に小沢氏の発言が収録されている)。

 それにしてもなぜ小沢氏が宮内庁長官にあんなに吠え立てるのか、前後の経緯が分からなかった。だが、憲法には天皇の「国事行為は内閣の助言と承認で行なわれるんだよ。天皇陛下の行為は、国民が選んだ内閣の助言と承認で行なわれているんだ。すべて。それが日本国の憲法の理念であり、本旨なんだ。ね」と質問した記者を、噛み付くような表情でにらみつけるのを見て、小沢氏の怒りがようやく分かってきた。

 つまり、従来の慣習など民主党政権には関係ない。中国習近平国家副主席に政府が会わせるべきだと「助言」しているのだから、宮内庁長官ごとき官僚の発言は許さない。早く、天皇に会わせるよう手配しろ、と「命令」したのである。

 だが、天皇が外国人に会うのは「国事行為」ではない。そのことを小沢氏は知らずに、凄い迫力で吠えまくった背景には、下をうつむいて「日中友好のためですから……」などと自信なさそうに、ぼそぼそ説明する鳩山首相や平野官房長官の余りのひ弱さに立腹したのではなかろうか。16日、小沢氏は政府に対して、民主党の予算編成に対する「重点要望書」を提出したのも、鳩山政権の決断力不足とリーダーシップのなさに危機感を抱いた結果であろう。それにしてもあの傲慢不遜な態度はなんだ。国民を馬鹿にしているからだ。

 戦後の「平和と民主主義」の申し子、鳩山由紀夫氏は、普天間移設問題で相変わらず「沖縄県民の意向も重く受け止め、日米合意も重く受け止める」と問題の先送りを図っている。その優柔不断さは、とても一国の政治を任せる器ではない。酷すぎる。それに対して田中角栄、金丸信直伝の小沢氏は、明らかに政治歴、感覚も体質、価値観、格も違っている。すべての面で遺伝子が違う。

 今回の天皇陛下への「面会強要事件」、そして組閣3ヶ月で[暫定税率]「子ども手当」てなど民主党の公約を幹事長が破れ、と政府に迫る。民主党は小沢氏の独裁体制下にあることを天下に知らしめた。深刻な分裂要因を抱えている。あの政治手法では誰もついていかない。 

 

 その第一は、小沢一郎氏の共産主義国家観についてである。中国は共産党が支配している一党独裁国家であり、異論を唱えるものは容赦なく弾圧する「自由と民主主義」とは相容れない存在である、と私は理解している。 小沢氏はそうは考えていないから、引き連れていった約140名の国会議員に「自由と民主主義」と絶対相容れない共産党のトップ胡錦濤氏と一人ひとり握手をさせ、写真を撮らせたのだ。 

 12月17日の産経新聞に、約600名の小沢訪中団が胡主席と共に撮った記念写真が2ページにわたって掲載されているのを見ると、民主党を親中国にするべく中国共産党と民主党小沢幹事長の一大工作であったことが理解できる。小沢氏は中国共産党にとってかけがえのない田中角栄氏並みの友好人士になったのかも知れない。しかしわが国にとっては日米同盟を破壊する危険極まりない存在に転化したのだ。

 社民党福島瑞穂氏の先輩である社会党成田知巳委員長をはじめとする歴代委員長たちも、中国、北朝鮮の権力者たちと握手し、自分が共産主義国家の指導者から如何に信任を受けているかを選挙などで吹聴してきた。小沢氏の行為はそれと寸分変らない。しかし、1996年1月、日本社会党は消滅した。

 小沢氏は一党独裁の共産主義に憧れているのであろうか。国会議員はこの国が幸せになるために法律を作ることを国民から付託された人たちだ。その民主党所属の国会議員に小沢氏は、法律(議員立法)を作ってはならない、衆議院で代表質問してはならない、と縛りをかけているというが、これこそ憲法違反に当たらないのか。小沢氏のこの政治手法は本質的には独裁者金正日に近い。ここは北京でもピョンヤンでもない、東京だ。それなのに民主党から批判の声一つ聞こえてこない。民主党はいつから腑抜けになったのか。

 

 小沢氏や鳩山氏の中国認識は間違っている。そもそも沖縄にある米軍基地は、韓国、日本、台湾を金正日政権と中国の共産主義から自由主義を守る砦であるのだ。鳩山氏の言動を見ていると、中国も北朝鮮も脅威に当たらないと考えているから、普天間の基地をグアムに移すなどいう発言になるのだ。これでは時代錯誤の社民党と同じである。

 中国や金正日政権は脅威でないという誤った認識で、小沢、鳩山、福島3氏は一致している。だから連立が組めるのだ。安全保障という側面では、8月の総選挙は親中国、反米派が勝利した選挙であった。北朝鮮政府機関誌「民主朝鮮」は鳩山政権の普天間に対する対応を称賛している。アメリカからは小沢氏の言動を指して、日本は中国の植民地になった、との声が出ているが、日本が危険水域に踏み込んだこと確かだが、植民地ではない。

 国民は大衆運動で小沢氏をターゲットにして抗議運動を組織すべきである。そうすれば独裁者小沢氏を政界から葬ることは出来る。でなければ、将来に禍根を残すことになる。

更新日:2022年6月24日