ガンは国を滅ぼす②

佐藤勝巳

(2009.12. 2)

 

現代医療をめぐるアメリカでの戦い

 本来人間に備わっている自然治癒力、免疫力を高めなければガンの再発も転移も抑止することはできないと知った私は、首都圏で免疫治療を行なっている医師がいるのかどうかをネットで検索してみた。

 その結果、針(鍼ではない)で免疫力を高め、ガン細胞を抑止する「自律神経免疫療法」を行なっている日本で唯一のクリニックが、八王子市にあることがわかった。「素問(そもん)八王子クリニック」(☎042―660―0403) という。

 電話で診察を申し込んだところ、「まず、真柄俊一院長(新潟大学医学部卒)の著書を読んでみて下さい。その結果、納得されたらご連絡下さい」と言われた。早速、真柄俊一著『がんを治す「仕組み」はあなたの体のなかにある』(現代書林2007年7月刊)を読んでみた。欧米や日本などの食生活の変化が、ガンの発生に大きく影響していることが、われわれ素人にも分かるように書かれている。

 まず私が強烈な印象を受け、教えられたのは、アメリカでのガンや糖尿病などの生活習慣病克服の闘いの歴史を記述したところであった。

 

 ガンなどの生活習慣病の急増が、アメリカの国家財政を圧迫しようとする危機に直面したニクソン大統領は、1971年12月「ガン征服国家戦略」を立てた。アポロを月に着陸させることが出来たアメリカにとって、ガンなど生活習慣病の解決ができないはずがないと考え、抗がん剤の開発に金とエネルギーをつぎ込んだ。だが、ものの見事に失敗した、という。

 

マクバガン・レポートの意味

 そこで1975年、従来のやり方に疑問を抱いたフォード大統領は2年の歳月をかけて失敗の要因を探った。その結果を「アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書」(委員長の名前をとって 「マクバガン・レポート」と呼ばれている)として1977年に発表した。「マクバガン・レポート」は5000ページに及び、多くの専門家の証言やレポートでまとめられていた。「レポート」によると、生活習慣病は、動物性蛋白質や、脂肪などを多く含む「食」に起因しているという。

 

 議会や政府が国を挙げて生活習慣病の原因を突き止め、克服に取り組んだアメリカだが、現代医学が確立したガン治療――①手術、②抗がん剤、③放射線照射の3大治療――以外の治療(代替治療)を行なう医師の免許を剥奪したこともあった。だが医師の側も訴訟で対抗し、代替治療を承認させるまで激しい闘いが医学会で繰りひろげられたという。 

 

ガンは薬で治せない

 ウィルスによるチブス・コレラなどを撲滅し、結核も抗生物質で抑止した現代医学の人類への貢献は絶大なものであったが、ガンも薬で治癒できると錯覚したがゆえに破綻していく過程も真柄先生の著書は紹介している。

 150年前にはガン、心臓病、糖尿病などの病気は地球上には非常に少なく、 現在でも発展途上国で欧米的食事を摂取していないアフリカなどでは、ガンなどの生活習慣病はきわめて少ないという記述には、自分がガン患者ということもあって、正直驚いた。

 

 久しぶりに読書で感動を覚えた私は、こんな仮説を立ててみた。産業革命によって生産力が飛躍的に高まったことで富が蓄積され、食文化を激変させた。それまでと違う食文化は、60兆個の細胞に徐々に刺激を与え、細胞のバランスを崩し現代病を誘発した(地球温暖化も本質は同じことだと思う)のではないかと。

 

科学的に立証

 一度ガンに侵され再発した私にとって、従来の現代医学では対処できないのだということが、真柄先生の著書を読んでよくわかった。長生きが幸せとは限らない。人は必ず死ぬのであり、他界するときの病名が違うだけであるから、騒ぐことはないのかも知れない。

 しかし私にはやりたいことが残っている。それに免疫療法を受けた人は、苦しまずに他人に迷惑をあまり掛けずに往生しているようなのが魅力だ。

 

 『免疫革命』の著者「安保(あぼ)理論」を臨床現場で実践している真柄先生は、上記の著書の中で「これまでの4年5ヶ月でほぼ1500名のがん患者さんを治療し、……最近特に自信を深めているのは、手術後の再発が極端に少なく押さえられていることです。私は抗がん剤や放射線治療を徹底的に止めてもらっています。そのうえで、自己免疫力を高める治療に専念すれば、再発はほとんど防げることが確かめられました」(6ページ)と記している。

 だが、本書の出版は2年半ほど前であり、現在症例は2500以上と推定される。治療だけではなく、安保理論を更に進化させ、安保徹教授から「真柄の法則」と言われたリンパ球とガン抑止の関係を突き止めた研究にも真柄先生は寄与しているのだという。

 

歴史的な書

 本書は、手術、抗がん剤、放射線治療以外を非科学的と頑なに拒否することで、助かるかもしれない患者の命を助けないでいる日本のガン治療の原状に対して、研究と実践を踏まえた患者の立場に立った勇気ある歴史的な書である。真柄先生のもとには、アメリカでもそうであったように、患者が全国から集まってくる。私は本を読み終えた4月下旬、問診ペーパーに記載し、4月末から真柄先生の治療を受け始めた。そしていま、元気に原稿を書き続けている。

 

 だが、真柄先生の書はどこにも書評されなかったと聞いて、私は言葉を失った。 患者を助ける書籍が黙殺され、医療に素人の患者が、自ら助かる道を見つけなければならない。これが今の日本のガン治療の現実なのだ。こんな馬鹿な話はない。前回も書いたが、ガンで手術した人たちの50パーセント近くが5年以内に死亡している事実を現場の医師たちが知らないはずがないのに、それを患者に手術前に告知しないことが、不思議でならない。この背後に何があるのだろうか。(続く)

更新日:2022年6月24日