米中は言葉で動かない

佐藤勝巳

(2009. 6.15)

 

 大阪大学坂元一哉教授は、米中は金正日政権に対してもっとしっかり対応をしろ、と6月13日付産経新聞1面(「北核問題 鍵握る米中の姿勢」)で注文をつけていたが、私も、似たようなことを10年ほど前から書いたり言ったりしてきた。

 しかし、坂元教授の指摘のように、昨年10月ブッシュ政権は、同盟国日本の強い要請を無視して、金正日政権に対するテロ支援国家指定を解除した。

 1994年からのジュネーブ合意の破綻、2003年からの6者協議の破綻、これらの経緯をつぶさに見てきた私は〝言葉で国際政治は動かない〟と結論している。その証拠に、金正日政権は次々と核実験をしているではないか。

 米中を動かすのは、日本の政府と国民が本気になって、北朝鮮流に言うなら、自衛のために核兵器を持つ、と意思決定をしたときである。

 日本が核兵器を持つと言わない限り、米中が本気になって金正日政権の核廃絶には動かない。日本に核兵器を持たれて困るのは、金正日政権だけではない。米中も困るのではないのか。

 金正日政権に核を持たせない鍵は「米中ではなく日本国民の意思にある」というのが私の意見である。

 このように書くと反発や反論があると思われるが、そういう人たちに聞きたい。1994年以来、金正日政権に核廃棄させるための交渉が、なぜ失敗したと思っているのか。この交渉の中で一体わが国はどれだけの力を注いだのか。

 金正日政権の核保有は秒読み段階に入ったことは誰の眼にも明らかだ。核保有を阻止できないとき、わが国の安全をどのようにして保障するのか。私の意見に反対なら、具体的提案をして欲しい。

 金正日政権は、権力保持のため命がけである。わが国は国家の安全を守るために総力を挙げていない。情けないことであるが拉致を解決できないでいるのが証拠だ。われわれは自らの安全を守るために真剣になる必要がある。真剣さが足りなすぎる。

更新日:2022年6月24日