「対馬問題」は外交で速やかに解決を

佐藤勝巳

(2008.11.10)

 

 風邪を引いてもたもたしているうちに、情勢は物凄いスピードで流れている。アメリカ発金融危機という、野放しの競争の結果、資本主義そのものを深刻な矛盾に追いやり、わが国の総選挙まで延期させている。

 その危機が民主党オバマ大統領を生んだ。私のような素人は、誰がアメリカの大統領になってもうまく行かないのではないか、と思ってしまうほど危機は深刻と思われる。

 依然、金正日氏の健康状態が世界の関心を呼んでいる。その上脱北者などが、風船で金正日氏が病気だと知らせるビラを北地域に撒いたといって、北当局が韓国に抗議するなど、過去、一度も見せたことがなかった事件が起きている。このようなヒステリックな反応がみられるのは、よほど動揺が広がりき、政権中枢が困っているからであろう。

 金正日政権の言うことを聞かない韓国大統領に、罵詈雑言を浴びせるのが北朝鮮の政治文化の特徴であるから、全然驚くに当たらない。むしろ韓国大統領の対北政策が健全であることの証明に他ならない。

 日韓関係では、韓国人が長崎県対馬の土地を買っているということが、産経新聞に取り上げられ、議連の現地調査の動きとなっている。麻生首相が、日本もアメリカの不動産を買っているのだから……と発言して、一部から「それなら買わせもよいということなのか」との批判が起きるなど騒ぎが拡大しつつある。

 麻生首相の論理をもってすれば、日本も韓国の不動産を買ってもよいということになる。

 この主張は、やはり慎重さを欠いている。今回の金融危機で、韓国は外貨危機に陥り、国際通貨基金(IMF)のお世話になるのではないかと専門家の間で噂されている。

 そういう力関係の中で、多分買う人はいないと思うが、日本の大資本が韓国の不動産を買い漁ったら、紛争は間違いなく起きる。韓国の誰が何の目的で対馬の土地など買っているのか知らないが、政府同士が話し合って、未然に紛争を収めるべきである。こんな馬鹿なことをやって日韓両国に得るものは何もない。

 もう一つ、アメリカ金融危機の波紋で、韓国経済が急速に悪化していることによって、韓国から北に、裏で流れていたカネが細り出し、金正日政権が金融危機でより崩壊に拍車がかかってきているという、注目すべき現象が発生している。

 国内では、民主党の朝鮮問題特別委員会は、事実上日本独自で「テロ支援国家指定」できる法律の作成にはいった、という。来るべき総選挙で民主党が天下を取る可能性は五分五分だ。だが小沢一郎代表は、拉致について一言も発言したことがない。党内でこの案が通るのかどうか、私は大いに期待を込めて注目している。

 この度の民主党の動きは、ブッシュ政権のテロ支援国家指定解除を目の当たりにしての、日本政界の反応であって欲しい。民主党として法案が纏まれば、自民党も反対は出来ないだろう。

 どこで何が起きるか、予測不能な国際情勢となっているが、金融危機によって、米国が、世界の指導者(憲兵)としての地位は確実に過去のものとなった。

 オバマ大統領の前途は多難が予想されるが、あのエネルギッシュなパワーと知性で乗り越えて欲しい。

更新日:2022年6月24日