絶好のチャンス

佐藤勝巳

(2013.4.8)

 

 「北はほんとにやる気なのか。どうなるのか」と言う不安の声が周辺から聞こえてくる。評論家のなかには、戦争になるかも知れないし、ならないかも知れないなどと他人事のように言っているのを耳にするたびに、わが身を護る人間のセリフかと思ってしまう。

 

 私は本欄で機会あるたびに、北の政権は東アジアの諸悪の根源であるから打倒の対象にすべきであり、その北を倒れないように支援しているのが中国であるから、中国と闘うべきだ、と主張し続けてきた。特に、昨年末から強調してきた。

 

 ついにチャンスが到来したのだ。中国共産党の北に対する態度が、北の3回目(2月12)の核実験後、微妙になってきた。国連の北に対する制裁措置に中国が賛成したことである。2月の核実験後、中国共産党はじめ、北といろいろの分野で行われていた交流が全面的にストップされているという。それだけではなく、中朝国境に瀋陽軍区の戦車・装甲車などがいつでも北朝鮮に侵攻可能な態勢を取っているという。

 

 1979年に中国がベトナムに侵攻したが、そのときと同じような状況が起きているのだ。その理由は、基本的に、金正恩が中国のいうことを聞かないどころか、核ミサイルが中国全土を射程圏内に収めたことにある。

 

 過去の経緯は別にして、中国の安全保障にとってはピンチである。加えて北京は、北朝鮮をコントロールできないことが、全世界に再度明らかになった。それは即中国内のチベットなど被抑圧民族に悪影響を及ぼし、経済問題と絡んで共産党統治が重大な危機に直面する。北朝鮮の北京に対する「反逆」を容認するかどうかは、中国共産党の「核心的利益」に関わる大事件である。

 

 尖閣諸島の例を引くまでもなく、中国の言うことを聞かない、もしくは中国の望むことを妨害する奴は「武力で潰せ」というのが、中国社会帝国主義の一貫したやり方である。北朝鮮と中国の戦争の可能性は十分ありうる。現状なら、韓米にやられる可能性が高い。

 

 30歳そこそこの金正恩は、現代戦の怖さを知らない。激しいことを口にすればアメリカは驚くと読み違えている節がある。中国はそれほど能天気ではない。局地戦にでもなれば、韓米は今までとは違って、休戦ラインを突破してくるだろうから、休戦ラインが中国国境まで上がってくるのではないか、と見ている。北京の覇権は消えてなくなる最悪のシナリオと恐れている。それを阻止するためには、口実を見つけて中国軍が北に侵駐するか、北内部のクーデターしかない。

 

 韓米日が強気に出れば、上述のように朝中の矛盾は拡大する。当面の戦略目標は、狂気の独裁体制を倒すことだ。中国と北朝鮮の関係を断ち切れば、金正恩体制は倒れる。親中政権が出来、中国的な改革開放を取るであろうが、今の狂気集団よりははるかにましだ。戦術としては、韓米日は圧力を緩めてはならない。オバマ政権は大陸弾道弾の実験を中止するなど、日和だしているが、日和ってはならない。千載一遇のチャンスである。

更新日:2022年6月24日