総聯中央本部競売

佐藤勝巳

(2012.7.2)

 

総聯、敗訴確定

最高裁は、総聯が借金の抵当に入れていた中央本部の土地建物を競売に付すことを認める判決(6月27日)を下した。総聯の建物が競売に付される。日本にとって画期的な出来事である。

 

総聯中央本部は次のような経緯で建設されたものである。在日朝鮮人が北に帰国する際、持ち出し金額は当時(1959年~1964年ごろ)、1人当り4万5000円程度に制限されていた。そこで帰国者たちは、財産を処分して余った金を総聯にカンパして日本海を渡った。

 

総聯はそのカネで、東京都千代田区飯田橋、靖国神社の近くに、総ガラス張りの10階ほどの総連中央本部を建てたのである。あの建物は、在日朝鮮人の汗と油の結晶と言っても言いすぎにはならない。

 

「悪の牙城」

総聯中央本部は、半世紀近く、金日成、金正日独裁政治を、さらに金正恩を支えようとしてきた悪の牙城であった。その「牙城」が日本政府100%出資の株式会社・整理回収機構(RCC)に差し押さえられ、競売に付され、消えるのだ。東アジアの平和と安定にとって慶賀すべきことである。

 

 なぜこんな事態に立ち至ったのか。総聯傘下にあった朝鮮信用組合(以下、朝銀)は、長年にわたって、出鱈目な経営と預金を北に送金するなど不法行為を行ってきたが、バブルがはじけだすと同時に全国16朝銀が逐次破綻した。そこで日本政府は、公的資金1兆4000億円を投入して朝銀を整理統合、朝銀に対する総聯の人事介入を禁止し、RCCが朝銀の不良債権を買い取った。

 

「話し合い」ナンセンス

その中で総聯中央の借金が627億円。総聯が返済しないので、担保物件である総聯中央本部の土地建物を競売することが裁判で争われてきた。6月27日最高裁判決でRCCが勝訴し、競売が実行されることになった。

 

敗訴した総聯は「話し合いで解決したい」とコメントしているが、冗談ではない。話し合いで解決できなかったから裁判で争ったのだ。最高裁までいって敗訴したら「話し合い」、どこまで日本をなめているのだろう。RCCは判決通り断固実行あるのみ。

 

カネを借りて返済しなければ担保物件が差押さえられ、競売される。これは全国で無数に行われている法の執行である。政府は間違っても「話し合い」などしてはならない。

 

おごる総聯久しからず

総聯中央本部の土地建物が競売に付される政治的意味は大きい。このところ在日朝鮮人社会でも総聯の求心力は日に日に低下していたが、今回の判決で権威の失墜と求心力の拡散はさらに進む。また日本社会でも孤立し、日本人から益々相手にされなくなる。金正恩にとって、収奪装置のー層の機能麻痺、まさに八方塞がりだ。金正恩の近未来を予告している明るいニュースである。

 

これまでの半世紀、総聯にやりたい放題のことをやらせてきた日本政府にも問題があった。だが「おごる平家は久しからず」という。日本現代史から、総聯が消える日のカウントダウンが始まった。結構なことである。

更新日:2022年6月24日