亡国の政治家小沢一郎

佐藤勝巳

(2012.6.29)

 

いよいよ民主党の分裂が始まった。もともと綱領もない政党だから、困難に直面すれば分裂は避けられない。離合集散は政治の常、問題は分裂の質だ。

 

両者の現状認識

小沢一郎元民主党代表は、「野田首相は公約とは逆に消費税値上げに熱中、行革、地方分権など民主党が国民に約束した公約を果していない。従って社会保障と税のー体改革に関する関連法案の衆議院の採決には反対する」と言って反対票を投じた。

 

野田首相は、「社会保障と税の一体改革は待ったなしだ。今、改革をしなければ国家財政が破綻する」民主党の公約よりも国家財政破綻阻止のため3党合意を背景に政治生命をかけて、国会に臨んでいる。

 

裏づけなしの民主党公約

小沢氏らの主張は、せんじ詰めたところ野田首相が民主党の公約を守らないから怪しからんと批判しているのだが、そもそも民主党の公約そのものが空理空論なのだ。例えば子供手当や農家への個別補償などは、3兆円の「埋蔵金」で財源は確保出来ると言っていたのは小沢氏ら民主党である。 ところが「埋蔵金」は1兆円にも満たなかった。財源予測を誤ったのだ。また国民一人当たり7万円の年金支給を公約したが、財源をどうするのか。これも空手形を切ったのだ。

 

小沢氏は5月30日、NHK夜9時の報道番組に出演して、野田首相の社会保障と税のー体改革は「待ったなし」という認識に「わが国にはまだ余裕がある」と反論していたが、その根拠を一切示さなかった。経済の世界恐慌が公然と語られているとき、間違ってもこんな無責任な政治家に、政治を委ねることは出来ない。

 

小沢氏は、1000兆円の累積赤字(国民一人当たり700万円の赤字)をどうやって解決する気なのか。野田内閣は解決案を示し、自民党、公明党と協議・修正し、危機を克服しようと動いているのだが、小沢氏は何の解決策も示していない。国家の危急存亡のときを捉えて、権力闘争を仕掛けている、という印象は拭い切れない。

 

野田・小沢の本質的な違い

小沢一郎氏は、胡散臭い手法でゼネコンなどからカネを集め、そのカネをばら撒き、子分を作ってきたダーティーな政治家である。しかし、それより問題なのは税金をばら撒いて票を集めるという政治手法である。かつての自民党の農業政策は、農民の票欲しさに、長年に亘って“補助金”や“関税”で農民を保護してきた。その結果、日本の農業は発展しただろうか。否である。過保護政策によって逆に、自主・自立の精神を奪われてしまった農業は、国際競争からも脱落し、後継者にも事欠くという無残な姿を晒している。額に汗せず補助金漬けになれば、無気力は普遍的に起こる現象である。小沢氏が野田氏に求めている「公約どおりあらゆる分野に税金をばら撒け」というのは、この国を亡ぼせと言っているのに等しいのだ。

 

補助と人間性の喪失

大衆迎合とは、上記のように人間の自主独立の精神を奪う亡国行為である。その買収費の累積額(赤字)が1000兆円だ。この1000兆円の大部分は自民党と公明党が政権の座にあったときのものである。自公と民主に違いがあるのはばら撒く先だ。大衆迎合という点で質的な違いはない。わが国政治の病は尋常なものではないのだ。

 

私は、沈滞、閉塞している日本社会の現状は、補助金行政と社会保障制度に起因しているとの仮説を立てている。親の死を隠し年金を受給する退廃現象は不気味である。そもそも税金の援助を受けなければ、子供を生み、育てることが出来ない、信じがたい現象である。これらのよってくる原因を社会保障と考えているが、徹底的に論議して欲しい。

 

社会保障費の削減が必要

野田政権は、これ以上買収費を使ったら国家財政が破綻することに気づき、社会保障と税のー体改革を提案、大衆迎合から離脱を目指す方向に、スタンスを変えつつある。だが、社会保障制度のありようの論議は保留のままだ。社会保障費を削減しなければ制度そのものが崩壊するのだが、3党は恐くて足踏みしている。

 

ばら撒きは、政治家個人のカネではなく、税金をばら撒き多数の議席を獲得、政治を采配できる。政党の側からすれば、こんな魅力的で美味しいものはない。有権者の側は、額に汗せず収入を手に出来る。かくして、1000兆円の借金を作った。小沢氏はもっと借金を作れ、そうすれば議席は増える、と主張しているし、これを支持する有権者も少なくない。これは間違いなくギリシャへの道である。

 

沈黙するマスメディア

有権者が政治に参加することは、亡国政治家たちを国会議員にしないことである。週刊文春が、「小沢一郎妻からの“離婚状”」を掲載したのが6月21日号。中身は、小沢氏の隠し子、愛人、放射能を怖れて選挙区(岩手県)入りをしなかったことなどだ。ところがこの週刊文春が発売されてまもなく2週間になるが、どこのメディアもこの報道を黙殺している。

 

不思議な話である。あの週刊文春の報道はガセだから黙殺しているのか。そうではなく報道が事実なら、他の報道機関は、私生活問題はともかく、小沢一郎氏の亡国手法をなぜ批判しないのか。メディアは国民に正確な情報を提供するのが使命だ。情報伝達は民主主義体制の瞳でもある。知らせないことはメディアの自殺行為である。

 

メディアはなぜ戦わないのか

メディアは報道しないことで小沢一郎氏をかばうことになっていることを知らないはずがない。どうして小沢氏をかばわなければならないのか。不可解な話だ。メディアは、亡国政治家と戦わずして、いつ何と戦うのか。しっかりして欲しい。

更新日:2022年6月24日