北、ミサイル発射、失敗の後

佐藤勝巳

(2012. 4.13)

 

北のミサイル発射騒動は、周知のごとく失敗で終わった。日本、韓国、アメリカから見れば、最善の結果であった。

 

ミサイルの発射失敗など珍しいことではない。だが、今回の北のミサイル打ち上げは、「強盛大国の象徴」「金正恩の功績」「外貨獲得の商売」という彼らなりの狙いがあったから、国際世論の「打ち上げ反対」という声を無視し、世界注目の中で、「主権の行使」「人工衛星打ち上げて何が悪い」と言って打ち上げを強行したのである。

 

結果、ミサイルは120キロの大気圏を脱した直後、空中分解したようだ。政治、軍事、経済的にも、これほどの屈辱的な失敗は、北朝鮮の歴史上なかった。正恩体制の祝砲のはずが弔砲に変わった。正恩はじめ側近たちが狼狽していることだろう。

 

次に、困惑しているのが中国であろう。本欄でも繰り返し指摘してきたことであるが、中国は覇権をアジアに拡大するため、北の独裁政権を操作・利用してきた。その正恩体制が、スタートで大失態を演じてしまったのだ。北の肩を持てば国際的に孤立する。突き放せば崩壊につながりかねず、困惑しているのが見えるようだ。

 

2、3日前から北のメディアは、政治局員候補・書記であった崔龍海(62)が、政治局常務委員に2階級昇進、落下傘のように軍に下りて行き、「次帥」の肩書きで軍の党組織の責任者「総政治局長」に就任した。人民武力部長(防衛大臣)も金永春から金正角に交替したばかりだ。

 

この人事は何を意味するのか。また、ミサイル打ち上げ失敗が、韓国の左翼勢力と年末の韓国大統領選挙にどんな影響を及ぼすのか、改めて、桜美林大学洪熒(ホンヒョン)客員教授と検討してみたいと思っている。いずれにしても北の政治指導部は、発射失敗で危機に陥ったことは間違いない。この危機をどう打開するのか。核実験という情報もあるが、韓国や日本に対する軍事挑発の方が、国内引き締めには直接的効果がある。いずれにしても日韓は自主防衛と相互抑止力の強化が急務である。

 

2009年ミサイル発射のときは、2段目と3段目のブーツの切り離しに失敗したのだが、今度は1段目と2段目の切り離しに失敗したようだ。3年かけても解決していないことが判明した。今度は、誰がどんな形で責任を取らせられるのか、注目したい。

更新日:2022年6月24日