新年にあたって

佐藤勝巳

(2012. 1.10)

 

謹賀新年

昨年の今ごろは入院していましたが、今年は元気で新年を迎えることができましたことに感謝しています。

 

世界も日本も、依然として経済の混迷を打開する糸口さえ見つけ出すことができないでいますが、これは資本主義制度そのものが行き詰まったことによるものですから、そう簡単に解決はできないと見ています。リーマン・ショック以来、打開の模索が続いていますが、資本主義を修正する理論も、新しい制度の試論すらも提起できずに右往左往しているのが現状かと思われます。

世界経済の流れは、明らかに恐慌に向かっていると思います。帝国主義時代は、需要と供給のバランスが崩れ生産が過剰に陥ったときは、戦争で消費を促進させるということで、矛盾の解決をはかってきました。しかし、大量破壊兵器が発達した現在、経済に刺激を与える戦争も事実上できません。

 

ヨーロッパの金融不安を見れば分かるように、ギリシャやイタリアなどで借金返済が困難となり、それを助けようとしているドイツ、フランスまでもが、同時に信用不安に見舞われ出しました。事態は深刻です。日本も例外ではありません。

 

当面の解決策は、国民が自分の収入に見合った生活をすることだと思いますが、それを実施すると購買力が後退し、景気は益々悪化して税収も減少します。つまり悪循環です。中国、韓国などは、輸出を伸ばすためにドルに合わせて自国通貨を増刷した結果、インフレを招き、しわ寄せが低所得層に集中しています。

 

特に中国では、インターネットの発展とあいまって、暴動の多発で社会が不安定となり、経済にも赤信号がともり出しました。ヨーロッパでも金融不安解決のための緊縮政策が採られ、中国、インド、ブラジルなどの新興国の生産物を買い控えているため、新興国の輸出が低下してきました。日本は円高で苦しんでいますが、要するに経済に国境はなく、一蓮托生、どこもかしこも行き詰りが顕在化して来たということです。

 

そんなときに金正日が死んだのです。北朝鮮をとりまく内外の情勢は、金日成が死亡し金正日に権力が世襲された16年前と全く変わっています。金正恩は、最悪のときに政権の座につこうとしていますが、どうやって困難を乗り切れるのか、殆ど絶望的と見ています。それでは、韓国に朝鮮戦争規模の戦争を仕掛けて、韓国併呑に出るのか、です。北は西の海で軍事挑発ぐらいはするかも知れませんが、戦争する力は、主観的にも客観的にもないと思います。従って矛盾は内に向いて行かざるを得ません。

 

問題は関係国の出方です。北は、昨年末「アメリカ帝国主義」に食糧支援を要請しました。北京の気をひくという、いつもの手練手管もあると思いますが、事態の深刻さも反映しています。北政権内部の矛盾の激化は、同時にテロの可能性が高まります。北京政府の意図や思惑とは関係なく、一発の銃弾で、体制が崩壊する脆さを内包しています。しかし、逆に、中国が北朝鮮の領土を担保にとって本格的な支援に踏み出せば、今の体制は一定程度維持されます。この点が、短期的には注目すべきポイントと見ています。

 

北に関与している中国、アメリカ、ロシア、韓国、日本はそれぞれ深刻な経済問題を抱え、独裁政権に関わっている暇がないのが本音です。加えて、アメリカ、韓国は大統領選挙があります。日本も春には総選挙の可能性が高まってきています。中国、ロシアも政権が交代します。このようにどこも内政で手一杯です。

 

私の持論は「北の政権を相手にするな」というものです。誰も相手にしなければ「自壊」するのは明白です。6者協議も日朝交渉もナンセンス。相手にせず、独裁政権を自壊させる絶好のチャンスです。

 

北の国内問題での決定的な弱点は,金正恩が政治経験のない若輩ということです。当然、張成沢夫婦による院政ということになりますが、慶応大学の小此木政夫教授などは“集団指導体制”になるだろうと推測しています。ソフトランデングを期待しているということなのかも知りません。

 

1392年に「李氏朝鮮」が成立して以来620年間、北地域で“集団指導体制”による政治が行われたことはありません。金正日が死んだらそれが突然できるというのが小此木氏らの主張です。呆れるほど非科学的な歴史認識です。独裁国家の政変はハードランデングしかないのです。北では、俺が、俺が、で収まりがつかない文化と共産主義のー党独裁が結びつき、北朝鮮特有の「独裁王朝」ができたのです。

 

独裁体制は崩壊させなければなりませんが、崩壊すれば崩壊したで、これまた大変です。だが、人類の歴史は大変なことの連続で、氷河期の“氷期”に遭遇したのをはじめ、多くの危機に直面してきました。また、支配・被支配、戦争による大量殺戮の繰り返し、原爆投下による更なる殺戮が行われてきました。

 

だが、人類はそれを乗り越えてきたからこそ現代があるのです。当面、6者協議と日朝交渉を行ってはならないことを野田政権に強く求めます。6者協議に応じないオバマ政権の外交を断固支持します。

 

そんな思いで新年を迎えました。健康に留意し、頑張ります。今年も宜しくお願いいたします。

更新日:2022年6月24日