独裁者金正日死亡に思う

佐藤勝巳

(2011.12.19)

 

みんなの関心は北がどうなるのか、である。具体的には金正恩に権力がスムーズに継承されるのかどうか。仮に権力が継承されても権力の安定度は、南北、中朝、米中関係は、拉致は解決に向うのかなどなど、現時点では神様でも分からないと思われる。

 

なぜなら、北朝鮮の政治指導部も読めないことであるからだ。況や外部の人間が分かるはずがない。ただ、今まで金正日体制を支えてきた家臣たちも、金正恩を支持する家臣も現在の「体制」を維持したいという点では、一致している。体制否定は現時点では考えられない。

 

矛盾があるのは、誰が金正恩の側近として、采配を振るえる地位につけるのか、それをめぐってである。ここから先は色々ことが推測出来るが、地位をめぐる争い、権力闘争は時々刻々変化しているので、政治指導部の個々の幹部も全体状況を掌握することは難しいからだ。推移を見守る以外ない。

 

問題は逼迫した経済の打開策である。改革開放政策を採るのか、今までの瀬戸際政策でいくのか、重大な選択が迫られている。権力の継承問題と絡んで、最大の不安要因となっている。また、コメなど諸物価の値上がりは止まることがなく、市場勢力(カネ)がより一層力をもつことは間違いないが、これが権力継承問題とどう連動していくのか、注目すべき点である。

 

しかし、かなり断定的に言えることは、韓国内左翼勢力は、指導者金正日を失ったことで、来年4月の国会総選挙、12月の大統領選挙で左翼内部の立候補者などの調整が利かなくなり、混乱に陥るであろう。

 

6者協議の再開のため進めていた米朝交渉、水面下の日朝渉など、暫らくの間ストップないしは停滞するであろう。問題は中朝関係である。中国が一貫して北に求めてきたことは、中国的な改革開放政策であり、今がそのチャンスと捉えている可能性がある。しかし中国の意向が勢いを増すと、当然、朝鮮人民軍などからの反発が強まる。こと志と違って、混乱を促進する側面があり、この関係も極めて微妙な問題を抱えている。

 

断定的に言えることは、独裁者金正日の死は、大局的に見て東アジアの歴史の進歩、韓半島の平和と安定を促すであろう。ただ、そうなるためには北の体制を維持しようとする勢力との戦いが必要不可欠の条件である。

 

日本の報道を見ている限り、浮き足立って大騒ぎをしているが、腰を落ち着けて北の動きを冷静に見極めるべきである。慌てることは何もない。戦略目標は、独裁体制を変えることだ。そうしなければ、拉致、核、ミサイル、何も解決しないのだ。

更新日:2022年6月24日