競売の危機、総聯中央本部

佐藤勝巳

(2011. 5.31)

 

朝鮮総聯中央本部は借金627億円を返済出来なかったため、5月26日、東京地方裁判所の判決によって、担保に入れていた東京都千代田区にある中央本部(JR飯田橋駅に近い一等地)の土地建物を、100パーセント日本政府が株式を所有する「整理回収機構(RCC)」に差し押さえられ、競売に付されることになった。総聯は控訴で争うと言っているが、棄却の可能性は大である。

 

総聯や北朝鮮公式メディアは、総聯中央本部の土地建物の差し押さえ、競売が顕在化した2007年から、日本政府による「政治弾圧」だと主張し、攻撃していた。彼らは、自分たちの主張に従わない日本政府は怪しからん、という金正日政権が常に駆使している「独裁政治」の唯我独尊的主張で、特に珍しいものではない。だが、わが国においては、組織暴力団でも口にしない暴論である。

 

彼らの「主張」は、資本主義を否定する「革命的」なものには違いないが、資本主義、法治、自由、民主主義、人権を国是とする日本においては、間違っても受け入れられない、敵対的主張である。

 

しかし、朝鮮総聯中央本部が競売に付され、借家住まいに陥る危機に直面しても、総聯を支持してきた在日朝鮮人は誰も金正日の手先、総聯を助けようとしない。金正日政権の近未来を暗示する衝撃的な「事件」といえる。

 

一方、金正日政権も627億円のカネを作ることができなかったのである。否そうではなく、正確には、金正日に総聯を助ける意思がなかったと言った方が正しいであろう。

 

つまり、金正日は総聯を利用するだけ利用して、利用価値がなくなったから冷酷に切り捨てたのだ。そのことを、誰よりも〝利用された総聯幹部〟が一番よくわかっているはずだ。

 

金正日とその走り使いをした一部総聯幹部こそが、朝鮮信用組合を潰した張本人であり、その付けが、秋ごろ確定する総聯中央本部の土地建物の競売なのだ。身から出た錆以外の何ものでもない。「政治弾圧」が聞いて呆れる。

更新日:2022年6月24日