平和は10倍の報復で保たれる

佐藤勝巳

(2010.11.24)

 

 金正日政権が、北から12キロ南にある、韓国の仁川国際空港に近い「延坪島」11月23日14時20分ごろ、いきなり砲撃を加えてきた。韓国側も反撃で答え、交戦は1時間以上に亘った模様。韓国側に 2名の戦死者と20名ほどの負傷者を出したという。

 

 金正日政権のこの手口は、組織暴力団の「ゆすって獲る」という手口と同じものである。

 

 金正日は、昨年の4月ミサイル実験、5月は2度目の核実験。今年の3月には韓国哨戒艦を白翎島沖で撃沈し、46人の戦死者を出した。11月に入りアメリカの核の専門家にウラン濃縮施設の一部を見せた。そして23日に延坪島攻撃に出てきた。

 

 核とミサイルはアメリカへのメッセージ。韓国攻撃は李明博大統領へのメッセージである。李大統領には「戦争したくなかったらコメや肥料をただでよこせ」という脅迫の便りである。

 

 アメリカへのメッセージは、米朝2国間交渉で、休戦協定を平和協定に変え、朝鮮半島の平和と安定、というのが表向きの話。アメリカとの関係維持で中国を牽制するというのが本音である。このままの状態が進めば、北朝鮮は、経済的に中国の従属がすすみ、中国の「朝鮮省」にならざるを得ない、重大な危機に直面している。

 

 金正日は、2006年の第1回の核実験後、中朝関係が悪化したとき、彼らは中国に潰される「助けて欲しい」と、ブッシュ政権に泣きつく振りをして、ブッシュ政権を篭絡、対話路線にたらしこんだ。他方、中国も騙して「6者協議」を隠れ蓑に生き延びを図った。

 

 金正日政権に変化球はない。いつも同じ直球を投げ込んでくる。非常に分かりやすい。フルスイングすればホームランになる。つまり、80発の砲弾には800発の砲弾で対応することだ。韓国政府は3月哨戒艦撃沈のときに、北の潜水艦基地を爆撃していたら、今回の延坪島攻撃はなかったはずだ。「戦争の不拡大」など馬鹿なことを言っていたら、次は白翎島が砲撃されるだろう。

 

 日本も同じだ。尖閣諸島で捕まえた船長をあんな形で釈放したら、漁船が図に乗った動きを必ずしてくる。民主党政権も李明博大統領も世の中の常識を知らない。

更新日:2022年6月24日