国民の手で、菅内閣を葬ろう

佐藤勝巳

(2010.11.12)

 

 「自分がビデオを流した」と海上保安庁の職員が名乗り出て(11月10日)、この問題に新たな展開をみせた。この日の衆議院予算委員会でも終日質疑が行われた。NHKテレビで放映していたので見たが、正直なところ苛立ちをかくせなかった。

 野党の質問は最も肝心な菅直人首相、仙谷由人官房長官の中国認識を糾さなかったことでる。この二人が、「胡錦濤政権が、日本の巡視船に中国漁船を体当たりさせてくるような政権」と考えていたのかどうか。また、領土拡張を狙う「社会帝国主義」と認識していたのかどうか、彼らの中国認識を糾すべきなのに、質さなかったことである。

 

 2000年3月当時の自民党河野洋平外務大臣は「まずこちらが誠意を示し相手の誠意を期待する」といって、相手が要求もしないのに日本人を拉致した金正日政権にコメ10万トンを援助した。河野氏はこちらが金正日に誠意を示せば、相手が答えてくるという金正日認識があったことは明らかだ。菅首相や仙谷官房長官の中国認識は、ネツトに流出した中国漁船が海上保安庁巡視船に2回も体当たりしてきた事実を公表したら「中国を刺激し日中友好に支障きたす」との認識があったと推測される。

 この事実の「隠蔽」は菅・仙谷両氏の歴史認識と深くかかわりがあるというのが私は見ている。その証拠の一つが8月10日に公表された日韓併合100年当っての「内閣総理大臣談話」である。

 

 100年前の植民地支配に対して「ここに改めて痛切な反省と心からお詫びの気持ちを表明します」と述べている。これは「植民地支配してごめんなさい」とうこの世代(全共闘)特有の「贖罪意識」の代表的なものである。この声明の対象を「中国」に、「植民地」を「戦争」に置き換えれば、今回の尖閣事件のようにかつての被抑圧民族(中国)から攻撃を受けると、かつて被害を与えた民族を困難に陥れてはならない、という贖罪意識が作動し、真実を隠蔽することになっていく。

 

 各種学校である「朝鮮人学校」が、金正日政権の支配下にあり、反日教育を行っているのに、それを問題にせず、拉致も核も解決しないのに、授業料をわが国の税金から援助するなど信じがたいことを平然と実行しようとしている。これは「かつて被害を与えた民族の子孫」という「贖罪意識」が根底にあるからだ。日本の中には2010年5月1日現在、各種学校は1467校(文部科学省専修学校教育振興室を取材)あるが、「朝鮮人学校」以外授業料支援など言っていない。菅首相・仙谷官房長官の言動を見ていたら、このように「贖罪」というバイアスかかると思考停止に陥って、物事の本質、関連が見えなくなり、売国行為となっていくのが特徴である。

 

 そもそも「植民地支配」や「戦争」がどうして「謝罪の対象」になるのか。世界中でこんなナンセンスな歴史認識をもっているのは菅・仙谷両氏を初めとする民主党、一部自民党議員、朝日新聞、雑誌「世界」などである。「真実を隠蔽」し、尖閣事件に見られる自国の領土を奪われるお先棒を担ぐことになる。「贖罪」=「売国」なのだ。 

 

 中国は、自国の漁船が日本の巡視船に体当たりしたことを、逆に日本の巡視船が体当たりしたと説明した。日本の巡視船が中国漁船の船長を拘束したら、レアアースの輸出を止め、加えて日本人4人を不当に拘束、幾つかの交流や会議をキャンセルしてきた。船長を釈放しなかったら「何が起こるかわからない」と温家宝首相は日本政府に恫喝をかけてきた。中国共産党の言動は、文字通り因縁をつけて、恫喝、金銭や土地を巻き上げる組織暴力団(ヤクザ)顔負けの所業であったことも満天下に明らかになった。

 

 特定の政府要人官僚はあのビデを見ていながら、中国共産党の恐ろしいまでの出鱈目な日本攻撃を黙認して来た。これは断じて許せない。ビデオ流出が公務員の守秘義務に違反するなどの比ではない。菅内閣はいかなる理由で、胡錦濤共産党政権を助けてやらなければならないのか、どんな義理があるのか説明を聞きたい。菅内閣はどこの国の利益を代弁しているのか疑う。野党はなぜこの点を糾さないのか。

 

 菅内閣はこれほど屈辱的なことを胡錦濤政権にやられても、未だ、あの映像を国民に公表しない。もっとも肝心な中国漁船逮捕の場面は流出ビデオにもない。巷間、逮捕のときに信じがたい事件があったとの噂が流布されている。誤解を解くためにも、逮捕のときのビデオを速やかに公開すべきである。

 

 菅内閣は、守秘義務違反で当該職員の処分を考えているようだが、この海上保安庁職員は「愛国者」として長く歴史に名を止めるであろう。われわれ有権者は菅内閣を処分すればよい。どこの世論調査でも菅内閣の不支持率は急上昇、支持率は急降下している。当たり前のことだ。  

 本欄は繰り返し、鳩山由紀夫内閣、小沢一郎元代表を批判してきたが、こんな民主党を選んだのは有権者である。その罪滅ぼしに、同じ国民の手で民主党を裁き、菅内閣を葬り、 政治の主体が国民にあることを示す絶好のチャンスである。

更新日:2022年6月24日