朝中首脳会談、6カ国協議再開の謀議

佐藤勝巳

(2010. 9. 1)

 

 5月に訪中した金正日は、8月下旬(26~30日)に再び中国東北を訪問、胡錦濤と長春で会談(27日)を行なった。

 

 今まで、1年に2度も北のトップが中国を訪問した例がないことから、関係者の関心を呼んだ。韓国のメディアは、金正日の後継者と言われているキムジョンウンを同行したとか、後継者としての中国の承認を得るためとか、金正日訪中を後継者問題にからめた報道が多かった。

 

 報道されていることが事実なら、北朝鮮は中国の植民地と言うことだが、新華社通信が報道した中身は6カ国協議再開のことだった。発表されたことが真実かどうかも分からないし、重要であるがために公表しないということもあるから、一定の時間が経過しないとよく分からない。

 

 朝中首脳会談の分析は改めて行なうが、発表された新華社通信を読む限り、胡錦濤は「中国は半島情勢の緩和と外部環境に向けた北朝鮮の積極的な努力を尊重、支持する」。

 

 一方、金正日は「中国が6カ国協議と朝鮮半島の平和と安定維持のため行なってきたせ津曲的な努力と貢献を高く称賛する。半島の非核化を堅持する北朝鮮の立場に変わりはない」と、金正日は、6カ国協議に参加するかのようなコメントをしている。中国武大偉朝鮮問題特別代表はすでに、6カ国協議関係国に、再開にむけての調整を始めている。

 

 米韓は、哨戒艦撃沈の報復として軍事演習を今年一杯続行する。アメリカは、労働党・人民武力部と同組織の幹部などのアメリカ国内の資産の凍結、取引銀行の停止などの制裁を31日に発表した。追加制裁も予告している。北経済にさらなる打撃が予測される。それを回避するために6カ国協議再開という日韓米を騙すための中朝首脳会談であったことがうかがえる。岡田克也外務大臣は6カ国協議再開には慎重のようだが、李明博政権はその謀略に乗るかのような微妙な変化が見られる。

 

 民主党は代表選挙で菅・小沢両氏のどちらが勝っても、普天間基地移設問題は事実上棚上げとなろう。結果として米韓の足を引っ張る、「利敵行為」が予測される。困ったことである。

更新日:2022年6月24日