北の幹部、公開銃殺される

佐藤勝巳

(2010. 6.14)

 

朝鮮労働党の朴基南前計画財政部長と同キムテヨン副部長の2人が3月10日頃、公開銃殺されたという。事実ならむごい話である。

 

理由は、「通貨改革」で「<現実をきっちりと把握せず、無理に貨幣改革を断行し、党と国家、そして人民に莫大(ばくだい)な被害を与えた。これは〝民族反逆罪〟に当たる>と発表し、1人に9発の銃弾を浴びせ処刑したという」(韓国・朝鮮日報6月9日)、おどろおどろしいニュースである。

 

3月ごろ同じ話が流れていたが、確たる証拠がなく話は立ち消えとなっていた。同紙によれば、今度は公開銃殺の場所は順安地区にある姜健(カンゴン)軍幹学校(陸軍士官学校に相当)の射撃場。見学者は「労働党の副部長クラス、各省の次官クラス以上の幹部」と具体的である。

 

例えば1997年の食糧危機のとき、国民を大量に餓死させたことを理由に、当時の農業担当除寛熙秘書が公開銃殺されたとのニュースを耳にしていたが、政策に係わることで、独裁者金正日の許可なくして、幹部が勝手に立案・実行出来るはずがない。金正日のサインを貰って実行したはずだ。

 

そもそも「貨幣改革」の理由を作ったハイパーインフレは、金正日指導でミサイルを太平洋に打ち込み、核実験を強行、国際的制裁を招いたからだ。元凶は金正日ではないか。それにしても、他の幹部への見せしめとして、口の中に砂利をいっぱい詰め込んで、9発の銃弾を同じ高位級幹部の目前で打ち込む神経は、想像するだけで背筋が震える。

 

他方、同じように金正日のサインを貰い、韓国哨戒艦を魚雷で撃沈した潜水艦の乗組員は2階級ほど特別に進級したであろう。韓国の左翼、民主党は独裁者金正日を非難せず、金正日政権に対して、原則的態度を取った李明博政権に哨戒艦撃沈の責任があると主張する。和田春樹氏のような岩波文化人とよく似ている。これも呆れる話だ。

 

菅直人政権は、金正日政権は目的のためには、平気で韓国の哨戒艦乗組員も、自分の部下もためらわず殺害する、日本的常識など全く通じない集団であることをリアルに認識して、対北朝鮮外交を進めて欲しいと願う。

更新日:2022年6月24日