温家宝発言に抗議する

佐藤勝巳

(2010. 5.30)

 

 韓国で日韓中の首脳会談が5月29日、30日の二日間開かれた。韓国哨戒艦撃沈について中国の温家宝首相は「事件による深刻な影響に適切に対処し、次第に緊張した情勢を緩和し、特にわれわれは武力衝突を避けなければならない。中国側はこれからも引き続き、各国とともに積極的に意思疎通と協調をとり、事態がこの地域の平和と安定に寄与する方向に沿って発展するよう推進していく」(産経新聞5月31日)と、記者会見で予想通りのことを述べた。

 武力攻撃してきたのは金正日政権であることは明白である。それなのに加害者金正日を批判せず、「われわれは武力衝突を避けなければならない」と、被害者に自重を促す中国首相の態度は、裏で金正日と手を組んでいるのではないかと疑わざるを得ない。中国は自分の金正日政権への対処を示さず、韓国や日本に慎重にという。短期的には上海万博中に騒ぎを起こされたら困る、と言うのかもしれないが、結局、中国共産党の本質は金正日テロ集団と同質ということであろう。そうでなかったらこんな態度は取れない。

 

 鳩山由紀夫首相は、「意思疎通」を図るなどどうでもよいことを言っている。駄目なのは普天間問題だけではない。何を言っても分からない政治家だからどうしようもない。

 李明博大統領の発言も解せない。大韓民国の兵士46人が戦死しているというのに、その国の責任者が、中国の首相の前で北に抗議しない。誰が見ても、李大統領の態度は腰が引けている。だから、温家宝首相の偉そうな発言をするのだ。

 

 これまで金日成・金正日政権は韓国に対して、▼朝鮮戦争(1950年6月)▼大統領府(青瓦台)に武装ゲリラ31名で攻撃をかけてきた(1968年1月)▼韓国東海岸に100名以上の武装ゲリラを侵入させ、銃撃戦を行なった(1968年11月)▼独立記念日の会場で在日韓国人を使って朴正熙大統領狙撃未遂事件(1974年8月)▼釜山米文化センター放火事件(1982年3月)▼韓国全斗煥大統領暗殺未遂事件(ラングーン事件、1983 年10月)▼ソウル五輪阻止を目指した大韓航空機爆破事件(1987年11月)で乗員乗客115名前死亡)▼韓国哨戒艦撃沈(2010年3月46名死亡)など、戦争と無数のテロを仕掛け、多くの韓国人を殺戮してきた。

 

 北からこれだけ戦争や侵略、テロをされながらも韓国は、今まで一度たりとも反撃をしたことがない。これが韓国にとって最大の問題なのだ。反撃の危険がないから、北は繰り返し攻撃してくる。家宝首相は「武力衝突を避けなければならない」と訓示を垂れるが、温家宝首相こそ歴史を学ぶべきだ。こんな愚かなことを3人の指導者が口にしているようでは、金正日の手を縛ることは難しい。

更新日:2022年6月24日