総聯の「犯罪」④

佐藤勝巳

(2010. 4.23)

 

Ⅴ 朝銀問題

 いまひとつ、陳述人が過去繰り返し指摘してきたことは、朝鮮信用組合(以下「朝銀」と呼ぶ)問題だ。1997年5月に大阪朝銀が破綻するまで、信用組合の監督を都道府県が行っていた。年1回の監査を、専門知識ゼロの県庁などの地方公務員が「監査」していたのである。帳簿の見方を知らない素人が監査するという、信じられない杜撰な行政が行われてきたなかで、朝鮮人商工人たちは朝銀を使って脱税を行っていたのである。

 なぜ断定できるかと言えば、朝銀は全国の都道府県にあった。東京在住の朝鮮人が、九州のある朝銀に預金し、京都の朝銀に預金を動かすなどすると監督官庁が違う上に、監査能力を持たないのであるから、いくらでも所得隠しが可能であったと、脱税をした複数の商工人たちから陳述人が直接話を聞いているからである。

 問題の文東建氏が、船を寄付してからは、氏が朝銀に借り入れを申し込めば、最優先で融資がなされた。中央幹部Kさんの話によれば、朝銀は、実態として金日成政権に大口カンパをしている商工人たちの金融機関であったというのだ。

 出鱈目な貸し付けをやってきたところにバブルがはじけた。破綻しないわけがない。その先がけが前述の大阪朝銀であったのだ。そして次々と朝銀は破綻し、つぎ込まれた公的資金総額は1兆4000兆円に達した。

 1960年代末ごろから、総聯関係者から金日成政権にカネが流れ出し、バブル期には、総聯社会で「銀座の詐欺師」と呼ばれた安商宅氏は、1人で額面50億円カンパした(実際に支払ったのは30億円)といわれている。

 バブル崩壊後は、朝銀の預金を金正日政権に提供したことなどをめぐって、07年6月朝銀の不良債権を買い取った整理回収機構(RCC)が東京地裁で勝訴、総聯中央本部差押さえまで行っていることは記憶に新しいことだ。

 戦後、日本から北朝鮮に流れたカネは天文学的数字になると推定される。そのカネを使って金日成・金正日一族は、栄耀栄華を極め、他方で核ミサイルの開発を続けた。総聯の存在なくして北朝鮮の核武装は考えられない、と断言してよい。

 戦後のわが国は現憲法下で、平和と民主主義を謳歌してきた。その結果、自国民が金正日政権に拉致されていることも、核ミサイルの脅威に晒されていることも、自覚しえないで来た。まさしく今、わが国の民主主義の質が問われているのである。

 金正日氏が日本人拉致を認めても、なお拉致を解決できないで6年が経過している。文東建氏や総聯とは、わが国にとって一体如何なる存在あったのか、この法廷でも鋭く問われているのである。

更新日:2022年6月24日