再び、朝鮮高校生への授業料援助に反対する

佐藤勝巳

(2010. 3.15)

 

 今、国会で朝鮮高校生の授業料を日本の私立高校生並みに援助するかどうかが問題になっている。金正日政権を支持している総聯が朝鮮高校を指導している、と聞いた瞬間、朝鮮問題に関心ない人でも、授業料支援などとんでもない、と考える。だが、鳩山政権は素直にそう考えない。それが私には不思議でならないのだが、結局、「第三者機関を設置。そこの結論に委ねる」という。

 

 鳩山首相と違って、大阪の橋下知事から極めて健全な反応が出てきた。

 「<朝鮮民族が悪いわけではない。北朝鮮という不法国家が問題。それはドイツ民族とナチスの関係と同じだ>と言及した。橋下知事はこれまで、朝鮮学校への対応について<不法国家の北朝鮮と結びついている朝鮮総連と関係があるなら、税金は投入できない>と述べ、無償化の対象外とすることを検討」(産経新聞2010年3月10日付、大阪版)するという

 

 普天間基地移設問題で「沖縄県民の気持ちを重く受け止めて」と呪文のように繰り返す鳩山首相に「拉致被害者家族の気持ちを重く受け止めて、朝鮮高校生への授業料は援助しません」と言うだろうと私は思っていた。だが、今日(3月13日時点)に至っても首相はそう言わないところをみると、「饒舌で軽い」と批判されて、口が重くなったのか。

 

 いや鳩山首相は「拉致被害者家族の気持ちは重く受け止めていない」と言われても仕方がない。その上わが国の主権が侵害されているという重さも分かっていない。日本人を拉致した金正日政権の指導下にある総聯を合法として認めておくこと自体が、政府の責任が問われることだ、という自覚も見られない。

 そもそも金正日政権の工作員(国家公務員)は、わが国の領土に侵入し、暴力で日本人を拉致して行った。拉致は正真正銘の「主権侵害」である。金正日はわが国に戦争を仕掛けてきたテロ政権なのだ。その金正日政権の指導を受け、ここ日本で60数年間にわたって反日運動をやってきた団体が総聯である。

 総聯は、これまで明白にわが国の国益と治安を乱してきた。出入国管理及び難民認定法には「法務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する(24条ヨ)」場合、いつでも当該外国人を強制的に国外に退去させることができると規定している。総聯の幹部活動家は退去強制に該当する容疑濃厚の人たちである。なぜ退去させないのだろう。

 こんな団体が運営する各種学校の生徒に、日本国民の税金を使って授業料を援助する、という話が出てくること自体、考えられない奇怪な話である。だが鳩山首相と民主党は、そうは考えないらしい。彼らの感覚は、国民のそれとは大きくずれている。だからとめどなく支持率が落ちているのだ。

 

 では民主党鳩山政権からなぜこんな話が出てくるのかと言えば、鳩山政権が金正日政権・総聯になめられているという一言に尽きる。その根拠は「政治には弱い人々、少数の人々の視点が尊重されなければなりません。そのことだけは、私の友愛政治の原点として、ここに宣言させていただきます」(09年10月26日施政方針演説)という発言にある。

 鳩山氏は、在日韓国・朝鮮人をかつての被抑圧民族の末裔で「政治的には弱い人々、少数の人々」と捉えているから、外国人地方参政権付与、朝鮮高校授業料援助が必要という結論が導き出されてくるのだ。この思考は、かつての社会党村山富市氏、土井たか子氏、東大名誉教授和田春樹氏ら進歩的知識人と瓜二つである。 

 

 在日韓国人は、少数であるが〝弱者〟ではない。民団は昨年2月、韓国の大統領、国会議員比例代表の選挙権を手にしている。今、要求している日本の地方参政権が実現すれば、彼らは韓国人にも日本人にもない特権を手にすることになる。これは弱者のやることではない。それでも鳩山首相は、〝弱者〟だと言うのだとしたら、その勝手な思い込みは国を滅ぼすことになる。 

 

 かつて自民党政権も、朝鮮労働党の指示で朝鮮信用組合の預金を金正日政権に運ばせ、信用組合を破綻させた。自民党政権は「法律に基づいて」と言って国民の税金1兆4000億円を投入して、朝鮮信用組合を救ったことがある。とんでもない誤りであるが、鳩山氏は朝鮮信用組合は弱者で、自民党政権の措置は正しかったと思っているのか。朝鮮信用組合の不法の「視点」を本気で尊重しなければならないと考えているのか。

 12億6000万円のカネを親から貰ったことを数年間知らなかったと言う鳩山首相に、少数者や、弱者の逞しさ、ずるさ、賢さなどを分かるはずがない。これまで私は、鳩山氏に見られる日本の知識人の観念論や贖罪意識から来る、思い込みをうんざりするほど見てきた。観念論は金正日・総聯に必ず騙され、国家に害を与えると、断言してよい。

 

 私は、金正日政権を助けたという意味で、韓国の金大中・盧武鉉政権は酷い政権だと思っているが、かつての自民党政権も負けず劣らず犯罪的な北朝鮮外交をやってきた。金正日政権は結果として、日本の公的資金を使って核ミサイルを開発したということになる。この流れを絶ったのが自民党安倍晋三政権であった。

 

 鳩山政権がやるべきことは安倍政権の北朝鮮政策の強化発展だ。ところが鳩山氏は、外国人地方参政権付与、朝鮮高校生への授業料援助など安倍政権前の自民党政権がやってきた売国政策と本質的に変わらない利敵行為を始めようとしている。

 自国が侵略されていることも、自国民の人権が蹂躙され続けていることも自覚できず、金正日政権の手先、総聯の朝鮮高校生に授業料を援助するという。不幸なことではあるが、拉致も核も、解決はますます遠のいていくだろう。

 

 政権中枢が観念論に侵されているとき、前述したように橋下大阪府知事は金正日政権の本質をずばり突いた発言をした。石原東京都知事に続いて、今度の橋下氏の発言を私は、長年金正日政権の危険性を訴えてきた経緯があっただけに、手を合わせる思いで読んだ。

 全国の知事も橋下氏に是非続いて欲しい。

更新日:2022年6月24日