ガンが日本を滅ぼす①

佐藤勝巳

(2009.11.18)

 

 「現代コリア」をテーマとする本欄で「ガンの話」を書くのはどうか、という一抹の逡巡がある。だが、日本人のガン罹患率が2人に1人、死亡は3人に1人となってきたことで、膨大な医療費が国家財政を圧迫し出している現実は、まさに日本を滅ぼしかねない〝危機〟が忍び寄っていると思ったからである。

 

抗がん剤服用

 私が胃ガンの手術を受けたのは、2006年8月のことである。その2年6ヵ月後に、今度は腸に新しく悪性腫瘍が発見された。幸い開腹せずに内視鏡で切除したが、抗がん剤を服用していたのに、どうして新たにガンが出来てしまったのか、という強い疑問が湧いてきた。

 

 胃ガンを切除した後、主治医から「切り取って調べたら思ったよりガンが進んでいた。 現状では再発率35%。それを15%ほどに抑えたいから抗ガン剤を使ったほうがよいと思います」と抗ガン剤使用をすすめられて、服用していたからだ。

 

 TS―1を朝晩2錠ずつ、3週間服用して1週間休むというサイクルを2年間繰り返した。抗ガン剤の服用にあたって、主治医と薬剤師の双方から、副作用(30余項目)が出たら、すぐ主治医に報告し、速やかに指示を受けるよう重ねて指導された。また、手帳を渡され、服用期間中の体調の変化も記録するように指示された。

 

 改めて副作用の項目を読みながら、こんなに沢山の副作用の可能性があるということは「劇薬なのだ」と思った。 しかし、再発を防ぐのなら仕方がない、と思った。親しい友人は食道ガンなど3回も手術を受けたが、医師に抗ガン剤の服用を勧められても断っていた。抗ガン剤を使って肉親を亡くした友人からも、抗ガン剤使用に疑問を提起されていた。

 不安はあった。しかし、主治医の「再発率35%を15%にしよう」という提言に魅かれたのと、人間の体には個人差がある、副作用が激しくなったらやめればよい、と軽く考え服用を始めた。その直後、従兄弟の勧めでプロポリスを飲み出した。 多分そのせいと思われるが、多少口内炎が出た程度で、下痢、嘔吐、倦怠などの副作用は全くなく、2008年10月に抗ガン剤の服用を終了した。  

 

 やれやれと安堵していた私を、思いもかけない衝撃が襲った。 

 

手術患者の半数が5年以内に死亡

 2008年11月27日発売の『文藝春秋SPECIAL』(季刊冬号)に頼まれて随筆を書いたのだが、送られてきた雑誌をめくっていて、元千葉大学医学部臨床教授 済陽(わたよう)高穂氏の「がん再発を防ぐ食事法」という論文が目にとまった。

 「私は消化器が専門の外科医です。三十年間に四千例以上の手術をし、その後……消化器がんの症例千四百二例について術後成績をまとめてみたのです。その結果を見て愕然としました。 五年生存率で、五十二パーセントの患者さんは生還を果しましたが、残り四十八パーセント、およそ半分の患者さんが五年以内にがんを再発し、亡くなっています。

 手術という身体に大変な負担を強いる治療を受けても、その半分しか助からないという現実。完全にがんの病巣を取ったと思っても、数年でがんが再発しまた入院してくる。外科医として私は打ちのめされました。どうすればよいのか悩んでいた…… 」

 

 今まで抗ガン剤への疑問は耳にしてきたが、「切れば治る」と言われてきたし、浅はかにもそう信じてきた私は、4000例以上の手術のキャリアーを持つ消化器専門の外科医の文章に、息を呑んだ。文字通り晴天の霹靂で、ガンと告げられたときよりも、ショックを受けた。そこにはガン予防の食事の中身が具体的に記されており、玄米食など食事療法を2009年1月1日から始めた。

 

腸ガン再発

 済陽先生は5年以内の生存率は52%と言う。私は2008年11月時点で、手術して2年3ヶ月が経過していた。済陽先生のデーターによれば、私の体にもガン再発の可能性が50%近くある。心配になり、主治医に胃と腸の内視鏡検査をお願いした。結果、胃に異常はなかったが、前述のように腸に悪性ポリープが発見され、2009年3月内視鏡でポリープを切除したのである。

 

 現代医学を基本的には信じていた私は、病気は医者に任せるのが一番と思っていた。だがこのとき初めて、ガンの治療はどうなっているのか、自分で調べてみようと思った。 

 

学習開始

 インターネットでいろいろ検索しているうちに、新潟大学医学部の安保徹教授の『免疫革命実践編』(講談社インターナショナル刊)という本に出遭った。早速読んでみると興奮した。続いて安保徹著『免疫革命』(同出版社)も読んでみた。自宅の近所にブック・オフがあるので、ガンに関する本を手当たり次第に買って読みふけっているうちに、ようやくガン治療の何が問題になっているのかが、おぼろげながら分かってきた。

 

 そして私は、ガンは切除すれば治癒するなどというのは誤った考えであり、食事などを改善し、自分の体内にある免疫力を高めなければ、ガンは再発もするし、転移もすることだってあるのだと確信した。

 

 その一方で、ガンになったら、手術しても抗ガン剤を飲んでも、放射線治療を受けても、救われる人は2人に1人だというのなら、なぜ、主治医は術後、ガンの元凶とも言える〝食事〟について指導してくれなかったのだろうかという疑問がわいてきた。

 

火に油

 私は肉が好きでよく食べていた。胃ガン切除後も術前と同じような食事をしていた。だが、前述の済陽論文では、ガンの体質(食生活)を変えなければ再発するという。私は手術後も動物性蛋白や脂肪を取り続けていたから、火に油を注いでいるようなもので、新しいガンができても不思議ではなかったのだ。

 

疑問は次々とわいてきた。ガンの患部を切除しても半数しか救われないという事実を現場の医師たちが知らないはずがないのに、なぜ、患者にそのことを告げないのか。ガン治療に関与する沢山の臨床医たちは、済陽先生のような挫折感や自らの治療に疑問を抱くというようなことはないのか。また、こうしたことが、学会で問題になっているのか……と。

(続く) 

更新日:2022年6月24日