鳩山さん、田中均氏の登用に反対です

佐藤勝巳

(2009. 9. 7)

 

 金正日政権は、民主党の総選挙勝利を予想して、(解散前に)総聯に、万景峰号が日本に入港できるよう働きかけを指示していた、という(9月6日産経新聞)。これを読んだとき、「雀百まで踊り忘れず」というが、「また来たか」という緊張と、制裁で金正日政権指導部がどんなに堪(こた)えているかが改めて感じた。

 

 だったら、総聯の陳情などに左右されず、政府方針として「拉致した人間全員を帰せば万景峰号の入港を認める」と決定、交渉に入るべきである。

 

 私がこのように提言する根拠は、06年9月の安倍晋三政権成立以来、拉致、核、ミサイル問題などで、日朝関係は鋭い緊張関係にあり、金正日政権が自民党に工作を働きかける余地は殆どなかったが、民主党は朝鮮労働党や金正日政権の対日工作の実態を正確に認識しているとは思えない。とりわけ、鳩山由紀夫、菅直人、小沢一郎、岡田克也各氏の金正日政権認識は甘い、と断言してよい。

 

 かつて金丸信氏(自民党)が脱税容疑で捜査を受けたとき、金庫の中から当時1億円相当の無刻印の金の延べ棒80キロが出てきたが、それは金丸氏が金日成から貰ってきたものであった。金丸氏を動かすのにはカネが必要だった。

 

 しかし、北も総聯も今はカネがない。だが北は、工作資金を殆ど必要とせず民主党政権を篭絡できると見ている。小沢氏の本音は分からないが、他の人たちは、安倍晋三氏などと違って、心情的に北朝鮮に近い「岩波文化人」系列の人たちだからだ。

 

 わが国は安倍政権が実現するまで、北朝鮮の工作にかきまわされてきた恥ずべき半世紀の歴史がある。安倍政権以来3年、北朝鮮からの工作を排除し、日本政府の北朝鮮政策はぶれず、6者協議のなかで原則を貫き通したのは日本政府だけだった。これは客観的事実である。

 

 政権交代によって、この原則を貫く政策がご破算になる可能性が出てきた。拉致問題に関係した人間なら、元外務省田中均審議官は拉致救出で、拉致被害者を2週間で北に帰すという金正日政権の工作にはまり、国益を裏切った札付きの人物である。その田中均氏は外務省退職後、鳩山由紀夫、菅直人、小沢一郎各氏らと親しく、鳩山内閣の何らかのポストに就くのではないのか、とマスコミでもっぱらの評判となっている。国家の利益を考えたら、党派を超えて北朝鮮と戦える人物を起用することを鳩山由紀夫氏に強く望む。  

更新日:2022年6月24日