北のミサイル発射実験に反対しない

佐藤勝巳

(2009. 2.19)

 

 金正日国家国防委員長の67歳の誕生日である2月16日、国営の朝鮮中央通信は「われわれが長距離ミサイル発射準備を行っていると騒ぎ立てること自体が重大な挑発だ。平和的で科学的な研究活動までもミサイルと関連づけ妨害する悪質な策動」と報じ、「わが国から何が打ち上げられるかは、見ればわかる」と、「人工衛星」打ち上げを示唆した。

 約10年前の1998年8月31 日にも「人工衛星」と称して、日本の三陸沖にミサイルを撃ち込んでいる。だが、これは失敗して落ちたのが真相と筆者見ている。また2006年7月にもテポドン2の実験をしたが失敗した、と専門家の多くは見ている。

 実は、ミサイルの先端に人工衛星搭載でも、核弾頭搭載でもミサイルは全く同じものだということは、関心ある人間なら誰もが知っている。

 人工衛星を搭載するのなら「平和的で科学的な研究」かも知れない。しかし、同じミサイルに核兵器を搭載すれば、とんでもない破壊力をもつ兵器 (爆弾)に変化するのであるが、問題はミサイルの飛距離であり、お手並みを拝見すけばよい。

 テポドン2を実験すれば、どの程度の精度なのかがわかるうえ、日米にとって現在開発中のミサイル防衛(MD)の実践さながらの演習出来るチャンスでもある。騒がないことだ。

 仮に成功してテポドン2が数千キロ飛んだら、アラスカの米軍基地をはじめ、今度沖縄の海兵隊8000(プラス家族9000)名が移転するグアムも、容易に射程圏内に入ることになるので、アメリカにとって事情は全く違ってくる。また、東アジア情勢も基本的に変わることになる。  

 1964年中国が核実験に成功したのを見て、中国と対立していたインドが核開発に動き、インドと対立していたパキスタンも核開発を始めた。これがアジアにおける第一次核のドミノ現象であった。

 金正日政権が核の小型化に成功し、長距離弾道ミサイルを手にすれば、東アジアに第二次核ドミノ現象が起きることは避けがたい。そうなれば、核拡散防止条約が事実上崩壊する深刻な事態に、世界は直面する。

 だが、そうなって初めて諸悪の根源である金正日政権をどう成敗するかを、米・中・韓・日が真剣に考えるようになるであろう。

 重ねて言うが、金正日政権のミサイル実験に反対しないで、実施させればよい。反対しても実行するだろう。残念ながらそこまで行かないと、6者協議の誰もが渦中の栗を拾おうとしない、問題先送りの無責任な態度は)変わらないと見ている。

更新日:2022年6月24日