国の安全を米国にゆだねるのはやめよう

佐藤勝巳

(2009. 2.16)

 

 米シンクタンクの研究者が1月に北朝鮮を訪問したときに、国家国防委員会李賛福(上将)報道官が「(プルトニウムを使った)ミサイル弾頭を製造中、もしくは製造を試みているとほのめかされた」(共同)という。

 この研究者が2月12日、米下院外交委員会のアジア太平洋小委員会公聴会に提出した書面の中でこの事実に触れたと、産経新聞(2月13日付)が報じて明らかになった。

 オバマ政権と直接対話を望んでいる金正日政権が、対話実現のためにハッタリをかませた可能性が高い。北朝鮮のこの種の発言は、参考もしくは割引いて聞かなければならない類のものであるが、06年10月金正日政権が核実験した直後に、ブッシュ政権は、それまでの圧力中心の政策を、話し合い路線に転換した。オバマ政権が、このたびの北の発言をどう受け取るのか、極めて注目される。

 ブッシュ政権は北の核実験を契機に、多国間交渉を事実上2国間交渉に切り替え、金正日政権に譲歩に次ぐ譲歩を繰り返し、55万トンの重油などをただ取りされた。

 金正日政権は、ブッシュ政権の政策転換を非公開文書で「核保有の勝利」と記している。今回も射程数千キロのミサイル・テポドン2の実験準備をしていると、米韓情報当局が2月3日メディアにリークした。

 冒頭で紹介した国防委員会・李賛福報道官の「核弾頭製造もしくは製造中」という思わせぶりの発言と、わざわざ米国の軍事衛星に見えるようにテポドン2を移動し、実験をやるかのような行為は、オバマ政権を脅して2国間交渉に引きずり込む、という作戦であることが明らかであろう。

 こんな脅しに絶対乗ってはならない。韓国の「朝鮮日報」は2月25日頃実験と推測しているが、実験させてお手並みを拝見したらいい。

 1滴の石油もとれない北朝鮮では、電力も石炭も不足して溶鉱炉が止まり、兵士に食糧も満足に支給出来ないでいる。ゲリラ戦(非正規戦)はできても、国家と国家の戦争など出来.る能力を持ち合わせていない。

 本欄で再三言及しているように、今年に入ってから、北が盛んに韓国を脅かしているのは、強さの現われではなく、逆に弱さの反映なのだ、ということを再確認しておくことが肝要であろう。

 大事なことは、日韓が団結して動じないことである。そしてオバマ政権に北朝鮮の本質を正確に伝えることが日韓の安全保障の道であり、アメリカの利益のためである。

 米民主党・共和党両党は、金正日政権にモノを与えれば取引できると思っている。これがとんでもない誤りであることを日韓のイニシアチブで、クリントン国務長官はじめ国務省幹部に理解してもらわなければならない。

 アメリカは北朝鮮のことなど何も分かっていない、というより分かる必要がないのである。民主党・共和党のこの18年間、北朝鮮が取引できると言う、間違った認識で金正日政権に核実験までさせてしまった。

 われわれはこの事実をどう捉えればよいのか。被害を直接受ける日韓が、交渉の主導権を米国に委ねてきたと言う、基本的な誤りがあったからではないのか。

 麻生総理大臣並びに仲曽根外務大臣は、日本の安全を自分たちの力で護る、自国民は日本が救出すると言う基本的立場にてって、日米同盟の強化をオバマ政権に提起すべきであろう。

更新日:2022年6月24日