山崎拓・加藤紘一・河野洋平3氏の意見を聞きたい

佐藤勝巳

(2009. 2. 4)

 

 2月2日付けの本欄でも書いたが、今回北朝鮮の「祖国平和統一委員会」の「南北間の政治・軍事合意の『すべて無効』」という声明を発表した。

 その根拠は、金大中・盧武鉉大統領(当時)が金正日政権と約束した(2000年6月15日と07年10月4日の首脳会談)ことを李明博政権が実行しないことにある、というものだ。

 この金正日政権の主張は、われわれにまたとない学習教材であり、反面教師でもある。なぜなら、李明博大統領は、金大中・盧武鉉氏と異なる北朝鮮政策を掲げて、韓国国民の圧倒的支持を得て大統領に当選した。逆に、金正日政権がバックアップした鄭東泳候補は韓国国民に全く支持されず大敗を喫した。

 選挙で選ばれた大統領が公約を実践するのは、民主主義国家における政治家の最低の義務である。民主主義のルールに則って、公約を実現している李明博政権を、韓国国民は言うまでもなく、全世界が「当然」として受け入れている。

 ところが金正日政権は、この民主主義のルールを無視して、金大中・盧武鉉政権が北に約束したのだから、李明博政権は援助をしろ、しなければ「戦争も辞さず」と恫喝をかけているのである。

 わが国にも、法律などのルールを無視して、暴力を背景に利益を得るのを生業にしている「組織暴力団」というグループがいる。この人たちと金正日政権の行動が非常に似ている。両者に共通しているのは〝暴力〟である。われわれはこの事実をしっかりと記憶に留めておく必要がある。

 わが国政府は、昨年8月瀋陽での北朝鮮との実務者協議で、拉致被害者調査と制裁解除で金正日政権に「文書化」を求めた。同じく12月の6者協議でも話し合いの中身を「文書化」することを要求した。金正日政権はいずれも拒否したが、この日本政府の態度は、大きな前進と言える。

 なぜなら、2000年春、外務大臣であった河野洋平現衆議院議長は、家族会や「救う会」の反対を押し切って、コメ10万トンを無償援助した。理由は、「まずこちらが誠意を示し、相手の誠意を待つ」と言うもので、この年合計60万トンのコメを援助した。「誠意」が通じる相手ではないことは、拉致問題始め今回の金正日政権の態度を見れば明らかだ。

 筆者が、昨年8月以来、日本政府の「文書化要求」を評価しているのは、過去にこういう外務大臣がいたからだ。

 金正日政権は、1991年韓国と「非核化宣言」を締結したが、それを無視し核開発をしてきた。その張本人が、こんどは金大中・盧武鉉両氏が金正日氏に約束した援助を李明博政権が実行しないのが怪しからんといって「非核化宣言」を破棄するという。

 これは典型的な「ならず者」の言動であり、われわれの価値観とは無縁のものである。韓国では金大中氏を先頭に、その仲間が李明博政権の対北朝鮮政策を非難している。金大中氏は、自分が約束したことが否定されたのだから、不平があることは分からないではない。 

 わが国では山崎拓・加藤紘一議員らが「北朝鮮に対する制裁を解除しろ」と機会あるたびに口にしている。しかし日本の政治家は金大中氏とは違う。何故、日本の金正日政権への制裁を解除しなければならないのか、改めて聞きたい。

 2月3日付新聞各紙は、ソウル発で金正日政権がミサイル・テポドン2(射程数千キロ)の実験を準備していると、報道した。

 山崎拓氏ら3氏はそれでもなお、制裁解除しろというのなら、次の総選挙で選挙民が的確に判断するために、遠慮することはない、その根拠を国民の前に公開して欲しい。

更新日:2022年6月24日