自国の安全を自力で……

佐藤勝巳

(2009. 1.13)

 

 ご挨拶が遅れましたが、今年も宜しくお願いします。

 年の初めに、今年はこうなって欲しいという希望や期待を述べるのが普通だが、今年はそうは行かない、というのが正直なところである。

 4ヶ月前にアメリカで金融危機が発生し、アッというまにアメリカ3大自動車メーカーが雁首をそろえて経営危機に陥った。

 優良企業の代表と目されていたトヨタも、一瞬にして赤字転落を会社自身が予告した。世界経済が恐慌に突入するのではないか、と多くの人が戦々恐々としている。昨年9月段階で、オバマ氏の大統領当選は予測されていたが、金融危機・経済恐慌など誰も予測していなかった。

 だが、現実に予測できなかったことが進行していることを考えると、何が起こるかわからないということだ。

 例えば、昨今関係者の関心を集めている金正日氏の健康状態も、明日急変するかも知れない。私ごとで恐縮だが20年前に脳梗塞を患い、1年間仕事を休んだが、いまだ生きている。金正日氏も生存し続けるかも知れない。

 もし、氏に急変が起きると変化は無数にある。後継者問題をめぐって軍が割れて内戦に発展し、大混乱が起きる可能性も否定できない。逆に、思ったより平穏に権力の移譲がなされるかも知れない。日本人拉致被害者が解放されるかも知れないし、逆のことも考えられる。何一つとっても予測は非常に難しい状況にある。

 年内に総選挙があることは間違いない。選挙民の多くは、民主党政権の出現を期待しているかのように見える。だが、仮に小沢一郎氏が政権を担うことになった場合、対朝鮮半島政策はどんなことをやるのか。

 金正日政権の核ミサイルから、わが国をどう護るのか。拉致されている日本人被害者をどんな方法で救出するのか、全く分からないのだ。

 また、中国をどのように位置づけ、どんなスタンスで関係を持とうとしているのか。日米同盟は維持するであろうが、是正する必要があると考えているのか。考えているとすればその理由は何か。これも皆目分からない。不吉な感じがする。

 世界中が、何がなんだか訳が分からないうちに「わが身大切」とばかりに、各国は保護主義に傾斜し、自由主義経済を破局に導きつつある、極めて危険な方向に進んでいることだけは、勘であるが確かなような気がする。

 われわれは、第2次世界大戦後あまりにも平和になじみ過ぎた。悪いことではなかったが、自国の安全は自分で責任をもつという最も大切な考えを喪失した。この代償は必ず高いものになる。今に始まったものではないが、日米関係を維持しつつ相対的独自性を目的意識的に追求することが、今年は特に必要になってきているのではないか。

更新日:2022年6月24日