金正日氏重病説

佐藤勝巳

(2008. 9.10)

 

 9月9日は北朝鮮の建国60周年記念日である。この集会に金正日国家国防委員長が欠席したことで、氏の重病説が取りざたされ、世界的に注目を集めている。

 金正日氏の病気説はここ1カ月間近く公式に姿を見せないことで、1週間ほど前からすでに流れていた。日本の専門家のなかには「金正日氏は既に死亡している」と言っている人もいる。近いうちに真相が明らかになるであろう。

 独裁者が死亡すると後継者問題をめぐって大騒ぎとなるのは、独裁国家の特徴である。だから金日成は、あらかじめ後継者を自分の長男・金正日に決めていた。今回、後継者は決まっていないと言われている。伝えられている話(裏の取れていない話)では、後継者をめぐって4派が争っているという。

 金正日が本当に重病なら、北朝鮮では大変な緊張状態にあるはずだ。これも未確認情報であるが、4派のうち誰が主導権を握るのか混沌としているため、1年ほど前から党と行政機関の中堅幹部以上は、皆で洞ヶ峠(ほらがとうげ)を決め込んでいる。そのため党も行政も更に動かなくなっているという。

 それにしても金正日が後継者をなぜ決めなかったのか興味あるところであるが、ここまで来たら決めようがないと推定される。

 従って「もしも」のことがあれば、一定の混乱は避けられないだろう。しかし、朝鮮半島にとっては諸悪の根源が除去されるのであるから、多少の混乱は避けがたいとしても、基本的には歓迎すべきことである。  

 東アジアに視点を広げると、アジアからスターリン主義(「官僚主義」「独善的なセクト主義」「個人崇拝」「人権弾圧」「社会主義放棄」のなどの独裁体制総称を指す言葉)体制がようやく姿を消す契機を掴むことになる。

 世界史的に言うなら、核の水平拡散にブレーキをかけることが出来る、画期的なことである。

 日本との関係では、最大の懸案事項である拉致問題解決に有利に作用するであろう。

 ただ、金正日亡き後の朝鮮半島の支配をめぐる米中の覇権争いが熾烈化するのは明白だ。

 しばらくの間、金正日国家国防委員長の重病説報道に注目したい。

更新日:2022年6月24日