日本を売ってはならない

佐藤勝巳

(2008. 4. 9)

 

 また、総聯がうごめきだした。

 金正日政権に対する「万景峰号」の日本への入港禁止措置などの経済制裁の期限が4月13日に切れる。総聯は期限切れに向けて、制裁を延長しないよう「活発」に動き出した。

 昨年10月13日の制裁期限切れのときは、総聯中央の代表が副官房長官に恐る恐る要望書を提出していた。今回は3月頃から総聯が、駅頭や国会周辺で「経済制裁撤廃」のビラ撒きや座り込みなどを始めた。 

 ネット「朝鮮時報」によると総聯は、3月27、28日「制裁措置撤回」を求めて国会前で座り込みを実施した。日本人組織である「朝鮮の自主的平和統一を支持する長野県民会議」など親北勢力も40人ほども参加したという(4月2日付)。

 4月2日は「日朝国交促進国民会議」(会長・村山富市元首相)が制裁撤廃の集会を、3月6日には「朝鮮女性と連帯する日本婦人連絡会」(清水澄子代表・130名参加)など制裁の撤廃を掲げ、議員会館で集会を開いている。

 3月28日に京都では「日本市民250 余人(団体を含む)が賛同する『朝鮮民主主義人民共和国への経済制裁を解除し、在日朝鮮人に対する人権侵害の中止を求める共同アピール』が発表された」という。

 呼びかけ人の同志社大学浅野健一教授、岩佐秀夫弁護士、日朝友好促進京都婦人会議の末本雅子代表、「朝鮮学校を支援する会・京滋」の江原護事務局長が京都弁護士会館で記者会見アピールを発表した(朝鮮時報4月4日付)。

 また、3月31日東京都の「日朝友好促進区議会議員連絡会」は、大野松茂内閣官房福長官を訪ねて「万景峰92号」の入港阻止の解除を求める総理大臣と外務大臣宛要望書を提出した(朝鮮時報4月4日付)。

 昨年12月11日には自民党内に衛藤征士郎衆議院議員を委員長、山崎択衆議院議員を最高顧問とする「朝鮮半島問題小委員会」が発足した。

 2月21日には、民主党内に岩国哲人衆議院議員を会長とし、川上義博参議院議員を事務局長とする「朝鮮半島問題研究会」が結成された。両方とも拉致の解決に力点はなく、主たる目的を日朝国交正常化に置いていることを特徴としている。

 自民党の小委員会の裏に北朝鮮工作員がいるのかどうかは不明であるが、それ以外の制裁撤廃を唱えている日本人団体は、半年前の制裁期限が切れたとき、まったく動かなかった団体だ。

 ところが上記諸団体は4月13日の制裁の期限切れを目前にして、日本政府に金正日政権に対する制裁解除を一斉に口にし出した。背後に総聯の働きかけがあったことは間違いないと思う。

 わが国政府が金正日政権に制裁を科した経緯は、06年7月5日金正日政権のミサイル発射実験に抗議し、万景峰号の入港禁止などの独自制裁を発動した。

 また、同年10月9日金正日政権の核実験に抗議し、北朝鮮船舶の入港全面禁止、北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止などの制裁を発動した。そして「拉致問題についても具体的対応を取っていないこと等、北朝鮮をめぐる諸般の情勢を総合的に勘案し」制裁を発動したものであることは公知の事実だ。

 それなのに、上記諸団体は政府が制裁を発動した理由にはまったく触れず、万景峰号入港させないことが在日朝鮮人の「人権侵害」だという論点のすり替えを行っている。それをいうなら金正日が指示した日本人拉致こそ、野蛮な人権侵害ではないか。この日本人たちは総聯と同じ見当はずれの非論理的な妄言を吐いているのだ。

 「浜の真砂は尽きぬとも、世に売国奴の種はつきまじ」ということである。

 日本人を拉致したのは一体何処の誰か。金正日政権ではないか。ミサイルと核を実験したのも金正日だ。これらの行為が、わが国に対する重大な主権侵害、人権蹂躙にあたり、日本国家の安全に対する深刻な脅威であると政府は判断、主権を行使、制裁を科したのだ。

 拉致・ミサイル・核、何一つ変化がないのに制裁解除を主張することは、自国の安全に対する思想的武装解除、人権侵害の容認に他ならない。日本民族・国家に対する裏切り以外のなにものでもない。こういう人達を売国奴と呼ぶのだ。

 自らの信念基づいて制裁撤廃を求めているというのなら、政府が制裁を発動したときから、なぜ言論や集会・デモをもって政府に抗議し続けないのか。それをしないで突然騒ぎ出すというのは、誰かに言われたからだといわれても返す言葉がないはずだ。

 私と総聯との付き合いは1958年(昭和33年)からだ。当時の総聯の動員力は、「1に総聯、2、3がなくて4に創価学会」といわれていた。

 帰国船が新潟港からはじめて出港 した(1959年12月14日)前夜は、総聯の全国からの動員は、3000名の機動隊をはるかに上回った。新潟市は、革命前夜を髣髴させる緊張した雰囲気で覆われた。

 朝鮮時報(4月2日)は、制裁撤廃要求の座り込みを、「(3月)27日には神奈川、埼玉、西東京、千葉などから130人が参加した」と恥ずかしげもなく書いている。われわれと同世代の総聯活動家がこの数字を知ったらなんと思うであろう。「敵」に哀れさえ感じる。身から出た錆とは言え、なんという姿か。

 われわれは、制裁の強化を訴え昨年6月は和歌山で1600、山口で600。今年の3月29日は熊本市で1200名参加の集会を開催した。今後、東京(4月27日)、福島(6月8日)、盛岡(6月21日)、松山(7月12日)、富山(8月24日)と1000名以上の集会を、国・県・救う会主催で準備している。

 金正日政権に対してわれわれは、制裁の強化を持って、拉致の解決を徹底的に迫っていくであろう。

 債権回収機構(RCC)は、迅速に裁判を進め、法に基づき、毅然として総聯中央本部の土地建物を差押さえ、速やかに「悪の牙城」を競売に付すべきである。

更新日:2022年6月24日